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全てを許した聖女様  作者: めるめる琉


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兵士③

 兵士たちを乗せた馬車がファーロンを経つと、また雨は降り出した。

行きとは違い、雨は馬車を避けてくれることはせず、大粒の雨に叩きつけられながらの帰路は、行きの五倍以上の時間を要した。

何せ、道の先が全く見えないのである。馬も怯え歩みを止めてしまうほどの雨だった。

けれど、男たちは王都へ急いだ。

「早く王都に戻ろう。戻って、あの娘こそが真の聖女だと訴えなければならない」

 それこそが、男たちに与えられた使命だと彼らは感じていた。



 長い時間をかけ、ようやく王都に辿り着いた。

馬車を駐めたら真っ先にギルドに報告に行こうと男たちは話していた。


「ん……なんだ……?」

 しかし、王都に着くと同時に何故か目が霞むようになった。

「ゴホッ」

「三人同時に具合が悪くなるなんてな……雨に濡れて、風邪でも引いたか……」

 しかし、男たちの体調は急激に悪化した。息苦しさは増し、すぐに歩くことすらままならなくなった。

「なん、で……、ゴホッ……はやく、ギルドに……」

 そうして男たちは、任務達成の報告をする前に、地に倒れることになった。



 王都では、病が蔓延していた。

倒れた男たちもすぐに王都の外れの療養所へと運ばれた。療養所といってもそこは名ばかりで、簡易的に作られた小屋に、乱雑にベットが並べられただけの、とても療養所とは言えない場所であった。

病を発症する人数は多く、治療も追いつかず、ただ放置されているのが見て取れる。


 横たわる人々の多くは、溺れるような息苦しさで眠ることもできず、苦しげに呻いていおり、時折痛みが走るのか激痛に耐えるような悲鳴も聞こえていた。


 まるで、地獄のようだと男は感じた。

「な、んで……こんなことに……ゴホッ……俺たちがいない間に、何があったんだ……?」

 あたりを見渡すと、隣に横たわる男と目があった。

「はは……まだ知らん奴がいるとは、ねぇゴホッ……」

 ガラガラに掠れた声の男は、虚な眼で男を見返す。

「これはねぇ……、天罰なんですよ」

 そうして男は語り出した。


 真の聖女リイナ様を追放した天罰が、今おこっているんです。ここに運ばれてくるものは皆、リイナ様が広場で鞭打たれるのを見ていた人たちなんですよ。市中引き回しだけ見てました? 鞭打たれているところも見ました? 市中引き回しだけを見た奴らは助かりますよ。多少苦しい思いはするけど、それだけです。誰も死んでません。でも、鞭打たれる所を見てた奴らは全員駄目なんですよ。最後に背中に激痛が疾るんです。しかもきっちり十回。それで絶命するんです。死のカウントダウンですよ。自分が死ぬとわかって痛みに耐えるのって、相当辛いですよね。でも仕方ないんです。歓声あげて、アレを見てたんですから。


 掠れた声で、息を切らせながら語った男は、苦しそうに痙攣する顔でヘラっとした歪な笑顔を浮かべる。


 そういう俺も、もう背中に痛みが走って五回目ですよ。五回目まではね、まだ耐えられる。でも六回目からはダメだ。俺ももう次は耐えられない。みんな気が狂うんですよ。痛みに耐えられなくて。最後まで正気でいられた奴なんていない。ただアレを見て楽しんでいた人間ほど、苦しむ時間が長い。だから残ってるのは男ばかり。

アレを見ていた女子供は、ずいぶん前にみんな死んじまった。俺の妻も、娘も、容赦なく、みんな死んじまったんだ。


 それを聞いた俺たちは悟った。

これは、天罰なのだと。


あの娘が聖女であることに気付き、彼女を辺境まで護送したとしても、天罰からは逃れられない。


あの広場であの娘を下卑た目で見て、嘲笑し、楽しんだ。だから男たちは許されない。


そう、許されることはなかった。


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