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始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
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伝説との邂逅

「おほんっ。……どうも俺には実体がないらしい」

実体がない? 幽霊ってことか? ……それより、

「なんでそんな落ち着いているんですかっ」

「あぁ……。ま、よくわかんない状況には慣れてるし、状況も大体分かったし」

どうやら、彼は生前、波瀾万丈の人生を歩んだようだ。

「というか、幽霊って実在したんですね……」

「いや、ゴーストがいる世界の人がなにいってんの。というか俺、幽霊じゃないし……多分」

「幽霊とゴーストは違いますよ? それに貴方、幽霊じゃないならなんなんですか?」

「精神体というか、思念体というか……。うーん、なんて言えばいいんだろう。……ああ、そう、本体のコピーーー複製かな」

「なんでまたそんなことに……」

「ま、よくわかんないけど、なんか魔法的な要素が関係してるんじゃないかな」

「魔法……?」

「うん、魔法。魔術より上位の理」

「そんなものが……。始祖でも発見していないんですよ?本当に存在するんですか?」

「いや、発見したよ?」

「え?」

「だから、始祖が発見したよ? だって、俺が始祖だもの」

「え?」

いま、なんて言った?

「だから、言ったじゃん。俺は本体ーー始祖の複製だって」

 一瞬、思考が止まった。

 

 始祖。それは約千年前に存在した魔術師だ。

当時、幾つもあった『魔力を使う技』を、『魔術』という一つのものにまとめ、現代の魔術の基礎を作った。

 また、魔導書という画期的な魔術発動媒体を考案するなど、多くの功績を残した。

 そしてーー僕の一族の祖先である。

 

 それが、今、目の前にいる?

 信じられないようなことだが、僕はどこか納得していた。

 思い返してみれば、伝わっている始祖の名と同じ名前だったし、魔導に対しての造詣も深かった。始祖だったとしても、おかしくはない気がする。……もっとも、確定ではないが。

 となるとだ。僕は今まで超偉大なご先祖さまに失礼なことをしていたのではないか。

それはマズい。取り敢えず謝ろう。


「何と言うか、今まで失礼なこと言ってごめんなさい。始祖様」

「お、おう……。いや、べつにいいんだけどね。それより、始祖様はやめてください」

「いや、しかし……」

「いや、マジで。……もう始祖は死んだんだ。ここにいるのは、始祖の見た目と記憶を持っているだけのアルベールだから。それに、今は何の力もないし」

「分かりました。アルベール様」

「いや、様もやめて。アルって呼んでいいから。

 それより、なんでレーベンスは」

「ぜひレーブと呼んでください」

「ああ、うん。じゃあレーブ、何でここにいるの? 死んだ後に封印しとけって言っといたはずだけど」

「それが、封印が壊れてたらしくて、普通に入ってきました」

「まあ、千年だからな……。それよりも、気持ち悪くないの?魔力で」

「え?いや、全く」

「ふぅん。ここ結構魔力濃いんだけどな」

「ああ、もしかしたら僕の体質のせいかも」

「体質?」

「ええ。生まれつき、魔力を感じることが出来ないっていう」

「あれ、てことは……。え、もしかして魔術使えない?」

「ええ、まあ。魔力は普通より多いんですけどね……」

「そう……、大変だね」

「……」

「……」

なんか、しんみりした空気になってしまった。

「で、でも、大丈夫ですよ。旅に出るときは、始祖の遺産から何か持っていけるので!」

「旅?」

「そうです。世界一周の。グリモワル家の伝統です」

「へぇ、そんなのが……。じゃあ、これ持っていきなよ」

始祖はそう言って、先程僕が触った本を取ろうとしたが、手がすり抜けてしまった。

「……」

「……そうだ。実体無いんだった」

なので、指差した。

「これは……?」

僕は本を手に取って聞いた。

「魔導書。始書って言うんだけど」

 その本が失われた伝説の魔導書だと聞いて驚いたが、その驚きは、目の前の人物が始祖だと聞いたときほどではなかった。


 そもそも、魔導書とは、始祖が考案した魔術発動媒体だ。一見ただの本に見えるが、中には魔法陣が刻まれており、魔力を込めるだけで簡単に魔術が使える。

 魔導書の普及以前は、呪文詠唱での発動が主流で、発動までに時間が掛かったが、魔導書の普及により発動時間が大幅に短縮されたそうだ。

 そのため、魔術史における最大の発明と言われている。


「これが……。失われたわけじゃなかったんだ。えっと、本当に頂いていいので……?ご自身で使ったりは……?」

「いいんだ。どうせ、今の俺には使えないから。なんか魔力無いし、そもそも実体ないから触れないし」

「たしかに……。しかし、僕も使えないと思うのですが」

「え? なんで?」

「僕は魔力を操作できないので魔導書に魔力を込められないのでは?」

「ああ……、そういうこと。大丈夫さ。だってこれは『魔導書』なんだよ? 読んで字の如く『魔を導く書』だ。魔術の最初から最後まで全自動でないと、『導く』もクソもないだろ?」

「な、なるほど」

始祖の身体が、段々と薄くなっている。

「……おっと、どうやら時間切れのようだ。俺はもうすぐ消えるだろう。しかし、君には、その始書がついている。なにも心配することはない。それが君を守ってくれる。

……君の未来が、魔力と共にあらんことを!」

 そう言って、始祖は消えていった。


 こうして、僕は始書を手に入れたのだった。


「おっし!決まってたぜ!」

……そんな声は僕には聞こえなかった。

 今後の参考にしたいので、分かりにくい表現だったり、改善してほしいところがあったら、コメント等して頂けるとありがたいです。

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