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【書籍化コミカライズ化】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~  作者: たちばな立花


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番外編01-3.ブロマイド大作戦3

 ミレイナが三人の画家を集めて肖像画を描かせてから十日後のこと。

 セドリックは不機嫌な顔で三枚の肖像画を並べた。


「これが?」

「はい。これが画家の描いたお嬢様ですね。いやぁ~苦労しましたよ。何せお金になびかない相手でしたから」


 従者はそれはもう大げさな顔でため息を吐いた。

 ミレイナが肖像画を描く画家を集めると聞いてすぐ、セドリックは画家たちを買収した。

 見合い用の肖像画ができあがらなければ、見合い話など進まない。だから、とにかく買収してしまえ。そう、考えたが、金に飛びつかなかった画家が三人ほどいたようだ。


「ありとあらゆる手段を使って、この三枚をどうにか手に入れてきました」

「……そう」

「彼らは金よりも、ふだん表に出てこないお嬢様を描くことのほうが価値があるという考えだったようですね」

「へぇ……」


 怒りで手元の肖像画をぐしゃぐしゃにしてしまいそうになった。しかし、ただの絵画とはいえ、精巧に描かれたミレイナの肖像画。セドリックに傷つけることなどできない。

 しかも、三枚の肖像画はよくかけていた。

 吸い込まれてしまいそうなブルースカイの瞳も、今にも風で揺れそうな長い睫毛。少し上気した頬。

 こんな愛らしいミレイナを他の男が見たら恋をするのは間違いない。


(よかった。事前に手に入れておいて)


 こんなもので見合いなど始めたら、血の雨が降るところだった。

 もし、見合いが本気なのであれば、エモンスキー家は少しのほほんとし過ぎなのではないだろうか。


「これは僕が保管する」

「はい。執務室の奥にある隠し部屋に飾っておきますか?」

「そうだな。あそこなら誰も入らない」


 セドリックは頷いた。

 誰にも見られず、セドリックだけがいつでも見れる場所となればそこしかない。歴代の王子たちはその隠し部屋に秘匿したい物を置いていたようだ。

 セドリックも同じように、集めた情報を隠している。そこにはいくつかのミレイナとの思い出の物をしまってあった。どちからといえば、世に出回っていない情報よりも、数少ない思い出のほうが重要だ。


「ミレイナにはバレていないだろうな?」

「もちろんですよ。私を誰だと思っているんですか。お嬢様には殿下が裏で手を回したとは気づかないでしょう」


 従者は胸を張って言った。

 セドリックはもう一度三枚の肖像画に視線を落とす。

 三枚とも美しい。

 今にも声が聞こえてきそうなほどだ。


「ウォーレンを呼び出して、見合いがどうなっているのか確認しないと」


 セドリックは小さくつぶやいた。


 ◇◆◇


 顔を青くするアンジーにミレイナは何度も目をしばたたかせた。いったい何が彼女の顔をそんなにも青く染めたのだろうか。

 彼女は午前中から画家のアトリエを訪ね、肖像画を受け取りに行ったはずだ。


「アンジーったら、そんな顔でどうしたの?」

「お嬢様、申し訳ございません」


 深々と頭を下げるアンジーに、ミレイナは首を傾げた。

 謝られるようなことをされた覚えはない。


「肖像画を受け取ることができませんでした」

「まあ! 三枚とも?」

「……はい。どういうわけか三枚とも」

「どうして?」

「一人目の画家は田舎の母が危篤で急いで田舎へと戻ったとのことです」

「まあ……。お母さまが? それは大変ね」

「『描き上げられなく申し訳ない』という手紙と共に代金を隣の家に住む方から預かってまいりました」


 アンジーから手渡された手紙を見ると、ミミズが這ったような走り書きで短い謝罪が書かれていた。


「お母さまが倒れたのに、こちらを気遣ってくださるなんて真面目な方なのね」


 絵は完成させられなかったかもしれないが、時間を使ったのは事実。

 絵画一枚の代金くらい持って行ってもよかったのに。


「残念だわ。二人目も田舎に?」

「いいえ。それが、お嬢様の絵を完成させる前に天啓を受けたとかで旅に出られたそうです」

「まあ……。天啓……」


 姿を現わさない神とは時に貴族よりも強い権力を持つ。

 その神が旅に出るように言ったのであれば、ミレイナには止められないだろう。

 ミレイナの目的は自分自身の肖像画を手に入れることではない。セドリックの素晴らしい姿を残す画家を見つけることにある。


「逆によかったわ。完成品を見たあとだったら、どんなことをしてでも引き留めようとしてしまったかもしれないものね」

「そうですね」

「三人目は?」

「生き別れの妹の居場所が見つかったとかで、着の身着のまま王都を出たようです」

「まあまあまあ。それは大変ね」

「申し訳ございません」

「いいのよ。だって、わたくしが同じ立場だったらお仕事どころではないもの」


 仕事内容がその辺に転がっていそうな令嬢の肖像画ではなおのこと。

 絶世の美女となれば、また違ったのだろうけれど。

 アンジーが困ったように眉尻を落とした。


「お嬢様、いかがいたしましょうか?」

「そうね……。振り出しに戻ってしまったわ」


 画家探しから。しかし、頑張って見つかったのが三人だったのだ。今からもう一度探せと命じることは簡単だが、アンジーが苦しむことになる。


「残念だけれど、他の方法を考えてみるわね」


(お小遣いを全部発明家に投資するのはどうかしら? でも、カメラってそんなにすぐできるものなのかしらね?)


 ミレイナがセドリックと一緒にいられるのはあと二、三年。

 そのあいだにカメラができあがってくれるとは限らない。


(画家志望の子に投資するのもありね)


 今回の計画は急ぎすぎたことが原因だ。だったら、セドリックから離れるまでの長期計画にしたほうがいいのかもしれない。


「そろそろ殿下のところに行く準備をしないと。アンジー、お願いできる?」

「畏まりました。お嬢様」




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― 新着の感想 ―
「吸い込まれてしまいそうなブルースカイの瞳」 ブルースカイは「青空」という意味なので、色合いとしての青空の色を表したいのであれば、『スカイブルー』ではないでしょうか?
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