表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/66

第十二話

 公爵家の屋敷で転生者三人による協力関係が結ばれ、俺だけが分からないままに色々な何かが決まった日から、一ヶ月ほどの時が経った。

 あの日から週に一日か二日くらいのペースで、公爵家の屋敷にお邪魔しに行っている。

 その時には、必ず公爵やイザベラ嬢のお兄さん方が屋敷におり、鋭い眼光で俺の行動に目を光らせている。

 イザベラ嬢やクララ嬢とは、あれからも仲良くさせてもらっている。

 まあ仲良くさせてもらっているといっても、基本的には女性陣二人が楽しくお喋りしているのをただ傍で聞きながら、適度に相槌(あいづち)を打ったりしているだけなんだがな。

 お喋りの内容としては、美味しいスイーツのお店や化粧品に関してが六割、魔法に関しての様々な議論についてが二割。そして、最後の二割が魔法学院での例の件とやらに関してだ。

 イザベラ嬢とクララ嬢は、アルベルト殿下や側近たちの動向について情報収集はしているものの、関わる事すらも嫌みたいで近づかないようにしているそうだ。

 だが、ナタリー嬢やマルグリット嬢の事は大層気に入ったようで、俺にあれやこれやと彼女たちの人となりを教えてくれる。

 二人から語られたナタリー嬢とマルグリット嬢のイメージは、乙女ゲームの悪役令嬢とヒロインのイメージとは重ならなかった。

 公爵令嬢と男爵令嬢という生まれについては合致するのだが、人格や性格についての部分においては、特にマルグリット嬢の方が悪役令嬢というポジションから大きく違っている。

 恐らく原因となっているのは、マルグリット嬢の妹である、ローラという少女の存在が大きいのだろう。

 (むし)ろ話を聞けば聞くほど、妹であるローラという少女の方が、悪役令嬢に相応しい振る舞いをしている。


「四百九十九、五百‼……ふぅ、朝の日課終わりと。……それにしても、二人とも陽の者だったとは。この世界が乙女ゲームの世界じゃないかと言われても、直ぐに理解出来るわけないよな」


 朝の鍛錬である木剣の素振り五百回を終えて、先日のお屋敷訪問時の事を思い出す。

 俺は屋敷にお邪魔して早々に、この世界が乙女ゲームではないかと相談したのだが、二人はポカンとした顔をして揃って首を傾げた。

 そんな二人から語られたのは、灰色の青春を送ってきた俺の心を深く抉る青春物語。

 イザベラ嬢の生前は、大好きな陸上に青春を捧げ、その後は陸上の楽しさを伝えるために体育教師となった女性。

 社交性が高く、小・中・高・大と友達も数多くいて、休日もよく友達と遊んだりしていたそうだ。そのため、小説や漫画、それにゲームなどの娯楽にあまり触れてこなかったとのこと。

 そして、クララ嬢の生前は水泳に青春を捧げた少女。

 クララ嬢の生前も、社交性が高く小・中・高・大と友達が数多くいて、休日は陸上が大好きな親友の少女とよく遊びに出ていた。その事から、娯楽に触れる機会は少なかったそうだ。

 一時期精神的に悩んでいた時期があったらしく、その時に出会ったカウンセラーの先生に救われた事で、カウンセラーという職業に憧れた。

 そして、自分と同じように悩める子供たちを助けてあげるためにカウンセラーとなり、偶然にも親友と同じ学校の養護教諭となった。

 ここまで聞けば、俺にも二人の関係性が理解出来た。

 驚くべき事に、イザベラ嬢とクララ嬢は前世で親友だった。だから、公爵令嬢と男爵令嬢という身分差が大きいにも関わらず、まるで昔からの親友であるかのように仲が良かったのだ。

ブックマーク、評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ