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【みじめ】スキルで異世界生存中  作者: 岩流佐令
第二章 獣人奴隷解放
58/80

53匹目 ネズミ、ライド中⑮

「ハジメさん……」


「うおっ」


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 ……


「ま、またですかベルさん……ちょっとごめんなさい、おれ今すごく眠いです。

 結局あの変態男は、あのままイヌっ娘と一緒に普通に帰っちゃったし、わけわかんないまま同じく帰ったおれとベルさん。今日一日のイベントがめちゃ多すぎて、軽くグロッキーです。

 ホント眠いんです、ホント……ちょっと……あれですよ……あれあれ……」


 何故か説明口調になりつつ、夢の世界へと絶賛誘われ中のハジメ。


 彼は今現在、例の違法同棲ダンジョンに就寝中のところを、またもやベル少女に襲われている。(18匹目押し倒され中③〜)


 ハジメの解説通り、例の変態白衣男・ビードは、ミリタリーJKボンテージ・マロナとともに、お散歩プレイ(?)しながら普通に帰った。食堂に入ったのに、ハジメと会話しただけで何も注文せずに(そもそも店員はいないが)店を出ていった。


 取り残されたハジメ、ベル、酔っ払いグッスリおやじ計三人。ベルはいつの間にか店内を、ここへ来た元より遥かにピッカピカにして、清掃を完了させていた。


 なんということでしょう。あんなに終末じみた食堂内は、匠・ベルの手によって、見違えるような輝きを取り戻したではありませんか。いや、冗談でも誇張でもない。ちょっと目を疑うくらい、新品同然、ニューオープン並みの内装だった。もちろん、食器やゴミも片付けられている。なんなら店内のテーブルの配置も変わり、とてもフレッシュで利便性があって効率的で清潔感溢れる構図になっていた。


 確実に経営者は得をしている。なんなら、明日からあの食堂は、客が倍増するだろう。断言できる。めちゃくちゃ変わった。なんか、壁の色もいい感じに変わっている気がする。あと、所々床や天井や階段が修繕されていた。外観も変化した。窓が磨かれている。屋根も一新されていた。もはや、別の店だ。


 無償労働者ベル。左官屋ベル。ハウスクリーニングベル。匠ベル。鳶職ベル。建築デザイナーベル。監理技術者ベル。高所清掃ベル。収納マイスターベル。施工管理技士ベル。


 ……もうどこまで行ってしまうのだろう。少し怖い。


 なんでここまで出来るの? どうやって生きてきたの? これからどう生きるの? ……


 謎の万能スキル(【スキル】じゃない方)を発揮するベルさん。それも全ての作業が、ハジメとビードが会話している間に、である。


 気がついたら知らないところにいたハジメ。もちろんずっと食堂にいたのだが、その建築物のあまりの変貌っぷりに、一瞬、自分がまた異世界に飛ばされたのかと思った。本当に、瞬間移動、どこかへワープしたのかといった印象。マジシャンがカウントしたら、風景がガラッと変わる、種も仕掛けもございません。


 食堂。本気ベルの異常すぎる魔手によって、あまりにも変貌し過ぎた食堂。超絶グレードアップ。の、床に、依然として寝転がる泥酔おやじ。工事には気が付かなかったらしい。目も覚まさない。気づかなかったのは、ハジメもだが。


 おやじは結局起きなかった。起こすのも面倒だから、床にそのまま放っといた。たぶん明日の朝にでも起きたら、ハジメと同じく謎の異世界ワープ現象に見舞われていることだろう。それは同じく朝、店に出勤する店員さんも喰らう現象だろうが。


「ハジメさん……」


 と、またもや夜襲ベルがハジメへと言う。例によって例の如く、その小さな獣人少女の体躯は、仰向けになって目を瞑りかけるハジメの、主に下腹部分に跨っている。


 ちなみにベル少女は身長一五〇センチ、体重四二キロくらいだ。この情報により、大いに楽しまれるがよろしい(何を?)。


 そのネズ耳少女が、朝のザクロワゴン、昼のイノシシ、夜の祝勝会&変態プレイ鑑賞、を敢行し、たいへん疲労しつつある営業終了者ハジメの、主に下腹部分に跨っている。


 と、ベルが再び口を開く。


「ハジメさん……あの人間のひと……」


「ん……」


 ハジメは半分寝ている。この違法同棲ダンジョンに帰った時から、ぶっ倒れるように就寝に入ったのだ。一応シャワーはちゃんと浴びたが。歯も磨いた。服も清潔である。


 そして対するベルの方も、就寝支度はきっちりと済ませている。彼女は祝勝会にて、しばらく睡眠を取った分、余裕があるのだ。入念に身を清潔にしていた。その清らかな彼女は、今現在この瞬間ハジメの、主に下腹部分に跨っている。


「あの人間のひと、怖いです」


「……」


 半覚醒状態のハジメは、頑張って思考を巡らせる。人間のひと。おそらく、ビードのことだろう。半覚醒状態のハジメは、頑張って言葉を紡ぐ。


「うん。おれもそう思う。あいつは変態だ」


「あの、そうじゃなくって……匂いが……」


「におい?」


「はい。すごく怖いひとの、匂いでした」


「……そうかそうか。ベルも疲れたもんな……」


 ハジメは思考が働かなかった。完全に疲れて帰った男の様相。何も考えずに、ベルの頭を撫でる。ヨシヨシとイイコイイコする。全く脳味噌が停止状態。


 ベルは不審そうにハジメを見遣る。少し心配も混じった表情。そもそも、疲れて眠たがっている人間に跨るのはおかしい。


 が、少女は会話を継続。自分の頭を撫で撫でするハジメの腕を、ガッと両手で掴んで、どける。上体を倒し、彼へとその美人の顔を近づける。


「あの……ハジメさん?」


「……うんうん……昼間デカいヤツで、下から突かれて疲れたもんな……」


 とんでもないダジャレを言うハジメ。もちろんデカいヤツとは、イノシシのことだ。イノシシの巨体にライドした、ベルのこと。


 普段の彼ならその洒落を、例え頭の中で思いついても、ベルには絶対に言わない。が、もうハジメは普段の彼でもなんでもなかった。ただの、一日で疲れくたびれた男だ。


 が、ベル続行。彼女はなんと、その男を揺さぶり始めた。寝ている疲れた男を、である。普通の男(女も)なら、マジ切れしてもおかしくはない。むしろここはしてもいいだろう。「本当にやめて」くらいは言ってもいい。というか、言わないと人は反省しない生き物だ。


「うう……ベル……どうし、た……の……」


 ハジメはいい奴だと思う。たぶん、ベルのやることなら何でも怒らない。そういったスタンスだ。そしてそれを、就寝の際にも崩さなかった。


 本当に限界に眠い時、睡眠欲求が臨界地点に達した時、その人の本性がなんとなく現れる。が、ハジメの本性がこれだとすれば、彼は本物だ。本物の男だ。


「ハジメさん」


 ついにとうとう、ベルは彼を叩き始めた。バシバシと、その完全レム睡眠中のハジメの頭をぶっ叩く。割と遠慮がない。叩く音が岩の洞窟に、しっかりと反響している。


「……ハジメさん」


「……」


 ハジメはもう寝ている。ほぼ死んだように。その頭をバシバシと叩きつける彼女は、依然としてハジメの、主に下腹部分に跨っている。


「……」


 男は、本物の男だった。見事に就寝している。その寝顔は物凄くうなされている風だったが、しかしきちんと目を閉じ、既に夢の世界へと、その自由の翼を拡げ飛び立っていた。戦士ハジメは、本物の男だった。


「……ちゅう」


 ネズミのバシバシが営業終了する。開放された、動かない、本物の男。その上、主に下腹部分に跨っている少女・ベル。もう起こせないことを悟ったらしい。素直に静かになった。


「……ハジメさん、」


 と、最後にもう一つだけ呼んだ。が、反応はない。ハジメはもう死んでいる。ように、眠っている。


「……」


 にわかに上体を、さらに深く倒すベル。その上半身前方皮膚面積は、同部位で男ハジメへと完全なる体位接触を遂行される。


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