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始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
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旅立ち

 荷物の最終確認も終わり、とうとう出立の時が来た。

「持ち物は持ったか? 忘れ物はないか?……風邪ひくなよ、しっかり歯磨きしろよ、危ないとこには近づくなよ、あと……」

「レオ兄さん、大丈夫だって。じゃあ、行ってきます。ジーク兄さんも、行ってきます」

「……頑張れよ」

「はい!」

 

 家の門を出て、街の出口へ向かう。

 ……この街並みを次に見るのも、当分後になるだろう。始祖が造り上げた街並みを、しっかりと目に焼き付けておく。

 

 頭に何かが落ちてきた。空を見上げる。水滴が顔に当たった。

 どうやら雨が降ってきたらしい。僕は、雨に濡れないようにローブのフードを被る。

 人々が慌ただしく動き始めた。


 いつしか、街を歩く人は少なくなっていた。

 そうこうしているうちに、街の門に着いた。

 門番に軽く会釈して、生まれ育ったキャメロンの街を出た。

 

「さて」

 この後はどうするか。

 一応、段取りは決めてある。キャメロンを出て、西に2日ほど行ったところにある街、ネルクに行くのだ。

 というか、キャメロンは大陸の東端にあるので、ここより東には海しかない。

 つまり、西に行くしかないのだ。

 兄達もこのルートで行ったらしい。


 そうと決まれば、早く行こう。

 僕は降りしきる雨の中を、街道に沿って歩き始めた。


 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 キャメロンを出て、8時間程経った。

 辺りも暗くなってきたし、そろそろ野宿にしようと思う。

 幸い、今日は魔物や賊の類には遭遇しなかったので、魔力は有り余っている。そのため、野宿と言っても魔術で作った小屋で寝るだけだ。

 辺りを見回して小屋を作るのに丁度いい場所を探す。

 

 刹那、空に稲妻が走った。

 

 そのとき、街道の先に何かが見えた気がした。

 明かりを付けようと、始書を取り出しながら、何かが見えた方に向かう。

 少し遅れて、雷鳴が轟いた。


 人だ。

 人が、倒れていた。


 僕はそれに気付くと、急いで駆け出した。

 そこに倒れていたのは、15、6歳程の少女だった。

「おい、大丈夫か!?」

 僕は彼女を抱き起こす。

 パッと見た感じ、外傷は無いし、呼吸もしっかりしてる。どうやら、気絶しているだけのようだ。

 ここに放っていくのもアレなので、取り敢えず介抱しようと思う。

 少女に僕の外套を掛け、始書を開いて魔術を使って急ピッチで小屋を作る。

「えっと、土の章は……。あ、あった。使うのは《土柱(アースピラー)》と、《土壁(アースウォール)》だから……」

よし。

始祖から始書の使い方は教えてもらっていた。

 まず、使いたい魔術の魔法陣に手をかざし、魔力を供給する。次に、魔術の威力、射程などを設定する。ここが始書と普通の魔導書の違いでもある。普通の魔導書では、威力などはその魔法陣によって決まっているのだ。

「《展開:土柱・威力:1・射程:2m・ベクトル:ノーマル・並列四重展開・発動》」

すると、2m程の間隔をあけて魔法陣が4つ展開され、土の柱が生えてきた。

「おお」

 本当に多重展開出来た。

 普通の魔導書では出来ないのだが。

 おっと、悠長に驚いてる場合じゃない。早く小屋を作らないと。

 次は屋根だ。

「《展開:土壁・威力:1・射程:4㎡・ベクトル:水平・発動》」

 射程とは言っているが、要するにその魔術が効果を及ぼせる範囲のことだ。色々分けると面倒臭いので、まとめてしまったらしい。

 小屋も出来たので、少女を中に運び入れた。

 少女の服ーー見たことのないような服だーーは雨でずぶ濡れで、このままでは風邪を引きそうだ。

 今は初夏だが、この辺りはまだ肌寒い。

 乾かさなければ。

 しかし、僕が勝手に脱がすのも気が引ける。

「どうするか……」

 魔術で乾かすことにする。

「《灯火(ライト)》」

 今回は小さな火をつけるだけなので、特に設定などはいらない。

「あ」

 しまった。薪がない。そこら辺から取ってこようにも、今日は雨だ。湿っていて火が付かない。

 しょうがないので、魔力でずっと維持するしかない。

「徹夜かぁ……」

雨の勢いが強くなってきた。

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