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【みじめ】スキルで異世界生存中  作者: 岩流佐令
第二章 獣人奴隷解放
65/80

60匹目 ハジメ、ダンジョン無双中⑥

ハジメ①

「クッソ。めちゃくちゃモンスター多いじゃねえか。どうなってんだ、このダンジョンは?」


 ダンジョンの中、叫ぶハジメ。満を持して、主人公の登場である。三日振りだ。待たせましたね。


「ベルと会って、一週間。まさかこんなに行方不明になる人だとは、思わなかったぜ」


 きっちりモノローグを語るところは、さすが主人公と言ったところか。


 そう。彼の発言した通り、今日で異世界九日目。二日目の夜に会ったベルとは、今日で一週間になる。正確に言うと、半日ほど前、ハジメが疲れてぐっすり寝ていた夜。


 ちなみに彼は夜に異世界転移したため、一日の始まりは夜計算でいく。と、半日前は九日目の夜、今現在は九日目の夕方、というわけだ。もうほぼ十日目の夜に差し掛かっているが。


 この一週間。ベル二回、ハジメ一回、連れ去られている。今回のが連れ去られた計算で合っているのかわからないが、さっきのクマ女のクレイジーな様子から見て、たぶんそれで合っているだろう。


 この場所は異様だ。少なくとも、普通の自宅とか施設とかではない。


「いや、最初に会った時捕まってたのも合わせると、三回か。全く、どこぞのお姫様じゃねえんだから。そう何回も囚われてんじゃねえよ──うおっと!」


 ハジメは避ける。モンスターのアタック。


 彼の進んだダンジョン、その下層。見たことない強そうなモンスターが、うじゃうじゃと湧いていた。


 が、進まねばならない。そう、ザクロから託された。し、自分もベルを救いたい一心だった。


「クソッ。マジ、モンスター多すぎな。なんだってんだ、このダンジョン。ベルはどんなところに連行されたんだ?」


 このダンジョンが超高難易度ダンジョンであることは、前回&前々回のベル①、ザクロ①でも紹介した通りだ。


 ちなみに、無双中②の鉱物魔(マージナル・)素反(ミネラル・)照反応(リフレクション)とかでも、その伏線は張られていた。濃密な魔素云々の下りである。


 が、ハジメはそんな事実を知らない。ただただ、その襲い来る大量&激強モンスターに辟易するばかりであった。


「グルルルワアアアアアア!」


「うおっ」


 角の生えたサイケデリックなピンク色の狼がハジメに噛みつく。が、華麗に無様に躱すハジメ。彼はザクロからもらった雷術によって、動体視力が向上している。から、避けるのは割と難なくできる感じだ。もちろん、不意討ちでなければ、だが。


 と、ハジメは例の能力を使ってみる。スキル【みじめ】発動。その、レベル鑑定能力だ。


 スキル【みじめ】には、二種類ある。常時発動の『レベル逆転』能力と、任意発動の『レベル鑑定』能力だ。前者は無意識に身体で作動しているから問題ない。が、後者は自分で発動させるから、割と気力がいる。


 ハジメの虹彩が紫色に光る。レベル可視を使うと、こうなるらしい。


『レベル42』

『レベル58』

『レベル38』

『レベル67』

『レベル75』


 とりあえず五匹ほど()れた。一秒間連続で発動できた感じ。と、かなり魔力を使った気がする。とてつもない疲労感。


「やっぱこれ結構、魔力使うな。疲れた……うげっ」


 とかなんとか言ってる間に、ちっちゃいドラゴンみたいなモンスターが襲いかかる。まともに喰らうハジメ。めちゃくちゃ痛い。


 今、ハジメのレベルは65だ。だから、例えば今視た五匹のモンスターのうち、二匹は普通に勝てる。75と67のやつだ。まあ、67の方は割とギリギリだけど。


 で、問題はあと三匹の方。これは中々に手強い。これら中途半端に強いやつらは、ハジメが一番手こずるタイプの相手だ。


 弱いモンスターなら、逃げればいい。最初から相手にしない。それほどスピードも速くない。

 が、中途半端に強いやつ。レベル40から50くらい。クラスでいうと、D級C級。これは、逃げるというのも困難だ。スピードのあるモンスターが多い。


「クソ。この数は異常だな。雑魚はおねんねしてりゃいいのに」


 D級やC級を雑魚と言い切ってしまうハジメも、この世界から見たら異常でしかないのだが。


 ちなみに整理しておくと、


 ・レベル30〜49 D級

 ・レベル50〜79 C級

 ・レベル80〜99 B級


 ──である。


「はあ。たぶん、もっと下層に行れけば出現するモンスターも強くなるから、楽になるんだろうけどな。つか何階層まで行ったっけ、おれ?」


 彼は現在三十階層くらいにいる。なにげに、ここまで単身来た。と言っても、モンスターは全く倒しておらず、逃げる足でそのまま駆け抜けた感じだが。


 と、そんな地道な作業を続けるハジメ。へと、襲い来るモンスター。


 ハジメは孤独だった。ベルとザクロはなんだかんだ対人とわんちゃらやってるのに、彼だけモンスター(激強)と、きゃっきゃうふふである。なんとも哀しき運命(さだめ)。男はつらいんですよ。頑張っていますよ。


 ハジメはそのモンスターの攻撃を、避けきれなかった。軍勢でわんわん来たから、二匹ほど視界から取り逃がしたのである。


 咄嗟に、腕を伸ばす。これはあんまりやりたくなかったことだけど、やはり、もうしょうがない。きっちり倒す、その生命を終わらせざるを得なかった。


 ビリビリッ。


 ハジメの雷術が炸裂。狼が死んだ。ハジメの経験値が稼がれてしまった。


「……うん? 死んでない?」


 と思ったら、その狼は死んでいなかった。気絶しているだけだ。泡吹いて、ピクピクと痙攣している。


「あ、そうか」


 ここでポンと手を叩き、閃いたハジメ。


「そうか。気絶させればいいんだ。電気ショックで」


 と、にわかに両手に電流を纏い、モンスターにアタックし始めたハジメ。込める魔力はそこそこ強めでいい。で、脚にも雷術を纏わせ、全力で走り出す。


 モンスターを薙ぎ倒していくハジメ。それも、全部気絶させている。倒してしまうと、例によって自分の経験値が入ってしまうから。つまり、こういうことだ。


・今この階層には、自分と同レベルか、それより上下くらいのモンスターしかいない。


・だから、ある程度本気を出しても、そんなすぐ死なせるわけじゃない。


・よって、スタンガン攻撃。そこそこ全力で、モンスターにビリビリで気絶させる。


 この作戦はとても上手くいった。むしろ、今まで気づかなかったのがおかしかったくらいだ。ザクロもよく使ってた手だったのに。


 ハジメは叫ぶ。ダンジョン内に響く声で。ハジメ、ダンジョン無双中。異世界来て初めて、スカッとするバトルシーンである。


「雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶、雑魚は気絶ゥゥゥ!」


 無双状態のハジメ。彼の疾走を止められる者はいない。そのまま一分で五十階層くらい、マッハで突き進んだ。途中でめちゃくちゃ迷って、道を行ったり来たりしたが。


「レベル鑑定!」


『レベル65』

『レベル60』

『レベル79』

『レベル63』

『レベル84』


 ついにB級モンスターまで出てきた。この世界の災害級、エンダムの冒険者が百人集まっても勝てなかった相手だ。


 ついでに言うと今のレベル84は、ヤギ娘・ドリーの過去編で、戦争孤児&獣人村の若い屈強な男どもが、二十人ほど死んだという例の《暴風黒馬(ストーム・ホース)》であったりする。


 それを難なく気絶させていくハジメ。本当に、今の彼を止められる者は、このダンジョン、否、世界中探してもいない。


 ──と、思ったのだが。


「……? ぐ、ああああああああああ!?」


 突如として、ハジメは謎の疼痛に襲われた。めちゃくちゃ痛い。みぞおちの辺りに、ものすごい激痛が奔っている。


「い、いたい……痛い。何なんだ……?」


(ハジメ……!)


「!? ザクロ!?」


 バッと振り向く。彼女の声が、聞こえた。


 が、ダンジョンにはハジメしかいない。それと、ノックアウトしてバタンキューでおねんね気絶状態の激強モンスターだけだ。


「あれ……痛みが収まった……、!?」


 と、今度は恐ろしい喪失感に襲われる。心臓が無くなってしまったような。胸に、ぽっかり穴が空いてしまったような。いや、そんなもんじゃない。


「なんだ……? 胸が、苦しい……!」


 ハジメは蹲って胸を抑える。と、懐に入っていた金属板が落ちた。ギルドカードだ。



 氏名 ハジメ

 スキル【みじめ】

 術《雷術Ⅲ》

 レベル65



「な!?」


 それを見て、驚愕する。ある項目が無いことに気がついたからだ。


「『従魔』が無い……」


 そう。ちょうど今、一階層でザクロが死んだ。だから、従魔表記も消えたのだ。


 あんなに大変だった、従魔騒動。変態趣味で、異常性癖とまで言われた従魔契約。冒険者たちが、ジークもサージュも皆して帰ったほどの、強烈な項目。


 それが今、無い。消えている。


「ザクロ……ザクロ!?」


 ハジメはとてつもない喪失感に襲われている。嫌な予感がした。ザクロが死んだんじゃないか。なぜか、そんな考えが脳内を駆け巡る。


 解説しておくと、ハジメとザクロはシンクロしている。例の従魔契約、その作用だ。だから、ザクロが死ぬとハジメにも死んだような感触が訪れる。シンクロ臨死体験だ。


「ザクロ……!」


 ハジメは唸る。彼も、ほとんど気絶しそうな勢いだ。ユラユラと歩き、壁に手を付く。ダンジョン、鉄鉱石の壁。


「……」


 ハジメは念を込めた。もう何も言わなかった。ただ、祈るように壁へと練り込んだ魔力を送り込む。


 冷静な自分がいる。思考し、巡回する。ここのダンジョンに、ベルがいるとしたら。彼女は『レベル3』だ。自分が全力を出して、このダンジョンごと攻撃しても、巻き込んでしまっても、大したダメージではない。


 ザクロ。彼女だけに届くように。おそらく、まだ一階層にいる。そんな気がする。


「……」


 ハジメは放った。あのネコに届くように、自分の魔力を全部、壁へと送信した。壁の鉄鉱石が青白く光りだす。光はうねるように上方へと繋がり、どこかに伝導されたように。


 鉱物魔(マージナル・)素反(ミネラル・)照反応(リフレクション)。その応用だった。魔力を、魔素良導体、その伝達物質により通過させて送信したのだ。ハジメは誰に教えられたわけでもなく、それを実行した。


「……ぶはあッ」


 ハジメはぶっ倒れた。壁へと、全魔力を放出した。疲労が半端ない。今モンスターに襲われたら、あっけなくやられてしまうだろう。そう考えると、辺り一陣の敵を全て気絶させていたのは、かなり良策だったと言える。


 ハジメも気絶しそうだ。新たにモンスターが湧いてこないことを祈ろう。一応、この階層のやつらは全滅させたつもりだけど。


 やり遂げた男ハジメは、大の字になって地面へとくたばっている。その周辺には、死屍累々の気絶したモンスターたち。


 と、傍らに落ちていたギルドカードが白く光る。情報が更新された。



 氏名 ハジメ

 スキル【みじめ】

 術《雷術Ⅲ》

 従魔

 レベル65



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