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【みじめ】スキルで異世界生存中  作者: 岩流佐令
第一章 気絶、拉致、臨死
17/80

16匹目 余田ハジメ、押し倒され中

コン○ームとエリクサー(瓶)

「……はあ」


 コン○ームを指で翫びつつ、そう嘆息したこの男の名前は、『余田ハジメ』。

 つい三日ほど前なぜかいきなり異世界に転移させられた、日本の一般ヒキニートであり、現役童貞である。

 ここは宿屋だ。昨日と同じ──『昨日』。


 昨夜、ネコ耳美女の猛攻の後、満身創痍の二人は再び街の宿屋に来て、休んだ。

 ハジメは異世界からこっちのことを思い出し、もう一度嘆息した。


「疲れた……」


 この三日間のみで、どれ程のことを体験し、体感しただろう。


 異世界最弱。スライム。

 ネズ耳美少女。

 臨死。イノシシ。

 ネコ耳美女──魔法。攻撃。


 その驚愕を数え上げると、枚挙にいとまがない。

 それはまるで、今まで錆びついたように停滞していたハジメの人生の歯車が、突如、ネズミ滑車のようにクルクルと、怒涛の勢いで回り始めたようであった。


「…………」


 ハジメはベッドに寝転がったまま、元の世界産のその避妊具をいじくる。

 その手には、いつの間にかエリクサーの空瓶も追加されていた。

 昨日、ネズミのチュー三郎に貰った小瓶だ。

 その表面には、手描きの文字で『ベル』とも書かれている。


「ベル……自分の持ち物に名前書くタイプなんだ。真面目だなあ」


 ポツリ、呟いた。

 その目は、依然ぼーっとしている。が、傍から見ると、真剣な表情だ。

 仰向けで、避妊具と小瓶とを指でもて余している。


「…………」


 彼は昨夜の、ネコ耳美女の頭上に浮かんだ、 『レベル107』という文字を思い出した。


「レベル107。おれは……レベル12」


 この世界の標準値はわからない。が、相当なレベル差であることは推測できる。


「スライムに、負ける。イノシシと、レベル100超えの魔法使いに、勝つ……」


 避妊具をつまむ手は、しかし慎重だ。

 この袋が破られる時は、すなわち、ハジメが童貞を引退する時だ。


「フ。いつになるんだろうな……あ!」


 その時。いじくっているうちに、その避妊具がエリクサーの瓶の中へ、すっぽりと入ってしまった。


「やっちまったああああああああああ!」


 ハジメは大音量で悲鳴を上げた。

 小瓶の口から、爪で必死の救出を試みる。

 しかし、瓶は一握りの細長い三角のフラスコ状であるため、ピンセットすらまともに入らなそうだった。

 時すでに遅し、という言葉がハジメの脳内を駆け巡る。彼は真っ青になった。


「これじゃ、ベルに返せねーな……」


 コンコン。


 バッと、ハジメは()()()()()になったその物体を後ろ手に隠した。

 ひゃいっ、と返事をする。声が裏返ってしまった。


「おはようございます」


 にっこり、柔らかい笑顔が現れた。ベルだ。

 昨日の服はネコ耳美女に破られたから、また新しく買ったらしい服に身を包んでいる。

 昨日のも可愛かったが、今日の服もまた一段と愛くるしい。

 朝の穏やかな光が舞い、部屋は一瞬にして花のような香りに包まれた。


「おはようございます……ベルさん」


 と、ハジメはベッドから降りる。


「あの、ハジメさん。なんかさっき廊下で、『やっちまったー』って声が聴こえたんですけど……」


「へ、へえーフシギだね! おれの声じゃないけど!?」


「ああ、よかった。……ハジメさんの身に何か起こったんだと思って、心配しちゃって」


 やべえ。聴こえてたのか。

 やっぱ(これ)、ベルには見せらんねーよな。……


 ハジメは後ろ手に隠した小瓶(コン○ームinエリクサー)をチラと見遣った。

 と、ふと思考を切り替えるように、レベル表示の件がよぎった。

 あの能力は、誰に対しても使用出来るのだろうか?

 ハジメはベルの顔を見て、目を凝らした。


「?」


 見つめられ、ベルは小首を傾げる。

 その頭上に、文字がフッと現れた。


 『レベル3』


(さん)、かぁ────────!」


 ハジメはガックシと崩れ落ち、orzの体勢になった。


「──? ?」


 ネズ耳少女はそのいきなりの露呈に、戸惑うばかりであった。

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