表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/66

第十七話

「ん~‼美味しい‼」


 スフレパンケーキの美味しさに頬が緩み、言葉が自然と口から出てしまう。

 私だけでなく、クララ、マルグリット様、ナタリーさんも同じで、三人共美味しさに頬を緩ませている。


「やっぱり、オバちゃんたち良い腕しているわ」

「ここまで美味しいパンケーキは、私も初めてです」

「ほんとに美味しい。…………これ、私でも作れるかな」


 ナタリーさんがスフレパンケーキを見ながら考え込んでいるので、一体どうしたのかと聞いてみる。


「ナタリーさん?」

「あ、え~と。……弟や妹にも、これを食べさせてあげたいなと思って」


 ナタリーさんの弟妹(ていまい)に対する思いに、私たち三人の心がジーンとする。

 私たちは、ナタリーさんからコーベット男爵家や男爵領について、色々と話を聞いている。

 ナタリーさんのご実家があるコーベット男爵領は、非常に自然が豊かな領地。畜産をメインにしていて、中でも酪農に力を入れている。

 そんなコーベット男爵領で作られている牛乳やチーズなどの畜産物は、非常に美味なものばかり。だけど、その事を知っているのは、男爵領を訪れた者か旅の商人くらい。

 何故私がそれを知っているのかというと、実際に口にした事が何度もあるから。

 私が食の発展に取り掛かろうとした時、こだわったのはやっぱり品質。公爵家のお金と権力を上手く使って、アイオリス王国内の様々な領地から、色々な食材を取り寄せてもらった。

 その時にコーベット男爵領のものを気に入って、最終選考まで残したのだけれど、結局諦めたという経緯がある。

 諦めざるを得なかった最大の理由は、輸送に掛かる時間。

 コーベット男爵領は、王都から結構な距離がある。だから、王都に輸送するのに時間がかかるし、その間に鮮度が落ちていく。その事がどうしてもネックとなってしまい、選考から外さざるを得なかった。

 この事をナタリーさんに話した時、驚いた後に泣かれてしまった。あの時は焦ったし、ナタリーさんから嬉しさから泣いてしまったと教えてもらえるまで、どうしたものかとオロオロとしていた。


「作り方なら私もクララも知ってるから、今度の休みにナタリーさんの部屋に遊びにいった時に教えてあげる」


 私がそう言うと、クララも「それいいわね」と笑みを浮かべる。 


「その時は、私もご一緒してもよろしいですか?」

「「勿論‼」」


 楽しみな様子で言うマルグリット様に、私とクララは当然だと答える。


「イザベラ様もマルグリット様も、ご予定があるのでは……」


 ナタリーさんが本当にいいのですか?と聞いてきたので、私たちは友達なのだから遠慮しなくていいと伝える。


「友達の部屋に遊びに行くのも、私にとっては立派な予定よ」

「その通り!!」


 私とクララの言葉に、マルグリット様も微笑みながら続く。


「私もお二人と同じよ。……それにしても、お友達の部屋に遊びに行くなんていつぶりかしら。とても楽しみだわ」

「……分かりました。精一杯のおもてなしをさせていただきます‼」


 鼻息を荒くしながら、両拳を握って意気込むナタリーさん。

 そんなナタリーさんが可愛らしくて、私たち三人はニコニコと微笑んでしまう。

 だけど、そんな和やかで微笑ましい空間が、一人の人物によってぶち壊されてしまった。


「あら、そこにいらっしゃるのはお姉さまではなくて?」


 スフレパンケーキを楽しむ私たちに話しかけてきたのは、今魔法学院を騒がせている中心人物の一人であり、マルグリット様の一つ下の妹さんであるローラ・ベルナールだった。

ブックマーク、評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ