プロローグ
ヴァリアント王国。そこには天才魔法使いと呼ばれる少女がいた。誕生から魔法の才能が決まるとされる世界で類い稀なる才能を期待された、とある辺境の貴族の令嬢。それが私ことエリン・ダート・ガルアインだ。
幼少期から魔法に関する知識を詰め込まれた私は、16歳になる頃には周辺国家すら脅かすほどの魔法使いになってしまいました。
私の存在を存分に政略に利用した国王は、家族を人質に取り勅命で私を戦場へと送り、そして周辺国家を支配し始めます。
戦いが嫌いな私には、戦場で魔法を使い、人を傷付ける行為が酷くストレスになり、やがて生まれつき患っていた持病を悪化させてしまった。
それが合図だったと思う。国王から最後の戦いにすると言われ送られた先は、敵国の最前線。そこは王国が唯一支配する事が出来なかった国だった。
ヴァリアント王国と比べれば小国だが、その国の兵士は皆が強かった。具体的に何がかは分からないが、私が戦った中で、魔法使いへの対策や練度が非常に高かったのだ
そんな敵が数多く存在する死地に私を送るということは、国王は私を見限るのだろう。仮に私がここを制圧しても国王にとって不都合などない。私が死んでも、その事実を何かしらの政治の道具として利用するだけだ。
まったく最悪な国に生まれてしまったなと思う。
今現在私は、敵の兵士達を相手に魔法を繰り広げて応戦しているのだが、もはや戦う気力なんて残っていない。
なにせ、思い返してみても、私は私のためにこの魔法の才能を使うことが出来ない人生だった。家族を人質に取られ、戦うことを強いられる。
しかも持病を抱えながらだ。ふざけるなとも言いたくなる。
それに今相手しているやつらもだ。私が今まで戦ってきた奴らは魔法使いには魔法使いといった術を術で制すという戦い方がセオリーだった。
なのに、なぜ今対峙している敵は白兵戦を仕掛けてくるのだろうか。さすがに白兵戦に対する備えなんて盲点過ぎてしていない。最悪だ。
しかも後方には普通に魔法使いもいるので、魔法攻撃に対応もしないといけない。
ほらさっそく飛んできた。
「シールド!!もうさっきから鬱陶しい、アイスニードル!」
相手の魔法を防壁で防ぎながら、同時に迫ってきた兵士を牽制する。そんなことをもう三時間も続けている。おまけに持病のせいで何度も咳き込むため、魔法が詠唱できないことも増えてきた。
もう限界である。私はここ死ぬんだ・・・と死を覚悟した瞬間に、頭の中で次にやることを決めた。
相手の魔法使いが放った魔法フレイムランス、それが直撃するまでの間に何とか魔法を構築する。
そしてフレイムランスを防御することなく、それに貫かれた瞬間に私は魔法を発動した。
その魔法とは・・・、転生魔法。
「どうか来世では今よりマシな人生になりますように。あと丈夫な体であってほしいな。そして、お母さんお父さん、ルチア、テオ。みんなごめんね」
最期に家族へ先に逝く謝罪を残し、私は今世を終えた。
ちょうど私が17歳になる日、最後に感じたのは心臓が灼きつく感覚だった。