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短編集

女性が貴重な世界にTS転生してしまったけど、わりと楽しく一人で生きています。

ハンドルネーム:世界で最も可愛い女”ハクア”

【どうも女に生まれた勝ち組ですwww男に生まれた負け組ざまぁwww

男はこんなちょっとした画像で必死になってるの可哀想すぎて笑えるwww】

(部屋着を着崩している自分の自撮り画像を添付)


「画層を貼ってと…こんな感じかな…」


 季節は冬。暖かい部屋で食べる鍋とビールが最高に美味しい今日この頃。私こと”砂糖はくあ”は仕事から帰ってきてからすぐに着替え、スマホで撮った写真を男を煽るような文章と一緒にネットの海に投げ入れた。

 

 整った顔、メリハリのあるボディ、スラリと長い脚、きめ細かい肌、艶のある茶髪ロング。豊かな表情。


 こんな美少女要素をふんだんに盛り込んでいる私が、モテない可哀想な男共に夜のお供を提供してあげる。うん。私ってマジ聖母だわ。


 画像を貼ったばかりなのに、どんどんインプレッションが増える。


 インプレッションというのはざっくりいえば、どれだけの人数がこの画像を見たかが分かる数字の統計だ。


 とてつもない速度で増えていくインプレッションの数値。これだけ成果が目に見えてわかると楽しいものだ。


「相変わらずこの世界の男チョロいなぁ」


 インプレッションが増えるたびに収益を得ることができる仕組みのサイトに画像を上げているので、この程度のことしかしていないのに私はかなりのお金を稼ぐことができている。


「最初は副業として始めたことなのに、今では圧倒的にこっちのほうが稼げているっていうのもなぁ…」


 自分も”元は男”だったので、この軽く胸の谷間くらいしか見えない私の画像程度でも、この世界の男は食い入るように見ているだろうというのが容易に想像できる。


 まあ元は男といっても前世でものことなのだが…

 

 そう、自分はなぜか前世の記憶を持ったまま、この男女比が100:1の女が希少な世界に生まれてきたのだ。


 女性がこれだけ少なくて人口が増えないのではないか、どんどん人口が減っていくのではないか、と疑問に思うかもしれないが、この世界では女性の体や仕組みが変化しているので問題はない。


 この世界の女性は一度に沢山の小さい赤ちゃんを産むのだ。前世の感覚ではありえないことだが、この世界では至って普通のことだ。


 小さすぎる赤ちゃんとして産まれてくるが、この世界の赤ちゃんは、体の小ささなど些細な問題かというようにすくすくと成長する。


 ちなみに男女比以外は前世の日本と大まかには変わりはない。地名や言語などは前世と全く同じだ。


 ただ、男女比に偏りがあるせいで前世と大きく変わっている文化がある。それは、女性が”過剰”に大切にされるという文化だ。特に、この国では他国よりその傾向が激しい。


 そのせいで、この国ではある1つの問題がある。


「スマホでどのアダルトサイト見ても実写の女がいねぇ」


 そう、実写エロコンテンツが全く充実していないのである。それだけではなく、ただただ女性が写っている日常の動画や画像ですらネットで見かけることはほとんどない。


 なぜそんなことになっているのか。


 その理由は、この国では女性のプライバシーを脅かすと重罪になるからだ。違法に女性を盗撮することはもちろん、女性に無許可で写真や動画を撮ることも罪になる。


 過去には、自分の妻との夜の行為を無許可で盗撮し、ネットにアップした男がいた。その男はあっという間に逮捕され、懲役20年になったそうだ。その時の動画は徹底的にネットの海から消され、今では跡形もない。


 そのような法律があるから、女性の実写コンテンツは世の中に出てこないのだ。


 個人的には女性を守るためだと言ってもやり過ぎだとは思うのだが、そんな厳しい法律のおかげか、外国よりも格段に治安が良いので悪い面ばかりではない。 


 海外では女性のひとり歩きなんて危険で絶対にできないらしいが、この国では女性である私が一人で道を歩いていても、あまり危険な目には合わない。もちろん100%安全ってわけではないので注意は必要なのだが。


 そんな社会で男たちはどうやって性欲を発散させているかというと、主にフィクションのエロ漫画やエロ小説である。実写エロコンテンツがない代わりに、エロ漫画やエロ小説などは豊富にある。


 男共は基本的にそれらを用いて性欲を発散しているというわけだ。


 別にエロ漫画やエロ小説が豊富にあるのだから、実車の女の姿なんてなんの問題もないじゃんとも思うが、まあ”なまもの”を求める男達の気持ちもわからなくはない。


 今でこそこうして可愛くてスタイルの良い女として生まれた私だが、前世の記憶の影響か、性的趣向は男と近い。男の乱れた姿なんてみたくないし、女の乱れた姿はいくらでも見たい。 


 なので、自分が性欲発散するときには主に男向けのエロ漫画を利用させてもらっている。

 そのときに、無性に生の女の動画や画像が欲しくなる時がたまにある。そういうとき、この世界では諦めるしかないのが現状だ。


 だが、そんな現状に待ったをかけた人物がいる。そう、私だ。その厳しい法律も女性が自らの意思で写真や動画をのせることにはなんの問題もない。


 他の女性は私のようにネットに画像をのせることなどはしないだろう。


 そもそもこの国の女性は大切にされすぎているので、貢がれるのは当たり前。金なんて困ることはないし、承認欲求も男に大事にされることで充分満たされている。男も女性を独占したがるので人目に見せるようなことはさせたくない。


 つまり、女がネットに画像をのせることにメリットがないのだ。


「それにしても、私の画像を見た男共はIQ溶けてるとしか思えない反応するなぁ」


 今日上げた画像に対する男どもの反応を見ながら、私はつまみのチーズ味のスナック菓子と缶ビールを開けた。


 いつもは晩ごはんをしっかり食べてから晩酌するタイプなのだが、なんとなく今日はつまみだけで過ごしたい気分だった。こういうとき融通がきくのが一人暮らしのいいとこだよね。


 ちなみにこの世界の女は一人暮らしなんてしない。そもそもひとり暮らしなんてできる生活力がない。こんな世の中で一人で暮らしている私は相当変わり者だと思われているだろう。


 どうも私は一人でいることに抵抗がないようだ。それどころかひとり暮らしが性に合っていて、楽しくて仕方がない。


「こんな若くて可愛くて体つきがエロい女がフリーなんて、男共は心底私が欲しいだろうな。まあそんなのどうでもいいけど」


 こんな私でも、ただでさえ女が少ない世界なのに誰とも恋人にならず、お一人様生活を満喫しているのは男共に対して少々申し訳ないと思っている。まあほんの些細な、超微々たる程度だが。


 その雀の涙程度の罪悪感を少しでも無くすために、私はこういう活動をしているのかもしれれないな…まあ本当は金を稼ぐために始めただけなのだが…


 実際【見られるだけならタダ】だし、そんなに手間もかからない。タダどころかお金も稼がせてもらっている。


 私は体の生育が早く、早いうちから男共に性的に見られていたので、今更性的に見られることに抵抗感もない。


「これはもはやボランティアといっても過言じゃないよな」


 お金を得ているんだからボランティアじゃないなんて正論は受け付けないものとする。


 え?なんでボランティアといいつつ男を煽るような文章を画像と一緒にいれてるかって? 

 おいおい野暮なこと言うなよ。そんなの決まってるだろ、その理由は………



負け組の男共の反応を見ながら飲むビールが最高に美味しいからだよ!ああ今日もビールがうめえ!



以下男どもの反応(あまりに見るに耐えない下ネタは除外して抜粋)

・助かる。

・いつも思うがハクア様見た目だけじゃなく表情までエロすぎだろ。

・俺もこんな彼女欲しいよぉぉぉぉ!

・なぜ俺の周りにはこんな可愛い女がいないんだ!

・僕はもうハクア様のいない世界で生きていくことはできなさそうです。

・ハクア様毎回毎回文章で男を煽ってくるのくっそムカつく!けど見てしまう。

・医学界でハクア様の写真をみせたら病気が完治したと話題に。

・この世界の救世主。唯一神とさせてください。

・この生意気女わからせてやる!と思いながらいつも敗北してしまう。

・ふーん…えっちじゃん

・おい俺に貢がせろ!金ならあるぞ!

・こんな彼女が欲しかった人生だった。

・ハクア様の写真を見て何もしなかったら勝ちゲーム挑戦。0勝記録更新中。

・エロいだけの女に負けるの気持ちよくなってきたやばい

・性癖狂っただろ責任取れ! 責任とって俺と結婚しろ!

・ふぅ…さて、と。どうやったらこんなに色気がある女性が溢れかえる世の中になるのか研究しますかね。

・おまえらこいつになれちまったら他のおかずでは満足できなくなるぞ!過剰摂取に気をつけろ!

・もはや魅力の暴力







ハンドルネーム:世界で最も可愛い女”ハクア”

【今日は普通のバレーのユニフォーム姿でーす。

これ健全なユニフォーム姿だから、これをいやらしい目で見てたらさすがにやばいよWWW】

(ユニフォーム姿で体のラインをくっきり見せている画像を添付)


 うん、今日もいい写真だ。いつも通り世界一可愛い。


 そんなことを思いながら、私はいつものように画像と煽り文章を投稿した。


 その後、趣味のゲームを楽しもうと電源ボタンを起動し、スナック菓子とコーラを用意。 

 食べるときにはコントローラーが汚れないよう、割り箸で食べるのが私流だ。


 そういえば、今日の写真を撮ったときの衣装であるユニフォームから着替えていなかったな。うっかりうっかり。いつもより動きやすい服だからか、着ていて違和感がなかったせいだ。

 

 でも、もうゲームを起動しているので今からちゃんと着替えるのが億劫だ。


 よし!上からジャージを羽織ろう!もうこれでいいや。いつも家ではジャージ姿だし、インナーくらいユニフォームでもいいだろう。うん。ジャージ姿が家では一番落ち着く。


 ちなみにこのユニフォーム、私が高校のとき、バレーする際に実際に着ていたユニフォームだ。こんな普通の衣装でも、私は色気を出せる。胸はかなりあるし、写真の撮り方もエロく見えるように工夫しているし、表情にもこだわっている。


 私にかかればどんな健全な衣装でも色気を出せるのだ。


 まあ健全と言っても、ユニフォームとかスポーツウェアとかは露出が多くなりがちだし、体のラインが出る服が多いので、色気をだすのなんて他愛もない。 


 前世でも思ってたけど、バレーのユニフォームは絶対に健全ではない。男から見たらただのちょっとだけエロい服だ。


「それにしてもスポーツとか娯楽とかは、性別が変わってとしても安定の面白さだよなぁ」


 私の趣味は球技などの”スポーツ”、ゲームや漫画、小説などの "娯楽"、酒や料理などの "食"が主な趣味だ。うん。ぶっちゃけ趣味だけ聞くと男っぽいよな、わかるわかる。


 私も最初はこの世界の女がやるような趣味、すなわち恋愛や音楽や舞踊、華道、芸術などを全力で楽しみ尽くすつもりだった。最初はね…


 でも、色々やってみた結果、まあなんというか一言でいうと性に合わなかった。なんか、やっていて全然楽しみを見いだせなかったのだ。


 そういう性分だったので、しかたなく世間で一般的に言われている女らしい趣味を全てやめ、自分が楽しいと思うことばかりしていた。


 そういうことを続けた女がどうなっていくのかというと、いつの間にか数少ない同性の輪の中に入れなくなるのだ。女共もこんな常識破りの私をどう扱っていいのかわからなかったのだろう。


 さらに、男っぽい趣味は男ウケが良く、常識破りにモテてしまってヘイトがたまったのも原因だろう。むしろこっちの理由がメインかもしれないが…


 こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。こんな活動しといてなんだけど、私は本来目立つことが好きな性格ではない。


 私の人生設計では普通に生きて普通に楽しく暮らすだけのどこにでもいる女になる予定だったんだけどなぁ…人生ままならないものだ。


「本能のままに生きていただけなのに…後悔こそ全くしてないけどなぜこうなったのか…」


 割り箸でスナック菓子を食べながら、ふと自分の人生を振り返ってみる。


 私が物心ついてTS転生と自覚した赤子の頃、せっかくならと、変わった性別を全力で楽しみつくそうと決意していた。


 別に前世が男だろうと今は女だし、生まれた世界が変わったのだ。郷に入っては郷に従えともいうし、無理なく男と恋愛できるようならまあオッケーくらいの思考の柔軟性はあったと思う。


 男と結ばれる抵抗感を少しでもなくせるよう、なるべく本能のままに生きていこうと決め、実際そうやって生きてきたつもりだ。


 その結果、恋人を一切作らず、男みたいな趣味を満喫し、一人暮らしを楽しんでいるのだが…なんでこうなった?


 ちなみにこの世界の一般的な女の幸せは、たくさんのいい男と結婚すること。これに尽きる。


 私にはよくわからない世界だが、女性だけで集まった場合、うちの夫の財力が凄いとか、顔がいいとか、能力が凄いなどのマウント合戦をしているらしい。


 そんなわけで、一般的な女の幸せは私には叶いそうにない。


 そんな私が他のどの女共よりもモテるなんて皮肉なものだ。

  

 まあそりゃそうだろうと思う。もし私よりいい女がいたとしても、そんな女は大人気だろうから、男共は光に集まる虫のように我先にと集まってしまう。その結果、あっという間に沢山の恋人を作り、男に囲われてその女は人目につくことはなくなるだろう。


 そんなわけだから、世の中に出てくる女はだいたいが売れ残りの地雷女だ。そんな女のほとんどは会話が成立するかすら怪しいレベルなのだ。


 というか私以外にいい女なんて本当に存在するのかすら怪しい。地雷女よりマシな女はいても、魅力的な女なんて都市伝説レベルで見たことがない。


 まあ女は努力しなくても生きていける世界だから、ある程度仕方がないことなのかもしれないな。


 そんな女ばかりだから、男からみたら努力している私なんてキラキラと輝く宝石のように思えただろう。可愛いし、他の女共と違って表情もコロコロ変わるし、能力も高いし、女なのにちゃんと会話が成立するし…こんな優良物件はなかなかない。


 まあ、そんな完璧な私でも、男共から見たらたった一つだけ大きな欠点があるらしい。こんないい女捕まえて欠点があるってほざくなんてほんと贅沢な奴らだ。


 その欠点とは、どれだけ熱烈に口説いたとしても友達止まりで、恋人に発展しないところらしい。


 まあこれに関しては不可抗力だ、わざとやっている訳では無い。単純に、私が惚れる男がいなかっただけのことだ。


 結局人生で1人も恋人を作っていない自分が言うのも何だが、私は私なりに男に歩み寄ったほうだと思うんだけどなぁ。


 私が一人も恋人ができなかったのには大きな理由がある。


 それは、私には男の下心が手に取るようにわかってしまい、それを見た瞬間萎えてしまう性質があるようなのだ。それが理由としては大きい。


 いい男とかもいたんだけど、性欲に支配されている顔とか見るとどうしても萎えてしまうんだよなぁ…


 というか、これだけ本能のままに生きている私をメス堕ちさせられなかった男が悪いんじゃね?もっとうまく男共が性欲を隠せば私も恋愛していたのかもしれないのに!うん、絶対そうだ!ワタシ、ワルクナイ!


「まあ無理して嘘吐きながら生きるのなんて嫌だしね。このままでいいや」


 私らしくのびのびと生きてきた結果こうなっただけだ。反省も後悔もしていない。


 そんなことを一人でつぶやきながら対戦ゲームを楽しむ。このゲームにはかなり熱を入れてプレイしているので、ゲームのランクは最上位に達している。


 一試合が勝利で終わり、もう一試合行こうとする。その間に固まった体をほぐすために少し伸びをしてみた。うーん、きもちいい。 

 

 伸びをして画面から目を離したからか、ふと私の部屋の棚が目に入った。

 

 部屋の棚には数々のトロフィーが棚に所狭しと並んでいた。


 これは学生時代に獲得したものだ。


「学生時代、まじでスポーツで無双したなぁ」


 私は感慨深げに呟く。


 私の学生時代はスポーツしかしていなかったと言っても過言ではない。


 前世では全然運動なんてできなかった。大縄跳びとか心底大嫌いだったし、運動会の日はなんて隕石が落ちてきて地球が終わることを願っていたし、山登りなんてお金をもらったとしてもやりたくないと思っていた。


 そんな私だが、今は運動が大好きだ。理由は単純。


 前世と比べて体の動きがいいことが爽快感があって楽しかった。ただそれだけだ。


 それに加え、私は趣味に全力なタイプだ。これは前世とも共通した考えだ。やるからには本気で一番を目指す。競争になると負けたくない。負けると死ぬほど悔しい。そういう性格だ。


 運動好き、趣味に全力、その2つの性質が合わさった結果、体を鍛えまくる女というこの世界ではかなり型破りな女が誕生した。

 

 私は運動の中では陸上競技や武道、水泳などよりは、球技全般がとくに好きだった。具体的には、バスケ、バレー、野球、サッカー、フットサル、ハンドボール、ドッジボール、タッチラグビー、テニスなどだ。


 女子である私がお願いすればメンバー集めは容易いことだったので、試合をすることは難しくなかった。だから、休み時間や休養日には毎日のように試合をしていた。


 それだけでは飽き足らず、複数の部活にも助っ人として参加させてもらっていた。所属もせず自由に参加するのはどうなんだと問題視されそうになったこともあったが、私が先生方に可愛くお願いすればなんの問題にもならなかった。大体のことは可愛くお願いすればなんとかなるのだ。女のお願いはこの世界では必殺技となる。


 どの競技も甲乙つけ難く楽しいものばかりだったので、すべて楽しみ尽くしたかった。一つの競技に絞って取り組むなんてことはどうにももったいなく感じ、どうしてもそうしようとは思えなかったのだ。どうやら私はことスポーツに関しては欲張りらしい。

 

 もちろん、ただ楽しく遊ぶだけでいいという部類の人間ではない。すべての球技を楽しみながらも、すべて勝つつもりでいた。


 だが、複数の競技に取り組んでいるため、一つ一つの競技を練習する時間が圧倒的に足りない。まあ当たり前のことだ。


 それでも、すべての競技でどうしても勝ちたかった。得意なことで負けるのは身が引き裂かれるくらい悔しいのだ。


 だから、どうすれば全てで勝てるのかを考えた。そして考えついたのが、小手先のテクニックを鍛えるよりも、汎用性のあるフィジカルを鍛えることだと結論を出した。


 フィジカル、つまり学校の体力測定に特化して鍛えることに全力で力を注いだ。


 とくに学生の間くらいの年齢が一番身体能力が上がりやすいというデータがあったので、体ができてきた小学校高学年くらいから本気でトレーニングをした。


 ただがむしゃらに頑張るのではなく、有名なスポーツトレーナーに話を聞きに行ったり、栄養学の本や論文を読んで実行したりと、座学にも力を入れたし、部屋にトレーニングルームを作ったりとお金も惜しまず使った。


 そうして出来上がったハードかつ効率的なトレーニングメニューを毎日欠かさず行った。


 いやあ…あれは若さのなせることだったな…あんなハードなことを子供の頃の私はよく続けられたものだ。


 うん。今同じ量トレーニングしろって言われても絶対に無理だ。


 まあそうした血の滲むような努力の結果、学生時代に無双することに成功した。


 とくに中学時代はまだ体が成長しきっていない男も多く、早くに成長期を終えた私のほうが体が大きいなんてことがよくあった。だから、とくにその時期は男共に勝ちやすかった。 

 いま部屋に飾ってある数々の優勝トロフィーはその頃に取ったものがほとんどだ。私の住む地域はスポーツが盛んではなかったので、私がワガママで無理やり公式戦などに参加させてもらっても、地区大会くらいは優勝できたのだ。


 男は女を守るべき存在と認識しているので、守るべきはずの存在に負けた男共はかなりのショックを受けていた。


 だから私の周りでは男としてのプライドを守るため、私に負けないよう本格的に運動を努力する人が増える。


 それでも、中学生くらいまでは体力テストで総合一位をキープできたのだ。これはかなり凄いことだと思う。私凄い!天才!


 だが、高校生になってからは男も体が成長しきり、男女の肉体の性能差も相まって、体力テストで総合一位を取ることはできなくなっていた。高校一年のときは学年3位、2年は5位、3年は8位にまで落ちた。


 私は誰よりも努力をしていた自覚はあるし、才能もあったと思う。それでもこういう結果になったのは、男共も本気で鍛えたからだろう。


 そのせいか、私の通う学校では中高両方とも部活の実力はそんなに高くなかったのにもかかわらず、私が入学している年はほとんどのクラブが全国大会に出場したのだ。


 ちょっと私一人に影響されすぎじゃないか?とも思うが、いい女にいい格好を見せたい男の気持ちは思っていたよりも強いということだろう。


 まあそんなわけで、私の学生時代はスポーツ中心で生きてきた。だから、高校を卒業後は、私が頑張ってきたスポーツを仕事にしようと思い、今ではスポーツコーチをしている。


 私の強みは沢山の球技に誰よりも全力で取り組んできたと自負しているので、こういうことを仕事にしたのだ。


 複数の球技をガキ共に教えているので、総合球技クラブと名乗っている。


 まあ教えると言っても”楽しく遊ぶことが第一”というコンセプトの、ゆるいクラブだ。うまくなるためというより、最低限のあいさつなどの礼儀と、球技の基本的なルール、楽しく遊ぶためのマナーなどを主に教えている。


 女性がやっているという噂も相まって、今のところ人気で嬉しい限りだ。


 そんなふうにしっかり仕事をしているので、私は本業だけで生きていけるだけの稼ぎがある。


 でももっと稼ぎたい。男に頼らないで生きていくためにはもっと欲しい。この家も誰にも頼らず私のお金だけで買ったので、ローンもまだ残ってるし。


 だから副業を始めたのだ。


 副業の収益は今のところ資産運用のお金にしている。資産運用をしている人なら誰でも知っているような王道の投資しかしていないが、これがまあ思ったより稼げている。


 こんなふうに私がお金を稼ぐことに拘る理由は、私に稼げるときに稼ぎたいという気持ちがあるからだ。


 どちらの収入も私が年老いていけばできなくなるようなことだ。だから、今後の人生のすべてを若いうちに稼ぎきりたいのだ。


 老後には温泉地に住んで、何匹か大きい犬を飼って、美味しいものを食べるような、悠々自適な生活が目標だ。


 え?稼ぐことがメインなら画像と一緒に男を煽る文章なんて必要なくないかって?おいおい野暮なこと聞くなよ。そんなの理由なんて決まってるだろ。それは…



高校時代に肉体の性能差で私に身体能力で勝ちやがった男どもはやっぱりムカつくからだよ



以下男どもの反応(あまりに見るに耐えない下ネタは除外して抜粋)

・今日もハクア様に負けた。興奮してはいけないシリーズ全敗。

・勝てるわけないんだよなぁ 

・女がペン持ってるだけで興奮してしまうワイ、刺激が強すぎる

・”腰”って漢字に女が入っているってだけで興奮してしまうレベルのワイも無事敗北

・女がそこに存在してるだけで興奮する 

・女なら幼女だろうがおばあさんだろうがなんでもいいとはいえハクア様色気ありすぎ。

・これはいけません!これはいけません!

・ユニフォーム…これはいいものだ

・この画像モテなさすぎてこじらせた俺が見ている悲しい幻覚じゃないよね!?

・ふーん…えっちじゃん

・2次元より可愛いのバグじゃん

・もはや同じ世界に生きてるってだけで興奮する

・このシチュエーション。リアリティがまったくないので、私としては厳しい評価

をつけざるを得ないですね。うーん…控えめに点数つけたとして…100億点かな

・悲報。俺。流石にやばかった。

・この写真のためだけに毎日生きてる







ハンドルネーム:世界で最も可愛い女”ハクア”

【御主人様。私に見とれてアホ面をを晒すのやめてもらえませんか。気持ち悪いです。】

(蔑んだ目をしながら、胸元が緩めなミニスカメイド服を着ている画像を添付)


 仕事から家に帰ってきた私は、いつものように画像をあげる。


 世の男共はこういうコスプレ服が好きなのか、こういう服を着た日はいつもよりインプレッションが稼げる。ナース服やスーツなども同様にやたらと食い付きがいい。


 おそらくその理由は衣装が素敵なのだけではなく、物珍しいというのもある。この世界の女は働かなくても生きていけるので、仕事着を着ている女を見る機会なんて早々無い。


 よって、二次元の女くらいでしか見られない憧れの衣装なのだ。


 では、普段のこの世界の女はいったいどういう服を着ているかというと、1割が普通の地味目な服で、残りの9割はド派手なドレスのような服を着るかの2極化している。


 あまり目立たず、男を怖がっているような女達は地味な服。プライドが高く、付き合っている男の数や質をステータスにしているような女は目立つために派手な服を着ていることが多い。


「もっといろんな可愛いくてまともな女が世にでてくればうれしいなぁ…」


 そうつぶやきながら私は帰宅途中に買ってきたちょっと良いお肉をフライパンで焼いていく。


 なんとなく今日は肉とご飯をガッツリ食べたい気分だったのだ。無性に肉が食べたい。そういう日って何故かあるよね。


 肉が焼けるのを待ちながら、どうすれば世の中にもっと可愛い女が表に出てくるかを少し考えてみる。


 べつにこの世界の女共も素材が悪い訳ではないのだ。おそらく磨けば可愛くなる。


 だが、地味目な女の子は前髪で顔を隠したり、常に下を向いていたりなど、コソコソ隠れた過ごしているので覇気を感じないし、逆に派手な女共は過剰に宝石などのアクセサリーや香水をつけたりなどと、あまりにやりすぎているので、なかなか可愛い女を見ないのだ。


 どんな女でも男は肯定してくれるので、仕方がないのかもしれない。


 せめて派手な女共があまりにTPOに合わない格好をしていたら注意くらいしてあげて欲しいとは思う。おそらく注意され慣れていないので、口うるさく言うと嫌われる可能性が高いが、それでも言ってあげるのが優しさってやつじゃないだろうか。


 派手な女共は思っている倍くらい厄介なので、関わりたくないから私は絶対にやらないけどね。


 逆に、地味な女には少しは期待してもいいかもしれない。なんせ性格も派手な女どもと比べるとまともでいい子が多いし。


 性格はまともなのだが、まともが故に男の視線を怖がり、家に引きこもっているから世に出てくることには期待できないのだが…


 私としてはもうちょっと頑張って外に出てきて欲しい。


 でも、地味な子がしかたなくやっている安全な場所で引きこもるということは、この世界の女が生きるうえでの正解の一つだとも思っている。


 他の国と比べると圧倒的に治安が良いとはいえ、飢えた男や変な男はどこにでもいるだろうから、私のように女一人で外を歩くなんて馬鹿なことをしたら危険な目にあう可能性が高い。


 私は運動もできるし、防犯対策もバッチリしているし、犯罪者には徹底的に容赦しないことも有名だし、住む街に顔見知りがたくさんいるのでいざとなれば守ってもらえる。


 これだけ対策していても、私は何度か変質者にあったことがある。もちろん全て警察に捕まえてもらったが、それだけ女性ひとりというのはあぶないのだ。どれだけ対策していても、この世界では完全に安全というわけにはいかない。


 そんなだから、家に引きこもるというのは一番リスクの少ない行動なのだ。


 「私だったら引きこもる生活をずっと続けることなんて退屈すぎて耐えられないだろうなぁ」


 男に守られながら引きこもっていたら、今私がエンジョイしていることなんてほとんどできなくなる。私はお一人様生活をエンジョイしているが、男は決して女を一人にさせるなんてことはしない。


 そんなことを思いつつ、冷蔵庫から適当な生野菜を取り出し、軽く洗って皿に盛る。


 そろそろ肉の焼け具合もいい感じだ。


 私は肉を焼いているフライパンにさっと焼肉のタレをかける。


 私は小皿に焼き肉のタレをいれて、焼けた肉をその都度つけて食べるタイプではない。何故なら小皿を洗うのが面倒だから。食べた後片付けのことを考えると、使う皿はすくなければ少ないほうがいい。


 サラダの上に焼いた肉をいれる。米も仕事前にタイマーで炊くようにしていたのでちょうど炊きたてだ。


 よし、今日の夕食の出来上がり!ああ…焼き肉の香ばしい匂いが食欲を刺激する。

 

 いただきます!


 私は肉を御飯の上にワンバウンドさせて肉と米を一緒に食べる。馬鹿みたいにうまいな。米にワンバウンドするのはあまり行儀の良い食べ方ではないらしいが、この食べ方がどう考えても一番うまい。


 箸休めにサラダを食べ、また肉と米を食べる。無我夢中でそれを繰り返す。


 ごちそうさまでした!


 そのように食事を楽しんでいると、あっという間に食べ終えてしまった。


 ついついガツガツかきこんで食べてしまったが、いい肉なのでもう少し味わって食べればよかった。おいしいものほど勢いよく食べてしまうクセやめたいなあ。どうも本能のままに食べてしまう。まあ食べ終わった後にそう思っても後の祭りか。


 食べてしまうと片付けが面倒だ。こういうときは他の女が羨ましいと思う。男が全部雑用をやってくれるだろうし。

 

 ササッと洗い物を終わらせて、満腹になった腹を擦りながらソファーでくつろぐ。満腹の後、一人でダラダラする時間も割と好きなんだよね。


 こういう幸せを世の中の女は知らないんだろうな。うーん。ひとり暮らし最高!


 私が女としては異端だからこういう自立した生活に幸せを感じるのだろうか。


 いや、おそらく他の引きこもっている地味な女の子も私のようにできないだけで、心のなかでは私のことを羨ましいと思っていると思う。地味な女の子から、私に憧れているとネットで密かに応援されたりすることがそこそこあるのだ。


 そういう子は勇気を出して外にでてみて欲しいな。もちろん私のように一人で街を歩くなんてことは絶対にしないでほしいが。


  地味な子に勇気をだしてもらうために、「実は私も昔はとっても地味でしたが、今ではこんなに垢抜けて可愛くなりました!」なんて嘘をついて私に憧れてもらうのはどうだろうか。


 いやだめだな。だって私は最初から可愛かったし。一瞬でも可愛くなかったというなんて私のプライドが許さない。


 まあ最初から可愛かったと言いつつ、身だしなみにはそこそこ気をつけているのだが。


 特に髪には気をつけていて、私は肩の下くらいまである長い髪を暗めの茶髪に染めているので、髪の痛みが目に見えてわかりやすく、ケアを怠るとパサパサになってしまう。


 だから、ちょっといいトリートメントを使ったり、ヘアオイルやヘアスプレーで艶出ししたりなどしながら丁寧にケアしている。


 そのおかげか、潤いのある輝くような茶髪をなびかせながら歩くことができている。髪は私の一番の自慢なので、意味もなく手で髪をファサッとかきあげたりしてしまう。


「前世では美容に疎かった割に、よくこんなに頑張ったなよなぁ…私偉すぎ!」


 やっぱせっかく女に生まれたのだから可愛くありたいじゃん? 


 そういう考えがあったので、もともと可愛かったが、より可愛くなるために色々頑張ったのだ。


 前世が男だったのでメイクや美容に疎かったが、この世界の美容好きの男子に根掘り葉掘り聞いたり、学生時代にいろんな髪型やメイクを試して男共の反応を伺ってみたりして、自分なりに全力で気を使っていた。


 茶髪に染めた理由も、カラーコーディネーターに私に一番似合う髪の色が暗めの茶髪だとに教わったからだ。


 何故か男共は黒髪こそ至高だと思っている節があるが、だいたいそういう男は私の茶髪姿を見て自分の考えが浅かったことを痛感することになる。


 そういうふうに色々試行錯誤をしたので、今ではどんな格好が似合うか、どのメーカーの化粧品や美容グッズが自分に合うのかというのを理解している。


 こういう試行錯誤が私の可愛さを作っているのだ。元々の顔の良さも相まって今では世界一可愛いと自負している。


 ネットでの活動名を”世界で一番可愛い女”にしているのも私の美への自信の現れだ。


 まあ、実はそれ以外にもこの名前にしている理由がある。しょうもない理由なんだけどね。

 

 そのしょうもない理由というのは、この世界の女共に喧嘩を売っている、というものだ。


 なぜそんなことをしているかというと、まあ一言でいうとこの世界のほとんどの女共が気に食わないからだ。


 この世界の女は大切に大切に育てられているので、沢山の過剰な愛情を受けて育つ。どんな女の子でも親や兄弟、周りの男からお前は世界一可愛いんだと何度も褒めそやされる。


 だから、自分が世界で一番可愛いんだと人に言われるがまま認識してしまう。


 まあそんなことは前世の純粋な子供などでもよくあるようなことだ。一見問題ないように思える。


 だが、それが問題ないのは前世だからだ。この世界では少し違う。


 前世なら大人になるにつれ勘違いだったと自然に気づく事ができる。テレビや雑誌、なんなら街に出るだけで、周りに比較対象がいくらでもいるからだ。


 また、たとえ勘違いしたまま成長したとしても、そういう人は嫌われる可能性が高いので、ずっと勘違いしたままで生きていくのは難しい。


 だが、この世界では女性が貴重なのだ。


 女というのは男にとってどうにかして好かれたいと思う対象なので、嫌われることなんてそうそうない。


 さらに、女は少ないので比較対象がそもそもいないなんてこともよくあることだ。


 もし比較対象がいたとしても、この世界の女はまともな人ほど表に出てこない。なので、もし比較する対象がいたとしても、はたから見たらどんぐりの背比べでしかないのだ。


 そういう事情があり、この世界の女共は世界で一番可愛いのは自分だと認識しやすく、その考えが勘違いだと気づきにくい環境にある。


 だから、この世界の女性はなんの努力をしなくとも自分が世界で一番可愛いと認識してしまいがちなのだ。


 そして、その考えを改めることなく成長した結果、どんな格好をしても世界一可愛い私なら何でも似合うと思い込み、ファッションやメイクの試行錯誤をしない。


 そういう試行錯誤は自分のセンスを磨くためには必要なことだ。決してこれをおろそかにしてはいけない。


 また、そういう女は人の話も聞かないのでたちが悪い。だから、この世界の女はセンスの悪い服装をしがちなのだ。


 センスの磨かれていない女が世の中に出て、他の女といい男の取り合いの競争なんてするとまあ大変なことになる。


 他の女との個性の差を出すために自分の磨かれていないセンスを信じ切り、斜め上の方向に全力疾走してしまうのだ。


 そうして競争しているうちに何故かファッションで財力を示すことに行き着き、派手な宝石やアクセサリーを大量に見に付けたような女があふれるというのがよくある一般的なこの世界の女だ。


 もちろん、そのお金は男が貢いだ金だ。この世界の男も内心溜まったものじゃないだろうね。


 まあ今までの話は、本当に可愛い人には当てはまらないんだけどね。そう、私のように。


 そんな元々可愛い私が努力してもっと可愛くなっているのだから、この世界の女が私に可愛さで勝てるわけがないのだ。


 だから私は”優しさ”で私の可愛さの暴力を女共にくらわせ、初めての挫折を経験させてあげているのだ。うん。私って超優しいな。


 まあでも実際、ずっと世界一可愛い女で居続けるのは難しいだろう。老いというものがあるからね。 おばあさんになってこの活動をすることなんてまあ無理だろう。


 だけど、10年間くらいは世界で一番かわいく居続けていたいと思っている。簡単に言ってみたけどこれって結構大変なことかもしれないな。


「私の欲を叶えるために、10年くらい頑張ってみるかな」


 ソファーの上でスマホを弄りながらそう呟く。


 私の理想を話そう。今から言うのはあくまでこうなればいいという理想だ。


 まず10年くらい一番かわいく居続けて、稼げるところまで稼ぎ尽くす。


 そしたら、私の真似をして私に対抗しようとしてくる子が沢山現れる。


 その中で一人くらい若くて本当に可愛い子がでてくる。私が可愛さで負けたと思ったらこの活動を引退し、なにか別の活動をする。


 この流れが叶うのが今思いつく一番の理想だ。


 その理想を叶えるためにやることは一つ。今まで通り毎日写真をあげ、プライドの高い女には敗北感をあたえ、若くて純粋な女の子には可愛い私に憧れてもらう。


 憧れてもらうために、生き生きとした写真を上げ続ける。恋愛も結婚もしなくてもキラキラと幸せに輝き続けるところを見せつけてやるのだ。


 そうしたら自然と私のような活動をする女が増えていくだろう。


 ちなみにだが、軽い気持ちで私の活動の真似をするのは少し危険だ。


 私はしょっちゅう運動をしている副次効果でメンタルが安定しているので大丈夫だが、メンタルが強靭な人以外がこの活動をすると必要以上に身を削ってしまう可能性が高い。


 この活動で大事なのは、どれだけ男共にもっと過激な格好になってと頼まれても、一切気持ちを揺らすことなく必要以上に脱がないということなのだ。


 これが簡単なようで意外と難しい。


 なぜなら、男が女を脱がそうとする熱意は相当なものだからだ。本当にありとあらゆる手で脱がせようとしてくる。男の「さきっちょだけだから!」は決して信用してはいけないのだ。


 普通の女なら、なんどもお願いされれば、しつこさと場の空気と熱意に押されて軽い要求を飲んでしまう。一度でも要求を通してしまうと、要求を聞くことに少しずつ抵抗がなくなっていき、いつの間にか過激な要求も聞いてしまうことになる。あとは堕ちるところまで堕ちるまでだ。


 写真をあげるだけの簡単な活動だけど、私くらい成功するには揺れないメンタルが必須だ。


 私の裸は誰にも見せるつもりはない。こんないいもの、そこらの男共にタダでみせるのなんてあまりにもったいないしね。


 だから、私は写真で服を着たまま色気を振りまいているだけなのだ。直接的なエロでは勝負はしない。

 

 ということは…


 おい私のことが嫌いな女ども!チャンスだぞ!いま脱げば男の視線を独り占めできて私をオワコンにできるかもしれないぞ!


 まあいくら脱ごうが私のほうが圧倒的に可愛いから人気では負ける気はしないし、最悪そうなってもいいのだが。


 え?なんでそうなってもいいのかって?おいおい野暮なこと聞くなよ。そんなの決まってるだろ。それは…



 実は私も男と同じように女のあられもない姿がみてぇんだよ!言わせんなこんなこと!



以下男どもの反応(あまりに見るに耐えない下ネタは除外して抜粋)

・メイド…だと…(膝から崩れ落ちる)

・ほう…そういうのもあるのか…

・可愛い!エロい!好き!

・こんな可愛いメイドに世話されてぇ~

・もちろん夜の世話もしてくれるよなぁ!

・二次でしかみないシチュエーション!ふおおおおお!

・おっぱい!おっぱい!

・そんなことより俺と結婚してくれ!

・メイド服はロマン。

・あ~脳が破壊されれぅ~

・ふーん…えっちじゃん

・ドン引きされながら夜のお世話されたい

・いくら払えばこんなメイドを雇えますか?

・こんなかんじのメイド沢山いる世界に異世界転生したい!トラックに轢かれればワンチャンあるかな?

・なんでこんな可愛い女が存在しているのに、俺の周りにはむさ苦しい男しかいねぇんだ!!!







ハンドルネーム:世界で最も可愛い女”ハクア”

【知ってる?人って10秒目が合うだけで恋におちるらしいよ?まさかとは思うけど画像を見ただけで私のこと好きになんてならないよね?】

(黒のミニドレスを着て、足を組んで椅子に座り見下した表情をしている画像を添付)


 今日は私がこの活動をしてちょうど一周年の日だ。だからといって私はいつもと変わらず普段通りに画像をあげているのだが…


 というか、1周年ってことに全く気が付いていなかった。コメントで教えてもらって初めて気づいたわ。みんな私よりマメだねぇ。というか私がズボラなだけか。


 今日が1周年ということは、なんだかんだ365枚の写真をネットにあげたということだ。


 私は一枚たりとも同じ写真をネットにあげていないので、365種類のいろんなタイプの私を見られたということになる。男共は大満足だろう。


 そんなことを思いながら私は今日あげた画像への感想のコメントをざっくり確認する。


「うーん。みんな恋愛大好きなんだなぁ…お盛んなこって…」


 今日の煽り文に返事するように、私のことを愛してしまったとか、俺の女になれだとか、私を恋人に望む声が沢山くる。半数以上は私を褒めるためにネタの範囲で言っていると思うが、中にはガチでそうなりたいと思っていっている男共もいる。というかガチで言っている男共のほうが多そうだ。


 おい男共!もし本気で私と付き合いたいならもっと頑張って性欲を隠すようにしろよ!


 私は性欲に支配されている顔を見ると萎えるタイプなのだ。もっと死ぬ気で性欲を隠せ!どの男も流石に顔に出過ぎだぞ。


 なんだかんだ数々の男共から色々な方法で熱烈に口説かれてきたが、結局私はメス堕ちしなかったなあ。 


 だから、これからもなにか変なことがないかぎり私は一生独り身だろう。

  

 だから、もし本気で私に恋している男共がいれば、ずっと片思いすることになるだろうな。そういう男には申し訳ないと……思わないな。うん。別になんとも思わねぇや。


 なんなら、一生私に恋い焦がれたまま、手の出せない高嶺の花として君臨してやりたいな。私は恋愛しなくても楽しく生きているタイプだ。この世界の恋愛至上主義の女どもよりも人生楽しんでいるだろう。やっぱ恋愛なんて無理やりするものじゃないね。


「それにしても一周年か…時が経つのは早いな」


 この活動を始めて1周年立つが、おそらく私の影響で世の中が少し変わったんだと思うことが少しだけある。


 例えば、男のギラつきが気持ち程度低くなった気がする。まあこれは気持ち程度だが。

 

 あとは、女が世に出てくるハードルが少しだけ下がった気がする。


 それによって、私に対抗してきた女なども何人かでてきた。ただし、そういう女共は自分のことが世界一可愛いと勘違いしているタイプの残念な女どもなどで、なんの策も練らず真っ向から画像をあげて私に対抗してきただけだ。


 当然なんの工夫もしていないので私ほど人気は出ずに、敗北感からか画像を消してネットの世界から撤退していった。


 なんで体重120キロオーバーの女や、ごってごてにセンスなく着飾った女などが一瞬でも私に勝てると思ったのか…心底理解できない。

  

 まあそういう女は失敗した例だが、私に憧れて世に出てきて成功した女もいる。しかも二人もだ。1年で二人は少なく見えるかもしれないが、私はこの世界で二人も出てきたら上出来だと思う。


 一人は品の良いおばあさん。私の生き方に刺激を受け、自分もなにかしようと思い立ち、本を書いた。その本は、おばあさんの今までの波乱万丈な人生を自叙伝として描いている。


 上流階級での女性の等身大な暮らし方や、ある外国人男性との大恋愛、大物有名人とのあれこれなど、内容がドラマチックで面白いと話題となり大ヒット。


 その後、お喋りも達者であることが判明し、今は作家からタレントとなりテレビなどで活躍している。


 もう一人は小学4年生の女の子。この子はロックシンガーの卵として自作のオリジナルソングを歌いながらギターをひいた動画をネットで公開し、その姿が有名になった。


 まだ未熟で荒削りな部分もあるが、女の子が全力で歌う姿に感動した人も多い。


 ちなみにこの女の子は私の本業である総合スポーツクラブの教え子でもある。このクラブに参加している唯一の女の子だ。


 その子は、私みたいにキラキラしながら生きていきたいとのことで、周りの反対を本人の熱烈なお願いで押し切り、私のもとにやってきたのだ。


 珍しくこの世界の女なのに素直でいい子だなと思い、私は凄く可愛がっている。


 その子も私に憧れている様子なので、よく私に人生相談などをしに来ていた。


 しょっちゅう私はかっこいい女になりたいと言っているような子で、どうすればかっこよくなれるかをずっと考えて暮らしているようだった。


 私の中のかっこいい女っていうのは、失敗しようが挑戦することを諦めない人というのが一番かっこいいと思っている。そういうようなことをその子に言った覚えはあるが、まさかいきなりロックシンガーとしてデビューするとは……なかなかかっこいいじゃん。


 この二人が今話題の人だ。


 それにしてもまさか本当にまともな女が世に出てくるとはおもわなかった。そうなれば嬉しいと思っていただけで本当にそうなるとは全く思ってはいなかった。


 世の中を私の力で変えてやる!みたいな気概は私には全くない。ただ自分が楽しく生きるためのことをやっていただけだ。


 ちょっと1年こういう活動をするだけでこんなことになるなら、実は隠れているだけで、まともな女はいるところにはいるのかもしれない。


 いやぁ〜これなら私がオワコンになる日も近いかもしれないな〜。実際には私はまだまだ二人より圧倒的に有名だけど、うかうかしてられないかも。


 でもまあどんなに女が出てこようとも、まだまだ心配しなくてもいいか。


 え?私より他の二人の女のほうが生きてきた経験値や、将来性があって凄いんじゃないかって?おいおい。そんなこと聞くなんてさてはお前女だな?そんな野暮なこと聞くなよ。


 何度も言ってきたことだが、もう一度しっかり言葉にして結論を言ってあげよう。それは……



 「結局私が世界で一番可愛くて最強なんだよね!」



 終わり!


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