朝
サブタイ思いつかなかったので、こんなのになってしまいました。
目を開けると、眩しい光が目を刺した。
「おう、起きたか」
隣にはアルベールが座っていた。
「おはよう。……ずっと起きてたの?」
「まあな。この体になってから、眠らなくなったし」
アルベールと話しながら、朝食の準備をする。今日は黒パンと干し肉だ。少し簡素すぎるが、旅の食事なんてそんなもんだ。
朝食の準備も終わったので、ハルカを起こす。
「あの〜、朝ですよ」
身体をゆするのも少し気が引けたので、控えめに呼びかける。
「うぅん……」
起きない。
少し声が小さすぎたか?
「……おぁよう」
いや、起きたようだ。身体を起こして挨拶するが、寝起きで呂律が回っていない。
「おはよう。……あぁ、朝はこれです」
朝食を手渡すと、目を擦りながら受け取った。
そして、ぼんやりとした様子で干し肉を一口。
「……しょっぱっ!」
全く同感だ。保存食というものは味を全く考慮していない。
ハルカはそのしょっぱさで、目が覚めたらしく。
「……あっ。ごめんなさい。用意の手伝いとかしなくて」
「いや、大丈夫ですよ。夜は大変だったでしょうし。それに、用意って言うほどのものでも無いですしね。ああ、朝食食べたら出発するんで」
「えっと、そこの人は食べなくていいんですか?」
アルの方を向いて言った。
そういえば、アルは食事するのだろうか。
「あぁ、もう食べたんで」
嘘をついたので、どうやら食事はしないらしい。
「あ、あと俺はアルベール。こいつの弟だ。アルって呼んでくれて良いぞ」
え?
「ちょ、ちょっと」
アルを小屋の隅に引っ張って行く。
「なに嘘こいてんだよ」
「いや、だってしょうがないじゃん。俺が千年前の人物だって信じると思う?普通信じないだろ。だから、こうするのが妥当なんだ。あと、俺が弟だからな?間違えるなよ」
なるほど。一応意味はあるのか。
それより、何故に僕が弟?
「あ、やっぱり双子だったのね」
後ろからそんな呟きが聞こえてきた。
「なんで?」
「だって、顔がそっくりだもの」
そう言われて僕らは顔を見合わす。
「「あ」」
何処かで見た顔だと思ったら。
毎日鏡で見ている自分の顔と、アルの顔は瓜二つだった。
そんな僕らをハルカは訝しげに見ている。
マズイ。
「そ、そうそう。僕ら双子なんだ!」
そう思ったので、必死に誤魔化す。
「そうよね。そこまで似ていたら、双子じゃない方がおかしいものね」
なんとか誤魔化せたか?
そんな話をしているうちに、ハルカは朝食を食べ終えたようだ。
「よし、じゃあ出発しましょうか」
全員で小屋の外に出る。そして。
「《展開:土崩・威力:1・射程8㎥・発動》」
小屋を壊して、更地に戻した。
「うん、始書を使いこなしているようでなにより。……けど、設定長くない?」
「え?教わった通りにやってるんだけど」
「声に出す必要も無いはずなんだけど。確かそういう風に作ったはずなんだけどなぁ……。壊れたか?」
「声に出す必要ないって、翻訳の時声に出してなかったか?」
「あぁ、アレは俺が持ち主、というか魔力供給源じゃなかったからだ。始書は、持ち主の思考をある程度トレースするから、頭に思い浮かべるだけで設定とか色々出来るようになっているんだ。けど、俺は持ち主じゃないから、音声入力で設定したんだ」
「でも、現に僕は声に出さないと使えないんだけど」
「多分壊れてる。ちょっと見せて」
そう言われたので、アルに始書を手渡した。
「「あ」」
落ちた。手をすり抜けて。
アルは実体ないの忘れてた。透けてるとか、そういうわけじゃないから忘れるんだよな……。
「えっ」
ハルカの驚くような声が聞こえた。今のを見てしまったのだろうか。後ろを向くと、彼女はしきりに眼をこすっていた。目の錯覚だと思ったのだろうか。
「えっと……。今、本が手をすり抜けてたような気がするんだけど」
「目の錯覚じゃない?」
これで誤魔化せるか?
「いや、絶対すり抜けたよね。どういう事?」
無理だった。
「うんと……」
アルのほうを見る。肩をすくめて、やれやれという感じだ。
「……まぁ、歩きながら話しますよ」
「あと、なんで私には敬語なの? 貴方って何歳?」
「え? 15歳」
「私も15歳。同い年だから、タメ口でいいじゃない」
「あ、うんと、はい。分かり、った」
「うん。それでよし」
ハルカは、そう言って微笑んだ。
アルが微笑ましそうにこちらを見ている。ウザい。
「くしゅっ」
ハルカがくしゃみをする。
寒いのだろうか。
「上に着るものいる?」
「あるなら借りても良い?」
ローブを脱いで渡す。
下の服も、分厚いので別に寒くはない。
「いいの?」
「別に寒くないから」
ローブの下に着ている服を指して言う。
「そう……。ありがとう」
納得した様子で、ローブを羽織った。
「じゃあ、行こうか」
三人で街道を歩き出した。
次回の更新は6月12日です。