発掘しました-『帝国雑文物語録』
『帝国雑文物語録』より引用す。
この物語は、いわゆる「庶民の落とし噺」と称すべき体裁を今に伝えたり。
交易の路とその街道に沿ひて、種々の形態にて同類の話が偉人を題材とし、類型的作品として無数に存するといふほかなく、ここに紹介するは「血王」と呼ばれたるリューフッドを元とせるものなり。
血王リューフッドといふ人物は、御存知の如く、激動と波乱に満ちたる策謀と戦乱の生涯を經て、僅かに一小国を統一し、若くしてその生を終へたり。
斯くの如き彼が、有名無名の戯曲にしばしば主題として取り扱はれしも、民間伝承においては斯くも語られたり。
特に商人の反応は、往古に実在せしと伝ふ屈折したる物語の存在を今に伝ふるものなり。
『発掘しました』
胡散臭き発掘人らありき。彼らは考古学と称すれども、その実の多くは墓を荒らす賊の如き輩にして、古の王侯貴族ら富裕なる者らの陵墓を好みて発掘せり。
彼らが求むるは専ら墓所に埋葬されし副葬品にして、金銀宝玉あるを当然とせし墓のみを掘り起こせり。
斯くて、斯かる彼らを信じ、発掘の資を投じたる或る大商人が、伝説の血王リューフッドの墓を発見せりと喜ばしき報を受けたり。
この商人は、少年の頃より血王リューフッドの物語を愛読せしが故なり。
発掘人:「見てくだせぇ!これがあの血王リューフッドの骸骨ですわ」
商人:「おおう!これがあの血王リューフッドの頭蓋骨なのか・・・」
発掘人は二つの骸骨を自慢げに取り出し、指さして語りぬ。
発掘人:「こっちの大きい方が大人のリューフッドで、こっちの小さいのが子供の時のリューフッドでやす」
商人:「・・・」
商人は甚だ怪訝なる顔をなせり。理の当然なり。
商人:「ちょっとまて、大きいのが大人の男のリューフッドで、小さいほうが子供のリューフッドの骸骨だというのか?」
発掘人:「へぃ!そうでゲスよ」
商人は怒気を帯びし声にて強く言ひぬ。
商人:「おい!いい加減なことを云うんじゃない!」
斯くあるべし。この商人は、斯かる発掘人らに「憧れのリューフッド」を知らんとて巨額の金銭を投じ、発掘を助けしなり。
商人:「なんで俺が青年の頃、夢にまで見た“女の子だった”というリューフッドの骸骨がないんだ!?」
それは今より出で来るならん。或いは。
終