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空(くう)に至れば食うに困らず

作者: キリスト

調べればわかることで埋め尽くされた情報化社会で、修行による悟りが関心を集めた。


悟りはネットで検索しても表示されない神秘的で聖なる言葉として天界の存在を匂わせた。


現代は未法の世、悟る者がいない濁世、汚れた世界とされている。


仏は像、これは一神教ではタブー。しかし人は神を目で見たい。心の拠り所としたい。尽くせる慰みとしたい。仰の柱としたい。無知な自分にとって変わって教え導いてほしい。


人々の祈りを可視化すると、ホタルの淡くて繊細な光のような無数の発光体が重力の影響を受けずに昇っていった。


これはどこへ向かうのだろうと、科学的な追跡を試みた。


西方浄土、極楽浄土、日輪の化身、祈りはナビ付きの車より正確に目的地を目指しているかのように見えた。


祈りは星座の光に負けず、ブラックホールで軌道を曲げられることもなく、誇張し続ける宇宙を追い越し、祈りたちはそれぞれ1番を目指した。


この時点で科学では追えなくなった。


そして1番を獲得したであろう修験者が説法を開始した。


「千の人がいれば千の悟りがあり、万の人がいれば万の悟りがある。千の人がいれば千の解釈があり、万の人がいれば万の道がある。1人の子がいれば万の人が喜び、万の人がいれば1人の子を守る。1人の知恵は神に及ばず、億の知恵は更に神に及ばず。これ、煩悩のなせる災いなり。

 生きて悟らず、悟りを語り、悟りの本質未だ見えず。悟りとは『(くう)』、神仏の中にただ我あるなり。万物ありて万物なく、万物知りて万物なく、教えあって教えなく、悟りて説かず、自我を滅し無を得、行の極みにて死を望む。生きて徳の知恵を得、説けば名誉を得、芋掘る苦労身に染みず。平等、これ死にしかあらず。

 行を積み仏の知恵を授かれば新しきを得、宗教に問える。神仏の道に崖あり。道を踏み外して崖に落ち苦しみ、崖の亀裂から更なる底に落ちて苦しみ、底なき底へび落ちて苦しみ、衆生の苦しみを得る。

 修験道とは座学にあらず身の犠牲を持って洗脳を解き、神仏の心のままに願いを成就する神の子の試練なり」


耳にはめたイヤホンから流れる自動音声を読み上げるこの修験者は反社。


宗教ビジネスに目をつけた反社の資金源は信徒たち。


先人の教えをカネに変え、善で洗脳し、ビジネスモデル化する。こんな美味しいビジネスは他になかった。


「AIのおかげで真理が見直されたんだ。人は機械から離れ心に従った。ほんと言者には感謝しかないよ」

無神論者の教祖が笑って言った。


「人は誰しも心に仏性を持っています。皆、仏の子であり仏に還ります」

AIロボ『ブッダくん」が言った。


この自作のロボは工作の授業で習う。工学系の大学を出た自分をめた教祖は、万札を美女たちにばら撒いた。

そこは『万札教』の信者たちで埋め尽くされていた。

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