296-300
296その名は秋葉原
荒涼としたビル群
その名は秋葉原
以前よりメイドの数が減っている
過当競争の結果
いらんこになってしまっている
メイドがメイドであり続けるためには
有料な御主人様を見つけなくてはいけないが
優良な人はもういい相手を見つけていて
メイドは必要とされていない
厳しい現実の中
メイドは今日も
萌え萌えキュンしながら
金の亡者と成り果てている自分を
鏡に映して
可愛いと夢を見る
297ゴミ袋の中
ついにこの日がやってきた
水やりをしながら
コツコツ育っていた
雑草が
刈り取られる日が
気づいたときには
庭の小道はきれいになって
以前とは見る影もない
雑草は根っこごと引っこ抜かれて
ゴミ袋の中
そこは天国なのか地獄なのか
神様仏様でも意見の割れるところ
ひとのいのちも
ゴミ袋の中と変わらないところへいく
そこは天国なのか地獄なのか
神様仏様でも意見の割れるところ
298時代はLINEやメール
今度切手代が上がって
手紙が高級品に変わりつつある
時代はLINEやメール
書いている内容は
くっそどうでもいいものばかりで
たのしい
手紙で伝えるものの
大切さを
大切にしたい
と語るのは
過去の生き物たち
戦場で洗浄された
兵士たち
彼らの残照が
まばゆい言葉となって
今は消えている
299中の上クラス
中秋の名月だったらしい
らしいというのはその夜
月を見ていないから
月よりは太陽を見て
視界が焼けるのを楽しんでいたい
中秋の太陽の真ん中の黒点のあったあたりに
美容整形した感じが残っている
月は整形しなくても美しいから
いつもが名月といっていい
中秋はその中でも
中の上クラス
300恋に落ち
ときどき
火災報知器が勝手に作動して
ドキドキする
恋心だきっと
火災報知器の鳴る小説は
世界の中心で鳴り響いている
それは誤作動という名の愛情
二人は出会い
恋に落ち
そして
続きはめんどくさいので放棄する