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始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
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重なり

「首尾よく倒せたみたいだね。ま、あのくらいは瞬殺じゃないと」

アルが魔導書から出てきた。

「ねぇ、魔物に気付いてたなら早く言って欲しかったんだけど」

「ゴメンゴメン。いや、どんくらい戦えるか知りたかったからさ」

「だからってこれはーー」

「別に、楽勝な相手だっただろ?」

「それは…‥そうだけど。……でも、今回はハルカもいたし!」

「悪かったって。そこまでは考えてなかったよ。……まぁ、ハルカにも最低限の自衛手段くらいあった方がいいか……。うぅん……」

アルはしばらく考え込んで。

「……あぁ、アレがあったか。レーブ、始書の630ページの魔法陣使ってくれる?」

「うん、いいけど……。召の章? 召喚魔術か。……《展開:召喚陣》」

 召喚魔術は魔力を込めるだけで、設定などは必要ない。

 魔法陣が展開され、その光が段々と集束し、 やがて一つのものを形作った。


 それは、黒光りする鉄の塊だった。よくわからない部品がくっ付いていて、筒が伸びている。

 無骨な印象を受けるが、しかし、同時にどこか美しさというのも感じられる。

 僕はそれを手に取る。金属の冷たさと、ずっしりとした重みが手に伝わってきた。

「なにこれ?」

「銃……?」

ハルカが何かを呟いた。

「うん、そう。回転式拳銃(リボルバー)。確か、S&W M29とか言ったかな。ミリタリー系はあんま詳しくないけど」

「でも、何でこれがこの世界に……?」

「さぁ? それは俺にも分からないなぁ。ま、それあげるよ」

アルベールがこちらに目配せしてきたので、何となく意思を察して、回転式拳銃(リボルバー)をハルカに差し出す。

「いいの?」

 ハルカが遠慮気味に聞いてくる。

「良いんじゃない? アルが良いって言ってるんだから」

「そう? ……ありがとう。ぅわ、おも……」

 ハルカは、回転式拳銃(リボルバー)をおずおずと受け取った。

「えっと、これどうやって持ち運べば……。えぇと、ホルスター?みたいなのはない?と、いうか、弾はないの?」

「残念ながら、ホルスターはない。ネルクについたら材料買って作るから少し我慢して。あと、弾もない、というかいらない。代わりに魔石が要るけど」


 買うのも僕だし作るのも僕だけどな! アルベールは実体ないし。


「え、魔石? 銃じゃないの?」

「銃だよ。見た目はね。元々はモノホンの銃だったんだけど、俺が色々弄ったからさ。効果も同じようなもんだけど、原理が違う。実際のところは魔導具だな。魔術で創った弾丸を撃つっていう。

 名付けるなら、《S&W M29 type:magic》ってとこか。

 使い方もあまり変わらないな。小さな魔石をそこーー薬室(チャンバー)に入れて、撃鉄を起こして、引き金を引くだけ。簡単でしょ?」

「えぇ、まぁ」

「ま、使ってれば慣れてくるさ。

 それはそうと、解体しなくていいの? んと……、ウォルフを」

 ああ、忘れてた。


 荷物を漁ってナイフを取り出す。

 ナイフでウォルフの心臓の辺りを切り裂く。

 辺りに血が飛び散った。

「うわ……」

 そして、手を突っ込んで中をまさぐる。

「ええ……?」

 ハルカの引いたような声が後ろから聞こえて来たが、無視する。

 何か硬いものが手に当たった。

「あった」

 それを掴み、手を引き抜く。

「《流水(ウォーター)》」

 魔導書で水を出して、手とウォルフの体内から取り出したものを洗う。

 僕の手には、紫に光る小さな石があった。

 魔石だ。

「それが魔石?」

「そう。はい、あげる」

 リボルバーに魔石が必要らしいので、ハルカに手渡す。

「ありがとう……って、これ血だらけだったやつじゃない!」

「おっと」

 投げ返された。

「洗ったから大丈夫なのに……」

 しょんぼりしたふりをしてみる。

「いや、水洗いじゃあね……」

 アルが余計な事をボソッと言った。

 た、確かに……。

「ご、ごめん。やっぱりもらうよ、ほら」

 ハルカが手を差し出して来たので、にっこり笑って魔石を再び手渡す。

「はい、あげる」

「ありがとう。……まさか、さっきの演技だったの!?」

「ごめんごめん」

「全くレーブは……」


「をい。あんまりイチャコラを見せつけんじゃない」

 アルが真顔でそう言って来た。

 イチャコラって……。

「い、いちゃこらしてない!」

 ハルカが真っ赤な顔で必死に否定する。

 少しショックだ。何もそんな必死にならなくても……。

 ハルカは僕のことがあまり好きではないらしい。


「本当かぁ?」

「ほ、ほんとだし!」

 アルがハルカをからかって遊んでいる。仲がいいな。


「ふぅ……。《火球(ファイアボール)》」


 ボォンッ


「うおっ」

「きゃっ」

 

 ウォルフの死体に火をつけて燃やす。

 放っておくとアンデットになってしまうからだ。本当は毛皮なども売れるのだが……。

 今回は時間がないので諦める。


「出発するよ」

「お、おう」

「うん」


次回の更新は6月16日です。


銃についてですが、一応調べて書きはしたのですが、何か間違ってるところがあったら教えて下さい。

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