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公爵令嬢②〜教育〜

「リイナ、これまで甘やかしていたけれど、聖女様になったらそうはいかなくなる」

「リイナには王妃なんてとても無理だと思って今まで自由にさせてきたわ。でも聖女様になられたのですから、これまでのようにはいかないわ。貴女は公爵家の令嬢。王家が放っておかないわ。いいことリイナ、貴女は王妃様になるのよ」

 今まで只管甘やかし、包み込むように優しかった公爵家での日々は、この日終わりを告げた。


 リイナには厳しい王妃教育が施された。

リイナは誰よりも優れていなければならなかった。

しかし、リイナは六歳になるまでろくな教育をされてこなかった。

最低限の年齢に見合う貴族のマナーすら危うく、未だ文字すら読めなかった。


「今までパルテド公爵家は令嬢に何を教えていたのかしら……」

「あんなこともできない高位貴族の令嬢は初めて見ましたわ……」

 家庭教師たちが話しているのを聞いてしまったリイナは、幼いながらも遅れを取り戻すために学ぼうと必死に努力した。



「ミシェル様はとても優秀であらされるそうですわ。リイナが聖女に選ばれなかったら、未来の王妃様はミシェル様になっていましたわ」

「ミシェル嬢に引けを取ってはいけないよリイナ。お父様もお母様も、リイナを信じているよ」

 リイナは、すでに才女の頭角を表していたホードル公爵家の長女、ミシェルと比べられるようになった。

ただ並ぶだけでは許されない。優秀なミシェルを超えるほどの優秀さが求められた。


 今までぬるま湯に浸かるような生活をしていたリイナにとって、その急な環境の変化はまさしく地獄のようだった。

何より、争いを好まぬリイナに、両親は「誰にも負けることは許さない」と命令したのだ。


「リイナ様、お姉様もお兄様も、貴女様のお歳では隣国の言葉もお話しできたのですよ。王妃様になられるリイナ様は、お姉様たちを凌駕するほど努力をなさらければなりません」

 乳母は姉と兄と比べて話を聞かせた。

競争を好まぬリイナに、「誰よりも高みへ昇ること」を強要した。


 リイナは温かいひだまりの中で、ひたすら平和を祈り願い続けていることが幸せだった。

けれど、リイナが聖女と認定されてからは、寝る暇もないほどの勉強漬けの毎日が続いた。

 自分よりも優秀なものを蹴落とし、リイナの実力で敵わないのなら実家が権力を使いその者を陥れた。


 リイナは誰かを陥れることも、蹴落とすこともできるような人間ではなかった。

恨んだり、憎んだりするような感情も持ち合わせていなかった。

けれど周りにいる人々は次第にリイナを忌避するようになっていた。

リイナを恨み、憎んでいる者もいた。

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