14匹目 ネコ、捕食中④
にゃんにゃんぺろぺろ
「わたしのスキルね、【捕食】っていうの……」
ネコ耳美女は、ベルに囁く。
ベルは思案した。ここはどこだ?
──部屋だ。見知らぬ部屋。
この前の、ベルが地下牢に囚われた屋敷ほどは広くない。
が、落ち着いた美しさのある高級な室内だ。
部屋の中央の気品のあるベッドに、ベルは寝かされていた。
「あなたを捕らえるためにあるスキル──素敵でしょう?」
ベルは身体が拘束されて動けない。
その上に、シュルシュル……と上衣を脱いだ美女が、おもむろにまたがった。
森閑とした薄暗い女の部屋で、仄かな、色のついた光芒が二人を照らす。
ネズ耳少女は怯えた瞳で目の前の天敵を見る。と、ネコ耳美女の目が細められた。
ネコは、ネズミの顔を撫でる──恍惚の表情。
「あなたって本当、かわいい……」
■■■
部屋に水音が響く。猫が水を舐めるような、粘着質な音。
いつの間にか、ネズミの服は破られていた──その肌を。
首から肩へ。
肩から胸へ。
胸から腹へ。
ネコの首がゆっくりと移動する。
闇の中に時折、ビク、ビクと震える影がある。
小さな、恐怖を帯びた悲鳴も聴こえてくる。……
「──ネズミはね、こうなる運命なの」
ネコが言う。
「あなたも知ってるでしょ? わたしたちの歴史──『ネズミを喰べれば強い力が手に入る』ってやつ……」
「…………」
「ニンゲンも、よく考えるわよね。……本当、馬鹿だわ」
ネコはニヤリ、と口角を上げる。
「あたしはね、弱い奴が嫌い。でも、あなたのことは好きよ。……あら、あなた」
ネコが、何かに気づいた。ニヤニヤと笑う。
「どうりで今朝、血なまぐさいと思った。子どもじゃなかったのね。ますます良いわ」
ネズ耳が、ピンク色に燃えた。顔を背ける。
「けど……これじゃあ、だめね」
ネコは、『今は』と置くと、
「あと二週間ほど待つかな。……それまで、じっくり可愛がらせて頂戴」
再び、顔を撫でる。ネコは凄惨に笑った。
■■■
ガブリッ!
ベルは美女の指を噛んだ!
「────ッ!」
美女は、反射的に仰け反る。
と、すぐに噛まれた指の反対の手で、ベルの髪を強引に引っ掴んだ。
少女の頭がベッドから離れ、宙に浮いた。
「……この野郎」
美女の威嚇するような低い唸り声が部屋に響く。
が、少女は毅然とした目つきで、キッと敵を睨む。
「フ」
美女は急に、溢した。
「フフ、フ……今気づいた。暗がりと髪に紛れて、わかんなかったけど」
「…………」
「あんた、『穴付き』ね」
少女の瞳孔が大きく見開かれる。
彼女は急激に首を振り、髪を掴むネコの魔手から逃れた。
ドサッという布の音とともに、ベルの身体がベッドに落ちた。
美女がベッドからゆらりと半身を起こし、膝立ちになる。
その尻尾が揺れ、毛が逆立ち、ブラシのように膨らんだ。
「いいわ、気が変わった。……今、喰ってやる!」




