第六話 対人兵器
傭兵部族『き』の強み。
それは他部族からの人買いや孤児の引き取りによって様々な種族がいることだ。
オミ達の部隊は全員ケモノつきと呼ばれる種族で構成されている。
身体能力や知覚能力が恐ろしく高く、いざという時は獣に近い姿となって戦闘能力を倍加するのだ。
『き』の拠点を出発した俺らは半日後には遺跡近くへ到着し、準備を始める。
「オミ、敵はいつ頃、どっちから来る?」
「二日前にはあの山の中にいたから、もうすぐ川沿いに来るだろうね」
一切の気配、音、匂いもなく彼女らは偵察をこなす。
「数は五人。長耳族だよ。剣使いが三人、弓使いが二人」
長耳族は長く尖った耳を持つ種族で、他種族との関わりをほぼ持たない閉鎖的なやつら。
俺は記憶にある映画を思い出し、エルフを想起するが、フィクションとの混同はしない。
俺の役割は(もちろん最低限の戦闘もこなすが)、新しく開発した兵器の設置だ。
その一つを仕掛ける。
記憶の中にある対人兵器、クレイモアをヒントに作り上げた。
きっかけとなったのは、刺激を受けると破裂する木の実。
名前はついてないが心の中で(クレイモアの実)と呼んでいる。
三十センチほどの実は熟してくると芳醇な香りを放つようになる。
鳥達が好んで食べる全く別種の木の実そっくりに。
寄ってきた鳥が突いた途端、爆発とも言える勢いで破裂し、種子をばら撒く。
鳥に多数の種子がめり込み(貫くのもある)、鳥は死に至る。
それを餌とする他の鳥や獣が肉と一緒に種子を食べ、遠く離れた地で糞と一緒に種まきをすることになるわけだ。
俺はこの実を集め、細工を施した。
表面に小石や金属屑を樹脂で貼り付け、威力を増やす。
そうやって作り上げたクレイモア。
数は四つ。
少し開けた場所。
それを囲むように茂みの中に隠す。
キルゾーンの完成だ。
作業を終えた俺のもとへオミがやってくる。
「出来たぁ?」
「うん。オミ達の弓次第だよ。同時に当ててね」
心配はしていない。彼女らは凄腕の戦士なのだ。
「任せて。簡単だから」
笑みを浮かべるオミ。
「ほら来たよぉ」