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始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
23/24

幕間 始祖の郷愁

大変遅くなってごめんなさい。

※「始祖と魔導書」のネタバレを若干含みます。ご注意ください。

「知らない間に、ずいぶん遠くまで来ちゃったなぁ……」

 現代日本の騒々しい夜と違い、明かりもなく静かなネルクには、独り言がやけに大きく響いた。

「ミーティア……」

 遠い昔に置いて行ってしまった、大切な人の名を呟く。

 もう二度と、会えない人の名を。


 なんで俺だけ……。

 そんな気持ちは最初からあった。

 あの工房で、目覚めた時から。

 

 あの時、完全に終わったと思っていたのに。

 どうしてか、俺はまだここで生きている。

 いや、生きているかどうかもわからない。

 あの時はああ言って誤魔化したが、実際は亡霊なのかもしれない。1000年前の。

 

 そうだとしたら──


「ハハ……」


 自分の執念深さに呆れる。

 一度死んで、新たな生を得て。

 今度は満足して死ねたと、そう思っていた。

 でもまだ、足りなかったようだ。

 だからこうして、ここにいるのかもしれない。

 

「でも、よかった……」


 自分の残したものが、自分たちが残したものが、1000年経っても消えずに残っている。

 それが嬉しかった。

 報われたような気がした。


 思えば、不純な動機だった。

 せっかく魔術があるのだから、使ってみたい。

 そんな思いから始まったのが、俺の人生だった。


 でもそれが、こうして世界に影響を与えるほどになっている。

 人生とは、本当にわからないものだ。


 今回の本生?でも、この短い間に驚くことがたくさんあった。


 まず、自分が生きていること。

  

 子孫──レーベンスと会ったこと。


 転移者──遥香と会ったこと。


 

 レーベンス。

 アイツをみていると、昔の、日本人だった頃の自分を思い出す。

 劣等感コンプレックスに苛まれ、卑屈になり、諦めていた自分を。

 

 俺の場合は、『転生』と言う出来事があったから変われた。

 しかし、それはある種のズル(チート)であり、また、その人生を諦め、逃げ出したのと同義だ。


 普通はそんなものはない。


 『人生にやり直しは利かない』

 

 古今東西で使い古されてきた言葉だ。

 だからこそ、真理を含んでいる。

 それはまごうことなき事実で。

 

 しかし、一つだけ違う。


 人生『の』やり直しは利かない。

 

 しかし。


 人生『に』やり直しは利く。

 

 取り返せないのなんて、人の生き死にだけだ。それ以外は全て、どうにかすればどうにかなる。


 俺はそれをやろうとして、しかし実行する前に死んだ。

 

 

 次の人生なんて期待してはならない。それに縋ってはならない。


 幸い、レーベンスにそのような願望はないようだが、人生を諦めているのは確かだ。

 それではダメだ。

 俺のエゴかもしれない。ただの自己満足かもしれない。

 

 しかし、今までの感じだと、全ての責任は俺に帰結する。

 

 『グリモワルだから』『始祖の一族だから』


 傲慢かもしれないが、全ては俺のせいだ。


 俺が自分勝手に好き勝手やってきたツケが今ここに現れている。


 いや、『今』だけじゃない。()()()だって──


 ともかく、全ては俺のせいだ。

 『俺』という異物がこの世界に入ってきたせいで、今こうなっている。


 ならば、それは子孫ではなく俺が清算すべきだ。


 案外そのために今ここにいるのかもしれない。

 

 今は手助け程度しかできないが、いつかはアイツを助けてやりたい。


 幸い、その手段は既にある。1000年前の俺が、既に創っている。


 アイツのコンプレックスの根幹──名付けるならば、『魔力不感症』を治す。


 情けないことだが、今の俺にはこのくらいしかできない。

 今の俺は1000年前の残滓みたいなものだ。

 魔力なんて欠片もないし、物理的に干渉もできない。

 できるのはお膳立てと、舞台の用意程度。


 ならば、それを全力でやるまでだ。



 親愛なるミーティア、俺は1000年後の世界でも頑張っています。



 俺たちのツケを、清算するために。

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