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気がついたら古墳時代レベルの異世界に  作者: はるゆめ


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第十六話 さらなる出会い

 挙動不審な裸の女。俺たちの方を見ては俯いて、また顔を上げて見るの繰り返し。

 俺達は油断なく構える。ここにいるってだけで人間じゃないの確定。


「オミ、少しずつ下がろう。アレの下に大物がいる気がする」 

「だねぇ」


 疑似餌みたいに獲物を誘き寄せる為のものじゃなかろうか。俺たちが下がるのに合わせて女も少しずつ近寄ってくる。

 呼びかける。


「なぁ!あんた誰だ?」


 反応はない。そもそも形だけ人間に似せてるだけだろう。


「走れっ!」


 オミの合図で全員階段を駆け上がる。昇りきって振り返ると、女は動いていなかった。


「やりにくいなぁ。水の中じゃまともに動けないよ」

「だねぇ。よっと」


 オミが矢を射かけると、女は避けもせず。矢が刺さっても反応はない。


「オミ、あれさ、多分本体は水の中だと思うからさ、女の足元あたりに血抜き槍投げてみて。力いっぱい」

「いいよっ」


 オミの人間離れした投擲で血抜き槍は女の足元へ吸い込まれる、女が凄い勢いで引っ込んだ。


「当たったみたい」

「厄介だねえ。水の中から出てこないだろうし」


 その時、俺たちより数メートル離れた場所に何かが現れた、まるでユリーカの転移みたいに。


 全身鎧だ。俺が着ているパワードスーツに少し似た意匠。騎士っぽい。

 両手には大きな剣。二刀流か。

 こっち見てる。冷静だな。強者の気配。

 俺は敵意がないのを笑顔と両手を広げて示す。

 通じたっぽい。

 俺たちの方へやって来て、何か喋ってる。


「Yeen kan ngeen?」


 知らん言葉だ。ユリーカに目をやると彼女は首を振る。ディザ帝国じゃないらしい。

 俺は身振り手振りで言葉がわからないと伝える。非言語コミュニケーションは得意だぜ。

 すると騎士は何やら呟いたかと思うと、


「言葉がわかるか?」


 と訊いてきた。


「わかるよ。すごい。それ魔法?」

「そうだ。お前達は何者だ?何故ここにいる?」

「あーうん、この洞窟の外にある国の人間だよ。国名はまだ決まってない。この洞窟が突然出来たと思ったら、中がヘンテコなことになって、それで調べにきたんだ」

「国だと?お前達、ツノ無しがどうしてここに?」

「どういうこと?」


 鎧騎士は兜を脱ぐ。頭に短い角がある!瞳孔は細く金色っぽい!なんかかっこいい。


「我らが住む大陸にお前達ツノ無しの国は無いはずだが?」

「え?逆にあんたみたいな人、初めて見たけど?」


 どうにもおかしい。互いの認識に齟齬がある。


「取り敢えずさ、外に出てみよう?」


 騎士は俺たちを一通り眺めた後で同意した。

 ハイ、アナタガコノ中デハ最強デスヨー。多分。

 洞窟を出た途端、


「何だここは?」


 と驚いていた。

 俺は天幕からスケッチブックを持ってきて、ユリーカに聞きながら簡単な大陸地図を書く。


「この真ん中の大陸のこの辺、それがここ」

「何だと?私はここにいるはずだが、うむ不正確な形だな」


 と、騎士は違う大陸ーー南にあるーーを指す。未知の大陸だね。誰も行ってないからそりゃ適当になるよ。


「あのさ、転移してきたでしょ?もしかしてこの洞窟って南の大陸と繋がってるんでは?」

「ダンジョンの中にある転移門が異空間や異界と繋がってるのは珍しいことではないが……他の大陸にまで通じているとは」


 最近、遺跡の転移陣にユリーカが引っ張られてきた。

 イレギュラーな事案が立て続けに起こってる。


「ダンジョンってあの洞窟のことだよね?こっちと同じ調査で入ったの?」

「いや、狩りだ。ダンジョンに棲む魔物はある程度狩らないと外へ溢れてくる。私は王の命により、定期的に魔物を狩っているのだ」

「偉い人だ……不敬に問わないでね?」

「領民でもない者にそれは求めぬ」


 話のわかる御仁だ!


「あ、俺の名はハヤ。で、こっちが……」

「私はオウルグ。偉大なるガイザ王に仕える将軍だ」


 おやぁ!やっぱ偉い人!


「オウルグ将軍、取り敢えず俺たちの天幕に来てもらっていいかな?まずは歓迎したい」


 オウルグを伴い、天幕へ帰る。

 ミサとハバの娘は最初オウルグにビビってたけど、彼の紳士的な態度を見て少しは慣れた様子。


 俺たちはこの大陸のことをオウルグに説明する。


「我々の国、ガイザに漂着したツノ無しの話とある程度一致するな」

「ユリーカ、もしかして」

「あぁ、過去に派遣した観測船の乗組員だろう」

「その人達ってどうなったの?」

「元の国へ送ってやろうにもその手段が無くてな。我々の信ずる神に海を渡ることは禁じられている。それゆえに船を持たない。なので領民として暮らしてもらっている。魔法が使えないから放置も出来ぬ」

「ガイザの人たち、皆魔法を使うんだ?」

「そうだ」

「あのダンジョンってたくさんあったり?」

「我が国だけでも七箇所ある」

「多いなぁ」

「ガイザ王配下の各将がそれを押さえているから、平和なものだ」


 オウルグ将軍は、いつも通り転移門を通ったらしい。で、予定外の場所、つまり俺たちがいた場所へ来ちゃったと。

 あの全裸女について訊く。


「あれはテタと呼ばれる魔物だ。裸の女に見えるあれは体の一部。それで人を誘い、捕食する大型の魔物だ。ダンジョンの歴史は数百年になる。魔物への対処法は万全だ。すぐに倒せる」


 はぁ。すごい。


「一応訊くよ。ガイザ国は他の大陸へ進出しないの?」

「何故だ?何のために?そもそも海を渡ることを神に禁じられている」

「ですよねー」

「ハヤ、お前は年若いのに堂々としてるな」

「あ、えーと、こういうのに慣れてるとしか言えないような?」


 ユリーカが笑ってる。初対面というか、あの時のことを思い出したのだろう。俺はね営業マンだったから。物怖じしてたら仕事にならん。


 ガイザ国、理性的な国だな。オウルグ将軍と話してわかるよ。彼はこのダンジョンが突然ここに現れたという現象、俺たちの生活に興味あるみたいで、


「私もしばらくここに滞在して良いか?」


 となり、ユリーカに大巫女様のところへ連れてってもらい、滞在許可を得た。

 ここ最近の騒動続きで誰も彼もが平常運行。オウルグを見ても騒ぎすら起こらないのがすごいと思う。将軍はユリーカの転移能力に驚いてた。


 将軍用の天幕を設営下後、中でダンジョン勉強会を開いてもらう。『ぬ』からは記録係も呼ばれた。

 ハバは興奮気味だ。そらそうだ、未知の文明との接触だもんね。俺も興味深々。


 ・ダンジョンの魔物は地上にいる生物を模した存在と定義されてる。死ぬと消えるが、翌日にはまた現れる。同じ日には現れない。


 ・最下層には大型で強力な魔物がいる。


 ・狩っていないとある日突然、ダンジョンから魔物の大群が溢れ出てくる。それらは実体化していて、殺しても消えることはない。


 ・小人や蜘蛛女はガイザ国に普通にいる種族。どちらも温厚な気質。ダンジョン内にいるのとは完全に別物だそうな。


 ・ガイザ国の人口は数十万人。領土も広い。


 ・逆にバボはいないらしい。ユリバボを興味深く見ていた。


 ・ガイザ国がある大陸名はゼノ。あらゆる種族がいる。多種多様の種族がいるから、人種差別はないし、互いに争うこともない。俺たちのような人間はツノ無しと呼ばれている。昔からたまに海岸へ漂着してるので、その子孫を含め少数だが定着しているとのこと。


「ダンジョンを通ったら戻れるかもって知ったらどうなるだろう」

「それは彼らに訊いてみないとわからん」

「だよねー」

「あの転移門、ごくたまにだが違うダンジョンへ飛ばされることがある。記録も残ってる」

「今のところ、この大陸にダンジョンはこれだけみたい。だからなのかな?」

「確かなのか?」


 ユリーカが答える。


「ディザ帝国はこの大陸の北半分が領土だ。全て掌握しているが、今までそんなことは聞いたことはない」


 続いてハバも。


「南半分は我らが隅々まで調査済みだ」

「そうか、ならここのが唯一のものだろう」

「俺たちって魔法使えるかな?」

「調べてみないことにはわからないな」

「ハバ、妖術師の技とか、あれ魔法じゃないの?」

「長年の修行と秘伝の術によるものだ。オウルグ殿の魔法を見る限り全く別のものだと思う」  


 あ、翻訳魔法ね。あれすごく便利。そうか多種族だからこそか。


「ユリーカ達の皇族固有の能力も個人でしか使えないから汎用性ないもんね」

「あの転移か。ガイザ国にあの魔法はないな。ダンジョンの転移門はずっと研究されてるが、糸口さえ掴めぬ」


 将軍、南大陸へ帰ること出来るのかなと考えてしまう。彼は落ち着いてるけど。

 勉強会はお開きとなり、俺はミサと一緒に寝床に入る。


「暑いからくっつくな」

「ハヤがくっついてきてるんだよ」

「それはない」

「なら私もそれはない」


 俺たちの国、ディザ帝国、そしてガイザ国。

 国交を結ぶとか戦争になるとか、それはすぐには無いだろう。交通手段がなぁ。帝国の船ぐらいのものか。


 翌朝。またも一騒動が起きるとは知らずに、俺は眠りに落ちた。


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