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【みじめ】スキルで異世界生存中  作者: 岩流佐令
第一章 気絶、拉致、臨死
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0匹目 囚われネズミ

「んだよ、一匹余んじゃねえか!」


 男の声。ドス、ドスと歩くような音。

 辺りは仄かな闇だ。


 ただ一つ廊下の燭台に、鴨の脛になった蝋燭の火が、チラチラか弱い照明となっているだけである。


 その灯に照らされて、向かい側に一つの裸身が浮かび上がる。

 女だ。それも、少し幼いような頼りなさげな身体つきの。


 少女の繊手は今、上方に太い縄で括り付けられている。

 その平べったい白蝋のような背中は、土のような石のような壁際に沿う。


 手前には格子がある──檻だ。

 閉じ込められた少女の姿だ。


 チ、と男の舌打ちが聞こえた。


「あいつら、掴ませやがって。余計に勘定しちまったってことかァ、チクショウ!」


 ガシャン!


 男が格子を蹴ったのだろう、檻の中に凄まじい金属音が響いた。

 少女の裸の肩が恐れるように、ビクッとかすかに痙攣する。


 振動に、蝋燭の火が大きく揺れた。

 それが、俯いた少女の頭部になにやら奇妙なものを映し出す。


 あれは──()


 彼女の頭蓋骨にくっついているのは、およそ生物的な一対の耳介である。

 それも髪の色と一緒で銀色の小さい、ネズミみたいな耳。


 再び乱暴な歩調が闇に鳴り、男はどこかへ去ったようだ。

 その時起きた空気の流れが、もう一度強く蝋燭の火を動かした。


 照らされて、少女の瞳孔が闇の中に、青白い炎のように──揺れる。

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