第六話:炎上する故郷、砕け散る盾
第六話:炎上する故郷、砕け散る盾
父の指示のもと、私たちは村を守るための最後の抵抗を試みた。村の入り口にかかる小さな橋は、地形を利用した数少ない要害だ。ここに兵士を集中させ、敵の進軍を一時でも食い止めようとする。後方では、セレスティアルが必死に簡易な防御魔法陣に魔力を注ぎ込んでいたが、その光は弱々しかった。
「橋を渡らせるな!一人たりともだ!ヴラド、貴様は右翼を支えよ!トーマス、ヴラドを援護しろ!」父の檄が飛ぶ。その声は、かつての帝国騎士団長官を思わせる威厳に満ちていたが、震えも混じっていた。
私は数人の私兵を率いて橋の防御に参加した。経験は浅いが、父から教わった戦術、そして燃え盛る故郷と悲鳴を上げる民を守るという一心で、必死に考え、動いた。狭い橋の上ならば、敵の数の利は多少殺せる。トーマスは私のすぐ傍らで、冷静に指示を飛ばしていた。「右だ、ヴラド!」「槍を下げろ!」グリムは橋のたもとで、巨体のオーク相手に戦鎚を振るっている。エララは森の端から、正確な弓で敵の斥候を射抜いていた。
血牙部族が殺到する。オークの重装歩兵が盾を構えた兵士にぶつかり、オーガがその巨体と棍棒で橋の欄干や簡易なバリケードを破壊しながら迫る。ゴブリンたちは橋の下の川を渡って迂回しようとし、ウォーグライダーは岸辺の茂みに隠れて弓兵や指揮官(父やトーマス)を狙撃する。ホブゴブリンの隊列は、予想外に規律正しく、統率の取れた動きで側面を突こうとしてきた。敵シャーマンの呪術によって、オークの目が赤く輝き、狂暴さが異常なほど増しているのが見えた。「グアアアァァァ!」彼らはもはや痛みを恐れず、狂ったようにバリケードに体当たりしてくる。同時に、私たちの兵士たちの足元からは、地面から骨のような手が伸びて、動きを妨害しようとした。セレスティアルが必死に反撃の魔法を試みるが、シャーマンたちの邪悪な力は強大すぎた。簡易な魔法陣は、歪んだ光を放ち、弾け飛んだ。
私は必死だった。剣を振るい、指示を叫び、倒れた兵士の盾を拾い上げる。微弱な神聖な力で、オークを怯ませ、傷ついた兵士の傷にかすかな光を放つ。しかし、その力は、この押し寄せる絶望的な状況の前にはあまりにも無力だった。数、力、そして邪悪な魔法。全てにおいて、私たちは圧倒的に劣っていた。