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短編集

女性が貴重な世界にTS転生してしまったけど、わりと楽しく一人で生きています。

掲載日:2025/02/02

ハンドルネーム:世界で最も可愛い女“ハクア”

【どうも女に生まれた勝ち組ですwww 男に生まれた負け組ざまぁwww

男はこんなちょっとした画像で必死になってるの、可哀想すぎて笑えるwww】

(部屋着を着崩している自分の自撮り画像を添付)



「画像を貼ってと……こんな感じかな……」


 季節は冬。暖かい部屋で食べる鍋とビールが最高に美味しい今日この頃。私こと“佐藤はくあ”は仕事から帰ってきてからすぐに着替え、スマホで撮った写真を、男を煽るような文章と共にネットの海に投げ入れた。

 

 整った顔、メリハリのあるボディ、スラリと長い脚、きめ細かい肌、艶のある茶髪ロング。豊かな表情。


 こんな美少女要素をふんだんに盛り込んでいる私が、モテない可哀想な男共に夜のお供を提供してあげる。うん、私ってマジ聖母だわ。


 画像を貼ったばかりなのに、どんどんインプレッションが増える。インプレッションというのはざっくりいえば、どれだけの人数がこの画像を見たかが分かる指標だ。


 とてつもない速度で増えていくインプレッションの数値。これだけ成果が目に見えて分かると楽しいものだ。


「相変わらずこの世界の男、チョロいなぁ」


 インプレッションが増えるたびに収益を得ることができる仕組みのサイトに画像を上げているおかげで、この程度のことしかしていないのに、私はかなりのお金を稼ぐことができている。


「最初は副業として始めたことなのに、今では圧倒的にこっちのほうが稼げているっていうのもなぁ……」


 自分は“元は男”だったので、この軽く胸の谷間くらいしか見えない私の画像程度でも、この世界の男は食い入るように見ているだろう、というのが容易に想像できる。


 まあ元は男といっても、前世でのことなのだが……

 

 そう、自分はなぜか前世の記憶を持ったまま、この男女比が100:1の女が希少な世界に生まれてきたのだ。


 女性がこれだけ少なくて、人口を維持できるのかと疑問に思うかもしれないが、この世界では女性の体や仕組みが変化しているので問題はない。


 この世界の女性は一度に沢山の小さい赤ちゃんを産むのだ。前世の感覚ではありえないことだが、この世界では至って普通のこと。


 かなり小さな赤ちゃんとして産まれてくるが、この世界の赤ちゃんは、体の小ささなど些細な問題かというようにすくすくと成長する。


 ちなみに男女比以外は前世の日本と大まかには変わりはない。地名や言語などは前世と全く同じだ。


 ただ、男女比に偏りがあるせいで、前世と大きく変わっている文化がある。それは、女性が“過剰”に大切にされるという文化だ。特にこの国では他国よりその傾向が激しい。


 そのせいで、この国では、男にとって死活問題とも言える状況が発生している。


「スマホでどのアダルトサイト見ても、実写の女がいねぇ」


 そう、実写エロコンテンツが全く充実していないのである。それだけではなく、ただ女性が写っている日常の動画や画像ですら、ネットで見かけることはほとんどない。


 なぜそんなことになっているのかというと、この国では女性のプライバシーを脅かすと重罪になるからだ。違法に女性を盗撮することはもちろん、女性に無許可で写真や動画を撮ることも罪になる。


 過去には、自分の妻との夜の行為を無許可で盗撮し、ネットにアップした男がいた。その男はあっという間に逮捕され、懲役20年になったそうだ。しかもその時の動画は徹底的にネットの海から消され、今では跡形もない。


 そのような法律があるから、女性の実写コンテンツはまず世の中に出てこない。


 個人的には女性を守るためだと言ってもやり過ぎだとは思うのだが……そんな厳しい法律のおかげか、外国よりも格段に治安が良いので、悪い面ばかりではない。 


 海外では女性のひとり歩きなんて危険で絶対にできないらしいが、この国では女性である私が一人で道を歩いていても、あまり危険な目には合わない。もちろん100%安全ってわけではないので注意は必要だが。



 そんな社会で男たちはどうやって性欲を発散させているかというと、主にフィクションのエロ漫画やエロ小説である。


 実写エロコンテンツがない代わりに、エロ漫画やエロ小説などは豊富にある。男共は基本的にそれらを用いて性欲を発散しているというわけだ。


 ……別にエロ漫画やエロ小説が豊富にあるのだから、実写の女の姿なんてなくとも、何の問題もないじゃん、とも思うが、まあ“なまもの”を求める男達の気持ちも、私は分からなくはない。


 だって、今でこそこうして可愛くてスタイルの良い女として生まれた私だが、前世の記憶の影響か、性的趣向は男と近いのだ。男の乱れた姿なんて見たくないし、女の乱れた姿はいくらでも見たい。


 なので、自分が性欲を発散するときだって、主に男向けのエロ漫画を利用させてもらっている。

 

 そういう時、無性に生の女の動画や画像が欲しくなることがたまにある。まあこの世界じゃ無理なんだけど。


 

 そんな現状に待ったをかけた人物がいる。そう、私だ。


 その厳しい法律も、女性が自らの意思で写真や動画をのせることにはなんの問題もない。



 そもそもこの国の女性は大切にされすぎているので、貢がれるのは当たり前。金に困ることはないし、承認欲求も男に大事にされることで充分満たされている。


 男も女性を独占したがるので、人目に見せるようなことはさせたがらない。


 つまり、女がネットに画像をのせるメリットがない。だから、私みたいなことをする女はほとんどいないのだ。



「それにしても、私の画像を見た男共は、IQが溶けてるとしか思えない反応するなぁ」


 今日上げた画像に対する男どもの反応を見ながら、私はつまみのチーズ味のスナック菓子と、缶ビールを開けた。


 いつもは晩ごはんをしっかり食べてから晩酌するタイプなのだが、なんとなく今日はつまみだけで過ごしたい気分だった。こういうとき融通が効くのが一人暮らしのいいとこだよね。


 ちなみにこの世界の女は一人暮らしなんてしない。っていうか、そもそも一人暮らしなんてできる生活力がない。


 こんな世の中で一人で暮らしている私は、相当変わり者だと思われていることだろう。


 なんか、どうも私は一人でいることに抵抗がないんだよね。それどころか、楽しくて仕方がないくらいだもん。ひとり暮らしがとことん性に合っているのだろう。



「こんな若くて可愛くて体つきがエロい女がフリーなんて、男共は心底私が欲しいだろうな。まあそんなのどうでもいいけど」


 こんな私でも、ただでさえ女が少ない世界なのに誰とも恋人にならず、お一人様生活を満喫しているのは、男共に対して少々申し訳ないとは思っている。まあほんの些細な、超微々たる程度だが。


 その雀の涙程度の罪悪感を少しでも無くすために、私はこういう活動をしているのかもしれないな。


 ……まあ本当は金を稼ぐために始めただけなんだが。


 実際【見られるだけならタダ】だし、そんなに手間もかからない。タダどころかお金も稼がせてもらっている。


 私は発育が早く、早いうちから男共に性的に見られていたので、今更性的に見られることに抵抗感もない。


「これはもはやボランティアといっても過言じゃないよな」


 お金を得ているんだからボランティアじゃないなんて正論は受け付けないものとする。


 え? なんでボランティアと言いつつ、男を煽るような文章を画像と一緒に入れてるかって? 


 おいおい野暮なこと言うなよ。そんなの決まってるだろ、その理由は………



 負け組の男共の反応を見ながら飲むビールが最高に美味しいからだよ! ああ今日もビールがうめえ!



以下男どもの反応(あまりに見るに耐えない下ネタは除外して抜粋)

・助かる。

・いつも思うがハクア様見た目だけじゃなく表情までエロすぎだろ。

・俺もこんな彼女欲しいよぉぉぉぉ!

・なぜ俺の周りにはこんな可愛い女がいないんだ!

・僕はもうハクア様のいない世界で生きていくことはできなさそうです。

・ハクア様、毎回毎回文章で男を煽ってくるのくっそムカつく! けど見てしまう。

・医学界でハクア様の写真をみせたら病気が完治したと話題に。

・この世界の救世主。唯一神とさせてください。

・この生意気な女、わからせてやる! と思いながらいつも敗北してしまう僕。

・ふーん……えっちじゃん

・おい俺に貢がせろ! 金ならあるぞ!

・こんな彼女が欲しかった人生だった。

・ハクア様の写真を見て何もしなかったら勝ちゲーム挑戦。0勝記録更新中。

・エロいだけの女に負けるの気持ちよくなってきたやばい

・性癖狂っただろ責任取れ! 責任とって俺と結婚しろ!

・ふぅ……さて、と。どうやったらこんなに色気がある女性が溢れかえる世の中になるのか、研究しますかね。

・おまえら、こいつに慣れちまったら、他のおかずでは満足できなくなるぞ! 過剰摂取に気をつけろ!

・もはや魅力の暴力




ハンドルネーム:世界で最も可愛い女“ハクア”

【今日は普通のバレーのユニフォーム姿でーす。

健全なユニフォーム姿だから、これをいやらしい目で見てたらさすがにやばいよwww】

(ユニフォーム姿で体のラインをくっきり見せている画像を添付)


 うん、今日もいい写真だ。いつも通り世界一可愛い。


 私はいつものように画像と煽り文章を投稿した。


 その後、趣味のゲームを楽しもうとゲームを起動し、スナック菓子とコーラを用意する。食べるときにはコントローラーが汚れないよう、割り箸で食べるのが私流だ。


 そういえば、今日の写真を撮ったときの衣装であるユニフォームから着替えていなかったな。うっかりうっかり。いつもより動きやすい服だからか、着ていて違和感がなかったせいだ。

 

 でも、もうゲームを起動しているので、今からちゃんと着替えるのが億劫だな。


 ……よし! 上からジャージを羽織ろう! もうこれでいいや。


 いつも家ではジャージ姿だし、インナーくらいユニフォームでもいいだろう。うん、ジャージ姿が家では一番落ち着くわ。


 ちなみにこのユニフォーム、私が高校のとき、バレーする際に実際に着ていたものだ。


 こんな普通の衣装でも、胸はかなりあるし、写真の撮り方もエロく見えるように工夫しているし、表情にもこだわっているから、余裕で色気を出せる。


 私にかかればどんな健全な衣装でも、たちまち不健全になる。


 とはいっても、ユニフォームとかスポーツウェアとかは元来露出が多いからさ。これだけ体のラインが出るのなら、色気を出すのなんて他愛もない。 


 前世でも思ってたけど、バレーのユニフォームは絶対に健全ではない。男から見たらただのちょっとだけエロい服だ。


「それにしてもスポーツとか娯楽とか、性別が変わっても安定の面白さだよなぁ」


 私の趣味は球技などの“スポーツ”、ゲームや漫画、小説などの “娯楽”、酒や料理などの “食"が主な趣味だ。ぶっちゃけ趣味だけ聞くと男っぽいよな、わかるわかる。


 私だって最初は、この世界の女がやるような趣味、すなわち恋愛や音楽や舞踊、華道、芸術などを全力で楽しみ尽くすつもりだった。


 最初はね……


 でも、色々やってみた結果、まあなんというか一言で言うと、肌に合わなかった。なんか、やっていて全然楽しみを見いだせなかったんだ。


 そういう性分だったので、しかたなく世間で一般的に言われている女らしい趣味を全てやめ、自分が楽しいと思うことばかりしていた。


 そんなことを続けた女がどうなっていくのかというと、いつの間にか数少ない同性の輪の中に入れなくなる。女共も、こんな常識破りの私をどう扱えばいいのか、わからなかったのだろう。


 さらに言えば、男っぽい趣味は男ウケが良く、常識破りにモテてしまい、ヘイトを買っていたのも大きかったと思う。


 ……てか、むしろこっちの理由がメインかもしれない。



 こんな活動しといてなんだけど、私は本来目立つことが好きな性格ではない。


 私の人生設計では、普通に生きて普通に楽しく暮らすだけの、どこにでもいる女になる予定だったんだけどなぁ……人生ままならないものだ。


「本能のままに生きていただけなのに……後悔こそ全くしてないけど、なぜこうなったのか……」


 割り箸でスナック菓子を食べながら、ふと自分の人生を振り返ってみる。


 私が物心ついてTS転生と自覚した赤子の頃、せっかくならと、変わった性別を全力で楽しみつくそうと決意していた。


 別に前世が男だろうと今は女だし、そもそも生まれた世界だって変わったのだ。郷に入っては郷に従えともいうし、「無理なく男と恋愛できるようならまあオッケー」くらいの、思考の柔軟性はあったと思う。


 男と結ばれる抵抗感を少しでもなくせるよう、なるべく本能のままに生きていこうと決め、実際そうやって生きてきた。


 その結果、恋人を一切作らず、男みたいな趣味を満喫し、一人暮らしを楽しんでいるのだが……マジでなんでこうなった?


 ちなみにこの世界の一般的な女の幸せは、たくさんのいい男と結婚すること。これに尽きる。


 私にはよくわからない世界だが、女性だけで集まった場合、うちの夫の財力が凄いとか、顔がいいとか、能力が凄いなどのマウント合戦をしているらしいよ。なんかちょい怖いよな。


 そんなわけで、一般的な女の幸せは私には叶いそうにない。


 ただ、そんな私が他のどの女共よりもモテるなんて、皮肉なものだ。

  

 まあそりゃそうだろう。もし私よりいい女がいたとしても、そんな女は当然大人気だ。男共は光に集まる虫のように我先にと集まる。その結果、いい女はあっという間に沢山の恋人を作り、男に囲われ……で、それ以降表に出ることはなくなるんだから。


 そんなわけだから、世に出てくる女はだいたいが売れ残りの地雷女だ。しかも、ほとんどが会話が成立するかすら怪しいレベルの。


 というかさあ、そもそもの話、私以外にいい女なんて、本当に存在するのだろうか? 地雷女よりマシな女はいても、魅力的な女なんて都市伝説レベルで見たことがないんだけど。


 女は努力しなくても生きていける世界だから、ある程度仕方がないことなのかもしれないがな。


 そんな地雷女ばかりだから、男からみたら努力している私なんて、キラキラと輝く宝石のように思ってしまうのは自然だ。可愛いし、他の女共と違って表情もコロコロ変わるし、能力も高いし、女なのにちゃんと会話が成立するし……自分で言うのもなんだが、こんな優良物件はなかなかない。


 ……まあ、そんな完璧な私でも、男共から見たらたった一つだけ大きな欠点があるらしい。こんないい女捕まえて欠点があるってほざくなんてほんと贅沢な奴らだ。


 その欠点とは、どれだけ熱烈に口説いたとしても友達止まりで、恋人に発展しないところだ。


 これに関しては不可抗力だ、わざとやっているわけではない。単純に、私が惚れる男がいなかっただけのこと。


 人生で1人も恋人を作っていない自分が言うのも何だが、私は私なりに男に歩み寄ったつもりなんだけどなあ……



 私に一人も恋人ができなかったのには、大きな理由がある。


 私には男の下心が手に取るようにわかってしまい、それを見た瞬間どうしても萎えてしまうのだ。


 いい男もたくさんいたんだけど、性欲に支配されている顔とか見てしまうとなあ……


 というかさあ、これだけ本能のままに生きている私をメス堕ちさせられなかった男が悪いんじゃね? もっとうまく男共が性欲を隠せば、私だって恋愛していたのかもしれないのに! 


 うん、絶対そうだ! ワタシ、ワルクナイ!



「無理して嘘を吐きながら生きるのなんて嫌だしね。このままでいいや」


 私らしくのびのびと生きてきた結果こうなっただけだ。反省も後悔もしていない。


 そんなことを一人でつぶやきながら、対戦ゲームを楽しむ。このゲームにはかなり熱を入れてプレイしているので、ランクは最上位帯まで行っている。


 一試合が勝利で終わり、もう一試合行こうとする。その間に固まった体をほぐすために、少し伸びをしてみた。うーん、きもちいい。 

 

 伸びをして画面から目を離したからか、ふと私の部屋の棚が目に入った。

 

 部屋の棚には数々のトロフィーが所狭しと並んでいた。


 これらは学生時代に獲得したものだ。


「学生時代、まじでスポーツで無双したなぁ」


 私は感慨深げに呟く。


 私の学生時代はスポーツしかしていなかったと言っても過言ではない。


 ただしこれは今世からハマっただけで、前世では全然運動なんてできなかった。前世では大縄跳びとか心底大嫌いだったし、運動会の日なんて隕石が落ちてきて地球が終わることを願っていたし、山登りなんてお金をもらったとしてもやりたくなかった。


 そんな私が今は運動が大好きな理由。それは、前世と比べて体の動きがいいのが、爽快感があって楽しかったからだ。


 それに加え、私は趣味に全力なタイプだ。これは前世とも共通した考えだけど、私はやるからには本気で一番を目指す。競争になると負けたくない。負けると死ぬほど悔しい。そういう性格が前世から引き継がれている。


 運動好き、趣味に全力、負けず嫌い。その3つの性質が合わさった結果、体を鍛えまくる女という、この世界ではかなり型破りな女が誕生した。


 

 運動の中では、陸上競技、武道、水泳などよりは、球技全般がとくに好きだ。具体的には、バスケ、バレー、野球、サッカー、フットサル、ハンドボール、ドッジボール、タッチラグビー、テニスなど。


 学生時代も、女子である私がお願いすればメンバー集めは容易かったので、試合をすることは難しくなかった。休み時間や土日には、毎日のように試合してたっけ。


 それだけでは飽き足らず、複数の部活にも助っ人として参加させてもらっていた。所属もせず自由に参加するのはどうなんだと問題視されたこともあったが、私が先生方に可愛くお願いして対処すれば、以降はなんの問題にもならなかった。


 女のお願いはこの世界では必殺技なので、大体のことは可愛くお願いすればなんとかなるのだ。



 球技において、どの競技も甲乙つけ難く楽しい。なので私はすべてを楽しみ尽くしたかった。一つの競技に絞って取り組むなんて、どうにももったいない。どうやら私はことスポーツに関しては欲張りらしい。

 

 もちろん、ただ楽しく遊ぶだけでいいという部類の人間でもない。すべての球技を楽しみながらも、すべて勝つつもりで動いた。


 だが、複数の競技に取り組んでいるため、一つ一つの競技を練習する時間が圧倒的に足りない。まあ当たり前のことだ。


 それでも関係なく、全ての競技でどうしても勝ちたかった。得意なことで負けるのは身が引き裂かれるくらい悔しい。無茶を言っているのは分かっているが、それが私の本音だ。


 だから、どうすれば全てで勝てるのかを全力で考えた。考えに考えて、最終的に考えついたのが、小手先のテクニックを鍛えるよりも、汎用性のあるフィジカルを鍛えること。


 フィジカル――つまり学校の体力測定に特化して鍛えることに全力で力を注いだ。


 特に「学生の間くらいの年齢が一番身体能力が上がりやすい」というデータがあったので、体ができてきた小学校高学年くらいから、かなり本気でトレーニングを始めた。


 ただがむしゃらに頑張るのではなく、有名なスポーツトレーナーに話を聞きに行ったり、栄養学の本や論文を読んで実行したりと、座学にも力を入れたし、部屋にトレーニングルームを作ったりとお金も惜しまなかった。


 そうして出来上がったハードかつ、効率的なトレーニングメニューを、毎日欠かさずこなした。


 いやあ……あれは若さのなせることだったな。あんなハードなことを子供の頃の私はよく続けられたものだ。今同じ量トレーニングしろって言われても、絶対に無理だ。


 まあとにかく、そうした血の滲むような努力の結果、学生時代に無双することに成功したってわけだ。


 特に中学時代はまだ体が成長しきっていない男も多く、早くに成長期を終えた私の方が体が大きいなんてことはざらだった。だから、その時期は男共に連戦連勝だった。

 

 今部屋に飾ってある数々の優勝トロフィーだって、その頃に取ったものがほとんどだ。私の住む地域はスポーツが盛んではなかったので、私がワガママで無理やり公式戦などに参加させてもらっても、地区大会くらいは優勝できた。


 男は女を「守るべき存在」と認識しているので、守るべきはずの存在に負けた男共は、かなりのショックを受ける。だから私の周りでは、男としてのプライドを守るため、私に負けないよう本格的に運動を頑張る人が増える。


 そんな流れの中、中学生くらいまでは体力テストで総合一位をキープできた。これはかなり凄いことだと思う。私凄い! 天才!


 だが、高校生になってからは男も体が成長しきり、男女の肉体の性能差も相まって、体力テストで総合一位を取ることはできなくなっていた。高校一年のときは学年3位、2年は5位、3年は8位にまで落ちた。


 私は誰よりも努力をしていた自覚はあるし、才能もあったと思う。それでもこういう結果になったのは、男共も本気で鍛えたからだろう。


 そのせいか、私の通う学校では、中高両方とも部活の実力はそんなに高くなかったのにもかかわらず、私が入学している年はほとんどのクラブが全国大会に出場した。


 ちょっと私一人に影響されすぎじゃないか? とも思うが、いい女にいい格好を見せたい男の気持ちは、思っていたよりも強いということだろう。



 まあそんなわけで、私の学生時代はスポーツ中心で生きてきた。だから、高校を卒業後は、私が頑張ってきたスポーツを仕事にしようと、今ではスポーツコーチなんてものをしている。


 私の強みは沢山の球技に誰よりも全力で取り組んできたことだと自負しているので、こういうことを仕事にしたのだ。


 複数の球技をガキ共に教えているので、「総合球技クラブ」と名乗っている。


 まあ教えると言っても“楽しく遊ぶことが第一”というコンセプトの、ゆるいクラブだ。うまくなるためというより、最低限のあいさつなどの礼儀と、球技の基本的なルール、楽しく遊ぶためのマナーなどを主に教えている。


 女性コーチがいるという評判も相まって、今のところ人気で嬉しい限りだ。


 そんなふうにしっかり仕事をしているので、私は本業だけで生きていけるだけの稼ぎがある。


 でも、もっと稼ぎたい。男に頼らないで生きていくためにはもっと欲しい。この家も誰にも頼らず私のお金だけで買ったので、ローンもまだ残ってるし。


 だから軽い気持ちで副業を始めた。


 副業の収益は今のところ資産運用のお金にしている。資産運用をしている人なら誰でも知っているような王道の投資しかしていないが、これがまあ思ったより稼げるだわ。



 私がお金を稼ぐことに拘る理由は、稼げるときに稼ぎたいという気持ちが強いからだ。


 本業も副業も、どちらの収入も私が年老いていけばできなくなる。だから、今後の人生のすべてを賄える金を、若いうちに稼ぎきりたい。


 老後には温泉地に住んで、何匹か大きい犬を飼って、美味しいものを食べるような、悠々自適な生活が目標だ。


 え? 稼ぐことがメインなら、画像と一緒に男を煽る文章なんて必要ないんじゃないかって? おいおい野暮なこと聞くなよ。そんなの理由なんて決まってるだろ。それは………



 高校時代に肉体の性能差で私に身体能力で勝ちやがった男どもは、やっぱりムカつくからだよ!



以下男どもの反応(あまりに見るに耐えない下ネタは除外して抜粋)

・今日もハクア様に負けた。興奮してはいけないシリーズ全敗。

・勝てるわけないんだよなぁ 

・女がペン持ってるだけで興奮してしまうワイ、刺激が強すぎる

・“腰”って漢字に女が入っているってだけで興奮してしまうレベルのワイも無事敗北

・女がそこに存在してるだけで興奮する 

・女なら幼女だろうがおばあさんだろうがなんでもいいとはいえ、ハクア様色気ありすぎ

・これはいけません! これはいけません!

・ユニフォーム……これはいいものだ

・この画像、モテなさすぎてこじらせた俺が見ている悲しい幻覚じゃないよね!?

・ふーん……えっちじゃん

・2次元より可愛いのバグ

・もはや同じ世界に生きてるってだけで興奮する

・このシチュエーション。リアリティがまったくないので、私としては厳しい評価

をつけざるを得ないですね。うーん……控えめに点数つけたとして……100億点かな

・悲報。俺。流石にやばかった。

・この写真のためだけに毎日生きてる



ハンドルネーム:世界で最も可愛い女“ハクア”

【御主人様。私に見とれてアホ面を晒すのやめてもらえませんか。気持ち悪いです】

(蔑んだ目をしながら、胸元が緩めなミニスカメイド服を着ている画像を添付)


 仕事から家に帰ってきた私は、いつものように画像を上げる。


 世の男共はコスプレ服が好きなのか、こういう服を着た日はいつもよりインプレッションが稼げる。ナース服やスーツなども同様にやたらと食い付きがいい。


 おそらくその理由は衣装が魅力的なだけではなく、物珍しいというのもあるのだろう。この世界の女は働かなくても生きていけるので、仕事着を着ている女を見る機会なんて早々無いし。


 まさにナース服やスーツなどは、二次元の女くらいでしか見られない、男の憧れの衣装なのだ。


 では、普段のこの世界の女はいったいどういう服を着ているかというと、1割が普通の地味目な服で、残りの9割はド派手なドレスのような服を着るかの2極化している。


 あまり目立たず、男を怖がっているような女達は地味な服。プライドが高く、付き合っている男の数や質をステータスにしているような女は、目立つために派手な服を着ていることが多い。


「もっと可愛くてまともな女が世に出てくれば嬉しいなぁ……」


 そう呟きながら、私は帰宅途中に買ってきたちょっと良いお肉をフライパンで焼いていく。


 なんとなく今日は肉とご飯をガッツリ食べたい気分だった。無性に肉が食べたい。そういう日って何故かあるよね。


 肉が焼けるのを待ちながら、どうすれば世の中にもっと可愛い女が表に出てくるかについて、思いを馳せる。


 別にこの世界の女共も素材が悪い訳ではないのだ。おそらく磨けば可愛くなる。


 だが、地味目な女の子は前髪で顔を隠したり、常に下を向いていたりなど、コソコソ隠れて過ごしているので覇気を感じないし、逆に派手な女共は、過剰に宝石などのアクセサリーや香水を付けたりなどと、あまりにやりすぎている。


 そういう風潮があり、なかなか可愛い女を見ないのだ。まあ、どんな女でも男は肯定してくれるので、仕方がないのかもしれない。


 でも、せめて派手な女共があまりにTPOに合わない格好をしていたら、注意くらいしてあげて欲しい。おそらく注意され慣れていないので、口うるさく言うと嫌われる可能性が高いが、それでも言ってあげるのが本当の優しさってやつじゃないだろうか。


 ……とはいえ、私は絶対にやらないけどね。派手な女共は思っている倍くらい厄介だから、関わりたくないもん。


 逆に言えば、地味な女共には少しは期待してもいいかもしれない。なんせ性格も派手な女共と比べると、まともでいい子が多いし。


 地味な女って、性格はまともなのだが、まともが故に男の熱い視線を怖がり、家に引きこもっているから、世に出てくることには期待できないのだが……


 私としては、もうちょっと頑張って外に出てきて欲しい。


 でも、地味な子が仕方なくやっている「安全な場所で引きこもる」という手段は、この世界の女が生きるうえでの一つの正解だとも思っている。


 他の国と比べると圧倒的に治安が良いとはいえ、飢えた男や変な男はどこにでもいる。私のように女一人で外を歩くなんて馬鹿なことをしたら、危険な目に遭う可能性は高い。


 私は運動もできるし、防犯対策もバッチリしているし、犯罪者には徹底的に容赦しないことも有名だし、住む街に顔見知りがたくさんいるので、いざとなれば守ってもらえる。


 これだけ対策していても、何度か変質者に出会ったことがあるのだ。


 もちろん全て警察に捕まえてもらったが、それだけ女性一人というのは危ない。どれだけ対策していても、この世界では完全に安全というわけではない。


 だから、家に引きこもるというのは一番リスクの少ない行動なのだ。


「私だったら引きこもる生活をずっと続けることなんて、退屈すぎて耐えられないだろうなぁ」


 男に守られながら引きこもっていたら、今私がエンジョイしていることなんて、ほとんどできなくなる。だって、男は決して女を一人にさせるなんてことはしないから。


 そんなことを思いつつ、冷蔵庫から適当な生野菜を取り出し、軽く洗って皿に盛る。


 そろそろ肉の焼け具合もいい感じだ。


 私は肉を焼いているフライパンに、さっと焼肉のタレをかける。


 私は小皿に焼肉のタレを入れて、焼けた肉をその都度つけて食べるタイプではない。何故なら小皿を洗うのが面倒だから。食べた後片付けのことを考えると、使う皿はすくなければ少ないほうがいい。


 サラダの上に焼いた肉を入れる。米も仕事前にタイマーで炊くようにしていたので、ちょうど炊きたてだ。


 よし、今日の夕食の出来上がり! ああ……焼き肉の香ばしい匂いが食欲を刺激する。たまんねえわ。

 

「いただきます」


 私は肉をご飯の上にワンバウンドさせて、肉と米を一緒に食べる。


 馬鹿みたいにうまいわ。米にワンバウンドするのはあまり行儀の良い食べ方ではないらしいが、この食べ方がどう考えても一番うまい。


 箸休めにサラダを食べ、また肉と米を食べる。無我夢中でそれを繰り返す。


「ごちそうさまでした!」


 そのように食事を楽しんでいると、あっという間に食べ終えてしまった。


 ついついガツガツかきこんで食べてしまったが、いい肉なのでもう少し味わって食べればよかった。おいしいものほど勢いよく食べてしまうクセ、やめたいなあ。どうも本能のままに食べてしまう。まあ食べ終わった後にそう思っても後の祭りか。


 食べてしまうと、途端に片付けが面倒になる。こういうときだけは、男が全部皿洗いなどの雑用をやってくれるだろうし、他の女が羨ましい。

 

 怠惰に過ごしたい身体に鞭打って、ササッと洗い物を終わらせ、満腹になった腹を擦りながらソファーでくつろぐ。満腹の後、一人でダラダラする時間も割と好きなんだよね。


 こういう幸せを世の中の女は知らないんだろうな。


 うーん、一人暮らし最高!


 でも、私が女としては異端だから、こういう自立した生活に幸せを感じるのだろうか……?


 いや、おそらく他の引きこもっている地味な女の子も私のようにできないだけで、心のなかでは私のことを羨ましいと思っているはず。地味な女の子から「私に憧れている」とネットで密かに応援されたりすることもそこそこあるし。


 そういう子は勇気を出して外に出てみて欲しいな。あっ、もちろん私のように一人で街を歩くなんてことは絶対にしないでほしい。危ないから。


 …… 地味な子に少しでも勇気を出してもらうために、「実は私も昔はとっても地味でしたが、今ではこんなに垢抜けて可愛くなりました!」なんて嘘をついて、もっと私に憧れてもらうのはどうだろうか。


 いやだめだな。だって私は最初から可愛かったし。一瞬でも可愛くなかったと言うなんて、私のプライドが許さない。


 まあ最初から可愛かったと言いつつ、身だしなみにはそこそこ気をつけているのだが。


 特に髪には気をつけている。私は肩の下くらいまである長い髪を暗めの茶髪に染めているので、髪の痛みが目に見えて分かりやすく、ケアを怠るとパサパサになってしまう。


 だから、ちょっといいトリートメントを使ったり、ヘアオイルやヘアスプレーで艶出ししたりなどしながら、丁寧にケアしている。


 そのおかげか、潤いのある輝くような茶髪をたなびかせながら歩くことができている。髪は私の一番の自慢なので、意味もなく手で髪をファサッとかきあげたりなんてこともある。


「前世では美容に疎かった割に、よくこんなに頑張ったよなぁ……私、偉すぎ!」


 やっぱさあ、せっかく女に生まれたのだから、可愛くありたいじゃん? 


 そういう考えがあったので、もともと可愛かったが、より可愛くなるために色々頑張った。


 前世が男だったので、メイクや美容に疎かったが、この世界の美容好きの男子に根掘り葉掘り聞いたり、学生時代にいろんな髪型やメイクを試して男共の反応を伺ってみたりして、自分なりに全力で気を使った。


 茶髪に染めた理由も、カラーコーディネーターに私に一番似合う髪の色が「暗めの茶髪」だと教わったからだ。


 何故か男共は黒髪こそ至高だと思っている節があるが、だいたいそういう男は私の茶髪姿を見て、自分の考えが浅かったことを痛感することになる。


 そんな風に色々試行錯誤をしたので、今ではどんな格好が似合うか、どのメーカーの化粧品や美容グッズが自分に合うのか、というのは熟知している。


 こういう試行錯誤の一つ一つが、私の可愛さを作っているのだ。元々の顔の良さも相まって、今では世界一可愛いと自身を持っている。


 ネットでの活動名を“世界で一番可愛い女”にしているのも、私の美への自信の現れだ。



 まあ、実はそれ以外にもこの名前にしている理由がある。しょうもない理由なんだけどね。


 しょうもない理由、それは「この世界の女共に喧嘩を売っている」というものだ。


 なぜそんなことをしているかというと、まあ一言で言うと、この世界のほとんどの女共が気に食わないからだ。


 この世界の女は大切に大切に育てられているので、沢山の過剰な愛情を受けて育つ。どんな女の子でも親や兄弟、周りの男から「お前は世界一可愛いんだ」と何度も褒めそやされる。


 だから、自分が世界で一番可愛いんだと、人に言われるがまま信じ込んでしまう。


 まあ、そんなことは前世の純粋な子供などでもよくあるようなことだ。一見問題ないように思える。


 だが、それが問題ないのは前世だからだ。この世界では少し事情が違う。


 前世なら大人になるにつれ、勘違いだったと自然に気づくことができる。


 テレビや雑誌、なんなら街に出るだけで、周りに比較対象がいくらでもいるし、たとえ勘違いしたまま成長したとしても、そういう人は嫌われる可能性が高い。ずっと勘違いしたままで生きていくのは相当難しいだろう。


 だが、この世界では女性が貴重なのだ。


 女というのは大量に蔓延っている男から、「どうにかして好かれたい」と思われる対象だ。そんな存在が嫌われることなんてそうそうない。


 さらに、女は少ないので、比較対象がそもそも少なすぎる。もっと言えばこの世界の女はまともな人ほど表に出てこない。なので、仮に比べる相手がいたとしても、はたから見たらどんぐりの背比べでしかないのだ。


 そういう事情があり、この世界の女共は「世界で一番可愛いのは自分」だと認識しやすく、その考えが勘違いだと気づきにくい環境にある。だから、この世界の女性はなんの努力をしなくとも自分が世界で一番可愛いと認識してしまいがちなのだ。


 そして、その考えを改めることなく成長した結果、どんな格好をしても「世界一可愛い私なら何でも似合う」と思い込み、ファッションやメイクの試行錯誤をしない。そういう試行錯誤は自分のセンスを磨くためにはとても大事で、決してこれをおろそかにしてはいけないのにだ。


 また、そういう女は人の話も聞かないので、余計たちが悪い。ゆえにこの世界の女はセンスの悪い服装をしがちなのだ。



 センスの磨かれていない女が世の中に出て、他の女といい男を取り合うようになると、まあ大変なことになる。


 他の女との個性の差を出すために、自分の磨かれていないセンスを信じ切り、斜め上の方向に全力疾走してしまう。


 そうして競争しているうちに、何故かファッションで財力を示すことに行き着き、派手な宝石やアクセサリーを大量に身に付けたような女があふれるというのが、よくある一般的なこの世界の女だ。


 もちろん、そのお金は男が貢いだ金だ。この世界の男も内心溜まったものじゃないだろうね。


 

 そして今までの話は、本当に可愛い人には当てはまらない。そう、私のように。


 そんな元々可愛い私が努力してもっと可愛くなっているのだから、この世界の女が私に可愛さで勝てるわけがないのだ。


 だから私は“優しさ”で私の洗練された可愛さを女共に見せつけ、初めての挫折を経験させてあげているのだ。うん。私って超優しいな。


 まあでも実際、老いというものがある限り、ずっと世界一可愛い女でい続けるのは難しいだろう。おばあさんになってこの活動をすることなんてまあ無理だ。


 だけど、10年間くらいは世界で一番可愛くい続けていたいと思っている。私の欲を叶えるためには、この程度の期間が必要だろう。


「……簡単に言ってみたけど、これって結構大変なことかもしれないな」


 ソファーの上でスマホを弄りながらそう呟く。


 私の理想を話そう。今から言うのはあくまでこうなればいいという理想だ。


 まず10年くらい一番可愛くい続けて、稼げるところまで稼ぎ尽くす。


 そしたら、私の真似をして私に対抗しようとしてくる子が沢山現れる。


 その中で一人くらい若くて本当に可愛い子が出てくる。


 私が可愛さで負けたと思ったらこの活動を引退し、なにか別の活動をする。


 この流れが叶うのが今思いつく一番の理想だ。


 その理想を叶えるためにやることは一つ。今まで通り毎日写真をあげ、プライドの高い女には敗北感を与え、若くて純粋な女の子には可愛い私に憧れてもらう。


 憧れてもらうために、生き生きとした写真を上げ続ける。恋愛も結婚もしなくてもキラキラと幸せに輝き続けるところを見せつけてやるのだ。


 そうしたら自然と私のような活動をする女が増えていくだろう。


 ちなみにだが、軽い気持ちで私の活動の真似をするのは少し危険だ。


 私はしょっちゅう運動をしている副次効果でメンタルが安定しているので大丈夫だが、メンタルが強靭な人以外がこの活動をすると、必要以上に身を削ってしまう可能性が高い。


 この活動で大事なのは、どれだけ男共に「もっと過激な格好になって」と頼まれても、一切気持ちを揺らすことなく、必要以上に脱がないこと。


 これが簡単なようで案外と難しい。


 なぜなら、男が女を脱がそうとする熱意は相当なものだからだ。本当にアイツらはありとあらゆる手で脱がせようとしてくる。男の「さきっちょだけだから!」は決して信用してはいけないのだ。


 普通の女なら、何度もお願いされれば、しつこさと場の空気と熱意に押され、軽い要求を飲んでしまう。だが、一度でも要求を通してしまうと、要求を聞くことに少しずつ抵抗がなくなってしまう。すると、いつの間にか過激な要求も聞いてしまう。あとは堕ちるところまでどんどん堕ちていく。


 写真を上げるだけの簡単な活動だとはいえ、私くらい成功するには揺れないメンタルが必須なのだ。


 ちなみに、私の裸は誰にも見せるつもりはない。こんないいもの、そこらの男共にタダで見せるのなんて、あまりにもったいないもん。


 だから、私は写真で服を着たまま色気を振りまいているだけだ。直接的なエロでは勝負はしない。

 

 ということはだよ。


 おい私のことが嫌いな女ども! チャンスだぞ! いま脱げば男の視線を独り占めできて、私をオワコンにできるかもしれないぞ!


 ……まあいくら脱ごうが私のほうが圧倒的に可愛いから人気では負ける気はしないし、最悪そうなってもいいのだが。


 え? なんでそうなってもいいのかって? おいおい野暮なこと聞くなよ。そんなの決まってるだろ。それは……



 私も男と同じように女のあられもない姿がみてぇんだよ! 言わせんなこんなこと!



以下男どもの反応(あまりに見るに耐えない下ネタは除外して抜粋)

・メイド……だと……(膝から崩れ落ちる)

・ほう……そういうのもあるのか……

・可愛い! エロい! 好き!

・こんな可愛いメイドに世話されてぇ~

・もちろん夜の世話もしてくれるよなぁ!

・二次でしかみないシチュエーション!ふおおおおお!

・おっぱい! おっぱい!

・そんなことより俺と結婚してくれ!

・メイド服はロマン

・あ~脳が破壊されれぅ~

・ふーん……えっちじゃん

・ドン引きされながら夜のお世話されたい

・いくら払えばこんなメイドを雇えますか?

・こんなメイドが沢山いる世界に異世界転生したい! トラックに轢かれればワンチャンあるかな?

・なんでこんな可愛い女が存在しているのに、俺の周りにはむさ苦しい男しかいねぇんだ!!!



ハンドルネーム:世界で最も可愛い女“ハクア” 

【知ってる? 人って10秒目が合うだけで恋に落ちるらしいよ? まさかとは思うけど、画像を見ただけで私のこと好きになんてならないよね?】

(黒のミニドレスを着て、足を組んで椅子に座り見下した表情をしている画像を添付)


 今日は私がこの活動をしてちょうど一周年の日だ。だからといって私はいつもと変わらず、普段通りに画像を上げているが。


 というか、1周年ってことに全く気が付いていなかった。コメントで教えてもらって初めて気づいたわ。みんな私よりマメだねぇ。というか私がズボラなだけか。


 今日が1周年ということは、なんだかんだ365枚の写真をネットにあげたということだ。


 私は一枚たりとも同じ写真をネットにあげていないので、365種類の私を見られたということになる。男共は大満足だろう。


 そんなことを思いながら私は今日上げた画像への感想のコメントをざっくり確認する。


「うーん。みんな恋愛大好きなんだなぁ……お盛んなこって……」


 今日の煽り文に返事するように、私のことを愛してしまったとか、俺の女になれだとか、私を恋人に望む声が沢山くる。半数以上は私を褒めるためにネタの範囲で言っていると思うが、中にはガチでそうなりたいと思って言っている男共もいる。というかガチで言っている男共のほうが多そうなんだけど。


 おい男共! もし本気で私と付き合いたいなら、もっと頑張って性欲を隠すようにしろよ! 私は性欲に支配されている顔を見ると萎えるのだ。もっと死ぬ気で性欲を隠せ! どの男も流石に顔に出過ぎだぞ。


 ……なんだかんだ、数々の男共から色々な方法で熱烈に口説かれてきたが、結局私はメス堕ちしなかったなあ。 


 これからも何か変なことがないかぎり、私は一生独り身だろう。

  

 もし本気で私に恋している男共がいれば、ずっと片思いさせることになるな。そういう男には申し訳ないと……思わないな。うん。別になんとも思わねぇや。


 なんなら、一生私に恋焦がれたまま、手の出せない高嶺の花として君臨してやりたいくらいだ。


 私は恋愛しなくても楽しく生きているタイプだ。それでもこの世界の恋愛至上主義の女共よりも人生楽しんでいるだろう。やっぱ恋愛なんて無理やりするものじゃないね。


「それにしても一周年か……時が経つのは早いな」


 この活動を始めて1周年が経つが、おそらく私の影響で世の中が少し変わったんだと思うことが少しだけある。


 例えば、男のギラつきがほんの気持ち程度低くなった気がする。まあこれは気持ち程度だが。

 

 あとは、女が世に出てくるハードルが少しだけ下がった気がする。


 それによって、私に対抗してきた女なども何人か出てきた。ただし、そういう女共は自分のことが世界一可愛いと勘違いしているタイプの残念な女共だ。なんの策も練らず真っ向から画像を上げて、私に対抗してきただけの愚か者でしかない。


 当然なんの工夫もしていないので、私ほど人気は出ずに、敗北感からか画像を消し、ネットの世界から撤退していく。


 なんで体重120キロオーバーの女や、ごってごてにセンス悪く着飾った女などが、一瞬でも私に勝てると思ったのか……心底理解できない。

  

 まあこれは失敗した例だが、私に憧れて世に出てきて、成功した女もいる。しかも二人もだ。1年で二人は少なく見えるかもしれないが、私はこの世界で二人も出てきたら上出来だと思う。


 一人は品の良いおばあさん。私の生き方に刺激を受け、自分も何かしようと思い立ち、本を書いた。その本は自叙伝で、おばあさんの今までの波乱万丈な人生を描いている。


 内容をかいつまむと、上流階級での女性の等身大な暮らし方や、ある外国人男性との大恋愛、大物有名人とのあれこれなど。この内容がドラマチックで面白いと話題となり、大ヒットした。


 その後、お喋りも達者であることが判明し、今は作家からタレントとなり、テレビなどで活躍している。



 もう一人は小学4年生の女の子。この子はロックシンガーの卵として自作のオリジナルソングを歌いながら、ギターを弾いた動画をネットで公開し、その姿が有名になった。


 まだ未熟で荒削りな部分もあるが、女の子が全力で歌う姿に感動した人も多い。


 ちなみにこの女の子は、私の本業である総合スポーツクラブの教え子で、このクラブに参加している唯一の女の子だ。


 私みたいにキラキラしながら生きていきたいとのことで、周りの反対を本人の熱烈なお願いで押し切り、私の元にやってきたのだ。


 珍しくこの世界の女なのに素直でいい子だなと思い、私は現在進行形で凄く可愛がっている。その子も私に憧れているので、よく私に人生相談などをしに来ていた。


 しょっちゅう「私はかっこいい女になりたい」と言っているような子で、どうすればかっこよくなれるかをずっと考えて暮らしているようだ。


 私の中のかっこいい女っていうのは、失敗しようが挑戦することを諦めない人だ。そういう人が男女問わず一番かっこいいと思っている。そのようなことをその子に言った覚えはあるが、まさかいきなりロックシンガーとしてデビューするとは……なかなかかっこいいじゃん。


 この二人が今話題の人だ。


 それにしても、まさか本当にまともな女が世に出てくるとは思わなかった。そうなれば嬉しいと思っていただけで、本当にそうなるとはな。


 私には「世の中を私の力で変えてやる!」みたいな気概は全くない。ただ自分が楽しく生きるために動いてきただけ。


 ちょっと1年こういう活動をするだけでこんなことになるなら、まともな女も、ちゃんと探せばいるのかもしれない。


 いやぁ〜、これなら私がオワコンになる日も近いかもしれないな〜。実際には私はまだまだ二人より圧倒的に有名だけど、うかうかしてられないかも。


 ……でもまあ、どんなに女が出てこようとも、まだまだ心配しなくてもいいか。


 え? 私より他の二人の女のほうが生きてきた経験値や、将来性があって凄いんじゃないかって? おいおい。そんなこと聞くなんてさてはお前女だな? そんな野暮なこと聞くなよ。


 何度も言ってきたことだが、改めて言ってあげよう。それは……



「結局私が世界で一番可愛くて最強なんだよね!」



 終わり!




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タイトルは女が貴重な世界なのに、小説情報は女が多い世界とある。 どっちやねんとおもったらタイトルの方が正しいのね。 流石にちと混乱しました。
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