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【みじめ】スキルで異世界生存中  作者: 岩流佐令
第二章 獣人奴隷解放
53/80

48匹目 ネズミ、ライド中⑩

ショタと女帝

「ザクロっ。ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロっ!」


 ハジメは素手で地面を掘っている。

 既に戦闘によって、その身体は土と灰と汗塗れだったが、またこれでさらに指が血塗れになった形だ。


 ──男は何をしている?


 ハジメが見た、最後の景色。ザクロをこの目で確認した、その最期の風景。

 それは《魔法陣型複数(マージナル・ユナイツ)魔力増(・ルミネイト)幅機構(・フィールド)》を放たれる前に、彼女が例のイノシシの巨体の下へ、潜り込んでいる映像だった。


 下へ、()()()()

 まるで、自らを犠牲としてでも、その巨体を担ぎ込み、拘束し、硬直し。

 己を接着剤として、敵の身体を地面へと固定するように。


 形としては、イノシシをヘルメットみたいにして被った、防御の姿勢にも見えるだろう。あたかも自分の身だけを案じ、緊急避難したような。

 が、ハジメには全てがわかっていた。


 彼女が戦士たちの前へと、その姿を最期まで決して現さなかったことを。

 頑なに隠密行動を敢行させ、戦闘では四六時中潜伏し、味方の回復治療に努めていたことを。


 そして──彼女が何より、その冒険者たちの身を案じていて。

 皆を、誰よりも強く想い、自らを引き立てることなく、かの勝利条件を遂行させたことを。


「ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロっ……」


 全く、緊急避難ではなかった。

 むしろ、一番の危険地帯へと、彼女はその身を先行させていた。

 《魔法陣型複数(マージナル・ユナイツ)魔力増(・ルミネイト)幅機構(・フィールド)》。──


 現在、イノシシがその中央で確実に死んで横たわっている。

 まともに喰らえば、B級モンスターだろうが、A級雷術師だろうが、生命はない。


 その下。

 ザクロが生きていた時いたハズの、敵の巨体の下。無惨に表面が黒焦げになった巨体の、屍体の、亡骸の──その下。


 彼女はいなかった。

 その姿さえ残らず、焼土と化した。


「ザクロ、ザクロ、ザクロ、ザクロっ」


 ハジメは掘り続ける。爪は剥げ、指は出血し、その皮が裂けてボロボロになっている。

 かつて、あのネコ耳美女がいた場所を。

 死ぬ気で除けた巨大イノシシの下、その地面を。


「ザクロ、ザクロ……ザクロ」


 最初に出会ってから、五日。まともに会話したのは、昨日から。

 まだそれだけの日付しか経っていない。まだそれしか時間を共に過ごしていない。


 なのに、自分の半身のような。

 彼女が死んだら、同時に自分も死んでしまうような。


「ザクロぉ……」


 もう何も聴こえない。何も見えない。

 冒険者たちが、無心に掘り進め、やがて無力に放心したハジメを揺さぶり、問うように何か叫んでいる。が、それすらも感知できなくなるほどの、絶望。


 男は狂っていた。ああ、自分も死のう。

 そう思い立ったのは、しかし彼が彼女との間に結ばされた契約、《従魔契約》あってのことだろうか。

 否──そうでなく。


 純粋な心。その臆で、ハジメは彼女を。

 あの突拍子もない、破天荒で、自分勝手、でも周囲を誰よりも思いやっている。

 ザクロを、そんな女性のことを、本当に、本当に。──


「ああ……ザクロ、」




 ■■■




 バチバチッ。


 突然、電撃がハジメの背中を襲った。振り向く。


「──!」


 ザクロだ。

 彼女は生きていた。生存、していた。


 遥か向こうの茂みに潜伏しつつ、かなり距離のあるハジメへとその片腕を伸ばし、電撃を一直線に放っていた。

 無論、衝撃の音が響く。他の冒険者は、突如としてハジメを襲った電流に驚き、後ろをハッと警戒するように振り返る。


 が、もういない。


 ネコは結果、その身を最後まで隠し通した。離れ業を通り越して、もはや超人の領域である。

 彼女の潜伏力はその存在を発現し、彼女自身の存在は、ハジメ以外全ての冒険者へと、戦況全期間を通じて秘匿とされた。


 それこそ()()()()()、全ての冒険者に。




 ■■■




乾杯(かんぱ)ァイ!」


 ジークが音頭を取った。ガッチャンガッチャンと、瓶が割れそうなほど激突する音が響く。


 食堂だ。ハジメが異世界来て三日目の朝、ベルと訪れて朝食を摂った(ところ)

 あのネコ耳美女と、初めてエンカウントした、例の場所。


 その食堂に今、冒険者たちは集い、祝杯を上げていた。


「ジーク兄貴、さすがっした!」


「兄貴ィんん、最高よん。エンダム一番、最高に輝いていたわ」


「あ、あの、《血楼愚狼(スクレイ・レッドウル)》のジーク様ですか?」


「あら、さっそく女の子が来たわよん」


「ヒュー、兄貴オットコ〜〜」


「え、えと。先程はありがとうございました! あの、護っていただいて……」


「あーん? そんなのわざわざお礼しなくていいんだよ。綺麗な女性を庇うのは、男として当然の摂理じゃねえか」


「ジーク様……きゅん」


 キュンと来ている女の子。さっき戦闘でジークが助けた女の子だ。婚活っぽい下りの。

(42匹目 ネズミ、ライド中④ 参照)


 ジークに他の冒険者たちがわらわらと集合する。本当に人望がある奴らしい。

 皆の尊敬の目も健在。なんなら、さらにその輝きを増している。


 広々とした食堂には、今や総勢二百人ほどの人々がたむろしていた。軽く渋滞現場である。

 その内百人は、もちろん出撃した冒険者たち。彼らにB級モンスターの経験値は、平等に山分けされた。


 イノシシ。

 トドメを刺したのは──全員だ。


 食堂は人でごった返している。建物から溢れ出た人間も、店の外でやんややんやと、その異常なまでの賑わいを見せていた。



「ホッホッホ。すごいのう、この人だかり。この儂、ゾッチもおったまげたわい」


「あら、こんなに沢山いても、あなたって輝いているわ、ミダス」


「いいや、ジェリー。キミの方がより輝いて見えるよ。他のやつは鼻くそと一緒だ。ティシューにくるめてゴミ箱にポイしてしまおう、ぶちゅー」


「ああん、ミダス! ぶちゅー」


「ホッホッホ。やっとるなあ」


 紹介しよう。老人とダンサーの男女だ。

(43匹目 ネズミ、ライド中⑤ 参照)


 老人は木の杖(魔法使いのそれではなく、本当にご年配の方が持つようなフォルムのそれだ)を持っている。


 また、その格好。上半身はちゃんとした賢者じみた、ゴキブリみたいな色のローブを羽織っている。そのくせに、下半身はアロハみたいな短パンで、足はビーチサンダルである。


 ダンサーの男女。女の方はフリフリのレオタードっぽい衣装、男もマジで気が狂いそうなほどペラッペラの同・レオタードだ。


 つか、ほぼ半裸というか、服がぴっちりしてて、股間なんてモッコリが普通に浮き出ている。むしろその衣装を着ることによって、全裸よりもクソみたいな変態性が強化されたみたいに。


 二人はぶちゅーしている。なんかもう勝手にやっとけって感じだ。

 クソアベック! ○ァック!


「あのぅ、ジェイドさん。大丈夫でしたかぁ?」


「う、うむ。拙者は平気だ。それよりローズ殿、そなたこそ傷が深いのではないか?」


「いいえぇ、私は平気! だよぅ。あ、『平気』って、被っちゃいましたね、えへへぇ……」


「う、うむ……」


「「ニヤニヤ」」


「む、おぬしらッ。何をニヤニヤとしておるのか!」


「「ヘッヘッヘ」」


 ニヤニヤと二人を見、ほくそ笑む男たち。

 その二人──十代後半くらいの若い女の子と、傭兵みたいなデカ男おっさん。

(43匹目 ネズミ、ライド中⑤ 参照)

(↑さっきとおんなじ)

(45匹目 ネズミ、ライド中⑦ にも)


 男の方は侍みたいな口調で、自身たちの仲を慈愛に満ちた目つきで見守る周囲の男たちを、牽制している。照れているのだろう。


 女の子は例の斥候の女の子だった。陸上軍みたいな迷彩服とメットを被り、そのおっさん・ジェイドへと敬礼している。慕っているらしい。

 少し気の抜けた、ぽわぽわっとした口調の子だ。高校生女子くらいに見える。


 ぶっきらぼうな武士傭兵おっさんと、彼へ純粋に懐いているミリタリー斥候女子。

 その慕い合う、しかし中々進展が無さそうな二人を、周りの知り合いの男共が『甘酸っぺえ……』といった感じに見守るといった構図だ。


「はあ。私の《魔法陣型複数(マージナル・ユナイツ)魔力増(・ルミネイト)幅機構(・フィールド)》、効かなかったかあ……」


「いやでも、あれのお陰でイノシシの体力、かなり削げてたっすよ先輩! 気にしないでください!」


「ガッハッハ。リュウズの言う通り、気にすんなって、サージュ! それに、二発目でトドメを刺せたじゃないか。このゼンバ様もびっくりだ。あれは良い働きだったぜ、グッジョブ!」


「うんうん。サージュがいなかったら、俺たち全滅だったよ。ありがとうサージュ」


「そ、そんなガットさん。頭をお上げくださいっ」


「いいやー、サージュを生き残らせて良かった! 護った甲斐があったな、な? リュウズぅ」


「ええ……ゼンバさん、ボクに振らないでって言ったでしょう?(小声)」


「んだよ、なっさけねえなぁ。それでもタマ○ン付いとんのかぇ!?」


「ひゃああ、お尻ぶたないでくださいよ!」


「ガッハッハー」


 ……まあ台詞がたくさんあること。

 整理しよう。

(45匹目 ネズミ、ライド中⑦ 参照)


 まず、今尻を打たれた男の子は、例の獣人少年だ。どうやらよく見たところ、トラの獣人らしい。

 外見はショタ。完全に美少年のショタっ子である。ショタコンホイホイな素晴らしいトラ耳ショタだ。ついでに可愛いしましま尻尾も付いてるお☆

 格闘家みたいな格好をしている。たぶん、職業は文句なしにモンクだろう(だじゃれ)。柔道着みたいな白い布に身を包み、腰を黒帯で締めている。

 トラ耳格闘ショタ。う〜〜ん、Excellent!


 お次は、そのショタケツをぶっ叩いたふざけんなクソ野郎、おやじ(斧)だ。

 ワンマンプレーを実行しようとしたハジメを引き止めた、あのおっさん。

(ライド⑤終盤、⑥序盤参照)


 ガタイがいい。異世界モノでよくいる荒くれ者だ。それ以上は描写説明しない。あいつショタ叩いた。人類の敵だ。


 で、同じくそこら辺にたむろしているのが、若い男(弓)だ。なんかもう面倒くさい。勝手に容姿は想像してくれ。


 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。次が最後の人物ですよ。


 最後に、サージュと呼ばれたお姉さん。例の、ハジメの排尿音を掻き消してくれた呪文詠唱の女の子だ。二十代中盤くらいかな?

 弓男と同じくらいの年齢だ。結構可愛い系。

 後衛職と描写したが、よくよく見ると巫女姿みたいな服装だった。あと、杖だと思ってたのは幣だったらしい。神主がよく持っている、あれ。


 なぜそんなビジュアルなのかというと、例の巨大魔法陣《魔法陣型複数(マージナル・ユナイツ)魔力増(・ルミネイト)幅機構(・フィールド)》。

 その生みの親というか、発動させたのが彼女・サージュであり、職業は結界師のようだった。


 おお、結界師。異世界来てようやく面白そうな役職の人と出会った。

 サージュちゃんはどうやら、ハジメと同じくユニークスキル持ちらしい。


 ハジメは【みじめ】。

 彼女は【魔法陣(マージナル・)結界:(フィールド:)炎塔(ワード・)の章(ブレイズ)】。


 えーなにそれ。めっちゃカッコイイ。

 ユニークスキルのネーミング水準が全くよくわからないが、少なくともハジメよりは強そうな特別スキルなのは理解できる。


 で、その謎に光っている結界スキルを、彼女は自身の戦闘の持ち味としているのだ。

 だから重宝される。我が街エンダムには、無くてはならない人材、存在。

 昼間のイノシシ戦の時も、彼女だけは後方に送り、皆で最後まで護り抜く勢いだったそうだ。

 エンダムの女帝(クイーン)とも呼ばれている、というのはジーク提供の噂。


 トラショタファイター、リュウズ。

 荒くれおやじ(斧)、ゼンバ。

 若い男(弓)、ガット。

 結界師【魔法陣(マージナル・)結界:(フィールド:)炎塔(ワード・)の章(ブレイズ)】、サージュ。

(45匹目 ネズミ、ライド中⑦ 参照)

(↑さっきも言ったか?)


 そう、彼らこそエンダム()()()のパーティ、《對贇瑩餐(ニトロ・エデン)》である。すっげえ名前。


 え? 一番手は誰だって?

 言ったじゃないか、ジークたちだよ。

 《血楼愚狼(スクレイ・レッドウル)》。



各名前↓


老人『ゾッチ』

ダンサー男『ミダス』 女『ジェリー』

斥候女子『ローズ』

武士傭兵おっさん『ジェイド』

トラショタファイター『リュウズ』

荒くれおやじ(斧)『ゼンバ』

若い男(弓)『ガット』

結界師尿音消し女帝『サージュ』

兄貴『ジーク』

子分『ゲルク』

口紅『メイジ』


彼らは多分もう出てきません。

覚えなくていいです。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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