第四話 野戦へ
「出来てるか?」
「出来てるよ。はい、これ」
袋をいくつかオザマに渡す。
オザマは袋の中身を確認した後、俺へと戻す。
「よし」
「いつ取りに来るのかな」
「昼の鐘が鳴る前には来るだろう」
二度寝するかと考えた俺へ告げられるのは、
「オミ達に同行するよう大巫女様に言われてる。準備しておけ」
という大巫女さまからの通達。
「えっ?!何それ!」
「現場での運用含めてお前がいた方がいいとの判断だ」
「いきなり?前もって言ってよ〜」
「わしもさっき通達を受けたんでな。七日間の同行となる」
大巫女さまの命令は突然だ。そして絶対。
この傭兵部族『き』の最高権力者には逆らえない。ましてや俺、元リーマンだし。
オザマが出てしばらくしてからオミがやってくる。今回、中央から来た部隊と共同作戦をする隊のリーダー。ケモノつきの少女。俺たちの母親代わり。
「出来てるぅ?」
その身体能力は凄まじく、一人で戦士数人を相手にしても圧倒する。しかし見た目は細身の少女だ。
オリンピックに出場したら全種目で金メダル取れそうだよなぁ。
「出来てるよ。おかげで寝てない」
「オザマから聞いた?」
「今さっきね。相変わらず突然だよなぁ」
(ブラック企業だもんなしゃーない)
「あんたが来たら助かるからねぇ。それに実際使ったとこを見た方がいいでしょ?」
「そりゃまぁ……。でも俺、オミ達の足でまといにしかならんような……」
「大丈夫よぉ。うちの隊が、いや私があんたを守るから」
オミの話し方とは裏腹に、この度の戦はかなり過酷になることが予想されるだけに、俺は不安で仕方ない。
「それはよろしく頼むよ。死にたくないから」
「任せてぇ」
「あれぇ?ミサはまだ寝てる?」
「昨夜は遅くまで作業したんだ」
まーた寝たふりだよな。
「ふぅん。ミサ、心配ないからね。ちゃんと返すよ」
ミサは答えない。
オミの相手は去年戦死しており、彼女は次の相手をまだ選んでいない。
早く相手を見つけるようにと周囲からせっつかれているが、
「そんなにすぐ見つかるもんじゃないよぅ」
と、俺から見てものんびりしているように見える。オミは袋を軽々と持ち上げると、
「じゃ、昼の鐘が鳴ったら広場へ来てねぇ」
「わかった。準備したらすぐに行くよ」
そして俺は野戦装備の準備を始める。