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4話

「まず確認したいんだけど、本当にそんな道具を用意出来るの?」


「そうね、まずは試してみないとわからないっていうのが本音だけど、出来る可能性は高いと思うわ」


「材料とかはどうするの?」


「そこまで大したものは使わないわ。よくある魔物の素材とか鉱石で大丈夫。ただ私じゃ用意出来ないから、材料の用意はお願いしてもいいかしら」


 なんかあれこれ考えるのも疲れてきた感覚がする。たぶんだけどエリンは私に害を加える様なことはしないだろう、と感じる。

 それにこれを天命だとするならば、それに乗るのもまた面白そうだ。


「分かった。とりあえずは必要な材料は揃えるよ。取引に関しては、その後から返事をするよ」


「ありがとうソフィア!腕によりをかけて作るわ」


「それで、必要な材料を教えて貰える?」


「オッケー、必要なものはね。ゴーレムの核、アンキロピーターの外殻、スライムジェル、エレキバットの牙、サウザンドバードの羽根を1つずつお願い。出来るだけ品質の高いやつがいいかな。それと次に私が実体化するためのマナ結晶もお願い」


「意外と多いのね……」


 しかしエリンが言っていた通り、そこまで入手に苦労するものでは無さそうだ。

 ゴーレムの核は、ゴーレムタイプの魔物から取れる素材だから結構市場に出回ったりしている。

 アンキロピーターは、外殻をとても強固な岩で覆っているアルマジロみたいな魔物だけど、これから取れる外殻も結構出回っているから問題ない。

 スライムジェルなんかは、そこらへんのスライムを倒せば手に入るし、エレキバットの牙も利用用途が多いため、定期的に採取されている。

 サウザンドバードは、1000年飛び続けても平気な程体力のあると言われている鳥なのだが、これも飛んでいるうちに自然と抜け落ちる羽根が拾われたりして売ったりされているので、お金さえあれば用意出来る。

 強いて言うならゴーレムの核の品質が保証出来ないくらいかな、これに関しては結構バラつきがあるから運に任せるしかない。


「とりあえず用意は出来そうだけど」


「ほんと?なら良かった。それじゃあそれが用意出来たら夜にマナ結晶を持って私の名前を口にしてもらえる?そうしたら実体化が出来るからさ」


「分かった。多分数日で用意できると思うから」


「ならよろしく頼むわ。それじゃあ今日はこれまでにしましょう。またねソフィア」


 そう言ってエリンは、霧となって消えてしまった。

 その後、誰にも気付かれないように自室に戻り、エリンが言っていた材料をメモして就寝する。


 そして翌日、私は早速材料を集めるため、街に出る事にした。

 お父様からは了承は得ている。流石に反対はされたが、私の性格を知っているからか、事前に報告するだけマシだと思われたようだ。最終的にはOKを出して貰えた。

 ただし、条件として侍女のイリアを同伴させることになったのだが、これに関しては問題無いので了承した。


「それでお嬢様。今回は何をしに街まで?」


「少し欲しいものがあるの。それと何人かに顔を出しに行こうかなって。ほら、私寝込んでいたでしょ?一応目を覚ましたんだし、挨拶しといた方が安心させられると思ったんだけど」


「なるほど、その欲しいものに関しての費用は大丈夫ですか?ご主人様からある程度預かってはおりますが、それを超えるようでしたら報告の上追加させて頂きますけど」


「問題ないかな。もし足りなかったら私が個人的に出すから。というか、元から私のお金で買うつもりだったんだけどね」


「まぁご主人様もお嬢様のことに関しては甘くなりがちですからね〜。それにお嬢様って何でも自分で解決しちゃうから、甘えて欲しいんじゃないんですか?お嬢様を甘やかしたい父心ってやつですよ、きっと」


 確かに、私ってあまりお父様に甘えた事ないかも。昔から何でも自分でやりたい性格で、それに関しての問題とかも自分で解決するようなタイプだった。

 でも別にお父様だけに甘えてない訳でもない、お母様にもお兄様にも甘えた事なんてそんなに無いはず…無いよね?

 そんなことを考えていると、イリアが手配した馬車が到着する。普通に走った方が早いのだけど、お父様に却下されたので、やむなく使う事になったのだ。


「私、馬車ってあんま好きじゃないんだよね」


「そんな事を言う令嬢なんてお嬢様くらいですよ。ほら、文句言わず乗ってください」


 イリアに急かされる形で乗った馬車で、しばらく揺られながら移動し、街へと着いた。

 街の名前はスタンブール。アルバート領の中で1番大きな街であり、王都と繋がる交易路があるため、朝から昼に掛けてはとても盛んな空気を感じさせるくらいには賑わっている。

 特にアルバート領は、魔物の生息地が近隣にあったりするため、魔物目当てに冒険者や商人がよく訪れるのだ。

 今回の目的の物も、ここで入手出来るだろうと踏んだからだ。


「さて、街に着いたから、早速目当てのもの探しに行くわ」


「私でも問題無ければ購入してきますが?」


「イリアには別の買い物頼みたいんだよね。この街だったらしばらく別行動でも大丈夫でしょ?」


「まぁお嬢様の実力なら私なんて不要でしょうけど……、ご主人様から頼まれている手前、あまり別行動するのもどうかと」


「必要な事だから、そこは目をつぶってくれると助かるわ。イリアには、この街で今1番人気のあるお菓子かスイーツを買ってきて欲しいのよ。出来ればプレゼント用に包んでもらえる?数は2人分でお願い。どれくらい掛かりそう?」


 私の要望に、イリアが考え込む動作をする。おそらく、今流行りのお菓子などが何か、それがどこで買えるのかを考えているのだろう。2分ほど考え込んだ後、イリアが想定した時間を教えてくれる。


「そうですね、2時間ほど頂けないでしょうか?一応お相手のお名前を聞いてもいいでしょうか?」


「別段特別な相手とかでは無いから気楽でいいよ。あくまで私たち公爵家の体裁だけ保てればいいから。まぁ、イリアも知ってる人達だよ。カルラとアランに会いに行くかな」


「カルラ様とアラン様ですか。承知しました。アラン様には別で何か用意しときますね。おそらく彼は甘いものより実用性あるものの方が喜ばれそうです」


「そうだね、けどきっとアランなら妹にデザートをあげるだろうから一応ね。それじゃあ2時間後に中央の噴水広場で合流にしようか」


 この街でよく待ち合わせに使われるシンボルを合流場所として、私とイリアは別れて行動を始めた。滞り無くエリンから指定された素材を集めることが出来た。ただしゴーレムの核の品質だけが少し不安だけど。私は合流場所の噴水広場のベンチに座りながらゴーレムの核を手に取って眺める。


「一応見た中で1番良いものを買ってきたけど……」


 ある程度魔物を討伐する経験があるため、素材の品質については目利きが効く方ではあるけど、本職やそれを生業にしている冒険者には劣ってしまう。

 鑑定の魔法が使えれば楽なんだけど、生憎私にその才能は無い。あくまで視覚から得られる情報までしか品質の善し悪しを判断出来ない。

 まぁ、これに関してはエリンに見せて大丈夫かどうかを判断してもらった方が早いかも。

 そう判断してゴーレムの核を仕舞ったタイミングでイリアが合流する。


「お嬢様、お待たせ致しました。要望のお品物を確保出来ました」


「ありがとうイリア。それじゃあ、まずはカルラの所に行こうか」


 カルラは、私の友達であり仕事仲間だ。カルラは武器職人の父を持つ娘であり、父親に支持して武器職人として働いている。才能もあったらしく、意外と早い段階で自分の作った武器を店に出せるくらいの実力になった。彼女とは領内で出現した魔物退治の際に、武器を提供してもらったことをきっかけに知り合った。私はとある事情で市場で出回ってるような普通の武器を壊しやすい。そのため、私はある程度頑丈な武器を必要としているのだが、彼女にはそういったものをオーダーメイドで作成して貰っているのだ。

 彼女の作る武器はとても手に馴染む。そして頑丈である程度長持ちもする。だから贔屓にしているうちに友人関係を築けた訳だ。

 そんな彼女は、今の時間は休憩がてら店番をしているはずだ。噴水広場からある程度歩いた所に彼女の工房があり、私は入口の扉を開けた。

 予想通り店番をしていた彼女は、扉を開けた時になるベルの音を聞いて入店の挨拶をする。


「いらっしゃーい。ってソフィアじゃん!体調不良で寝込んだって聞いてたけど大丈夫だったの!?」


 開口一番店中に響き渡るような音量で話す彼女に圧倒される。あぁ、このうるさい感じ久しぶりな感じがするや。


「昨日目が覚めたの。心配掛けたようでごめんね。この通り翌日には動けるくらいにはなっているから」


「あはは、ソフィアらしいね。でもその様子だとまだ復帰は出来なさそうだね」


「そうなんだよね。お父様もお母様もまだ休んでなさいって言うから、こうしてイリアも連れて街に来たの。あ、カルラに差し入れ持ってきたの。イリアお願い」


 イリアが用意した差し入れをカルラに渡す。中身を見たカルラが目を輝かせる。やはりカルラも女の子だから、甘いものに目がない。


「これ今流行ってるスイーツじゃん!ありがとうソフィア!わぁ、嬉しいな」


「喜んでもらえて何よりだよ。それで少し話したいのだけど時間を貰える?」


「あ、いいよ。ちょっとお父さんに言ってくるね。お父さーん!」

 

 またもや大きな声を響かせながら父親を呼びにいった彼女を待つこと数分、恐らく裏の工房で仕事をしていたカルラの父親が姿を現した。


「ソフィア様ようこそおいでくださいました。体調を崩したとお聞きしていましたが大丈夫でしたか?」


「体調に関しては大丈夫。ごめんなさい、忙しい事は承知なのだけど、少しカルラと話をしたいのだけど良い?」


「ソフィア様の頼みを断りはしませんよ。ちょうど小休止を入れる所でしたので問題ありません。ゆっくりしていってください。娘も喜びます」


「それじゃあ話す場所はどうする?あまり聞かれたくない話なら奥の部屋に案内するけど」


「いえ、特にそういう話ではないから大丈夫。そうだね、それならカルラの部屋でいい?」


「オッケー、じゃあ私の部屋に行こうか」


 イリアには、店が忙しくなりそうなら手伝うようにと待機の指示をする。

 そうして私はカルラの部屋に案内され、部屋に入室した。









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