第十五話
過激な考えをお持ちの先生の授業が終わり、その後も真面目に座学を受け続け、昼食をとりに食堂へと向かう。
今日も朝一番に食堂へ顔を見せに行って、食堂のオバちゃんたちから、今日のおすすめの昼食を聞いておいた。そこで得た情報は、クララだけでなく、最近仲良くなったマルグリット様やナタリーさんにも共有している。
「楽しみね」
「ええ、本当に楽しみ」
私たち四人はこの時間を楽しみにして、お昼までの授業を真面目に受けてきたといっても過言ではない。私とクララはスキップをしたくなるのを必死に抑えながら、食堂へと足を進めていく。
私たちの通う魔法学院の食堂は、生徒の親である貴族たちの寄付金によって建てられ、維持管理がされている二階建ての建物だ。
長い歴史の中で何度か建て替えがあり、その度に莫大なお金をかけて、設備をその当時の最新のものに変えてきた。
そして、私たちが入学する三年前にも建て替えがあった。お父様たちから聞いた話によると、外観や内装などの全てが、建て替える前よりもグレードアップしているとのこと。
そんな食堂で問題となっているのが、貴族の子息たちが好き勝手やっているという事。
魔法学院の図書館で学院の歴史を調べてみた所、魔法学院設立当初の食堂は一階のみであったと記されていた。
それというのも、当時の入学生は基本的に貴族のみであり、それなりの生徒数しかいなかったからだ。
だけれど、ある時代の王が魔法学院に関する一つの改革を行った。
それが、平民の入学。
当然の事ながら、特権階級としてのプライドが高く、魔法使い至上主義の貴族たちは反対した。けれど、そんな貴族たちは自分たちも認識出来ていなかった痛い所を突かれた事で、黙らざるを得なくなった。
平民であろうが、属性魔法への適性が高く、魔力量が豊富な者には入学の許可を与えると。
そう、魔法使い至上主義の連中は気づいてなかったし、想定すらしていなかった。
属性魔法は自分たち尊き血の者たちしか使えないという考えから、自分たちの思想に平民も含まれてしまうという事を。
反対していた貴族たちは反論する事が出来ず、立ち直る前にと素早く動いた王によって、その翌年から平民も入学が許されるようになった。
だけど、魔法使い至上主義の貴族たちも、そのまま黙って引き下がったわけではなかった。
それが、今や学院の慣例のようになってしまっている、使用出来る設備の制限。
魔法使い至上主義の貴族たちは、平民の入学を許す代わりだとばかりに、学院内に貴族専用の設備を幾つか導入させた。
その貴族専用の設備は食堂にも導入されているが、公爵家の私から見てもやり過ぎなくらい豪華にしているので、好きにはなれずそちらを利用する事はない。
平民の生徒たちが不満を漏らしているのは、二階にもう一つ貴族専用の豪華な食堂があり、そこで出されている料理についてだ。
「新たな食堂を作るのはいいけど、食材に差をつけるなんて真似をしないでほしかったわ」
「そうよね~。流石にあれはやり過ぎていて、品がないわ」
平民の生徒たちも、貴族用の食堂がもう一つあるくらいなら、ここまでの不満を持つ事なく我慢が出来たと思う。
でも魔法使い至上主義の貴族たちは、自分たちのプライドを優先し、貴族専用の食堂を普通とはかけ離れたものにしてしまった。
まず、三年前に建て替えをされた際に、貴族専用の食堂の設備を最新式に入れ替えた。
そして、料理に使われる食材の質を最高品質のものにしたり、貴族や豪商など裕福な家庭でしか口に出来ない珍しい食材を使用した料理を、毎日のように用意させている。
極めつけは、その料理の数々を作ってるのが、王都中からかき集められた優秀な腕を持つ一流料理人たち。
これらのやり過ぎた内容に、お父様やお母様だけでなく、お兄様たちも呆れてしまっていた。
魔法使い至上主義の貴族たちは、貴族の最上位たる公爵家の当主や夫人が呆れてしまうほどに、自分たちがやり過ぎている事に気付いてないのだ。
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