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始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
22/24

依頼達成

 帰ってきた。冒険者ギルドへと。


 時間はもう夕方だ。西の空がオレンジに色付いている。

 

 よし、行こう。


 気合を入れ直して、冒険者ギルドに足を踏み入れる。


「人、多いね」

「うん」

 冒険者ギルドの中は、朝よりも賑わっていた。

 受付にはたくさんの冒険者たちが並んでいる。依頼完了の報告だろう。

 中には怪我をしているのもいた。

 

 僕らもその列の最後尾へと並ぶ。

 この分だと長くかかりそうだ。


 宿の夕食の時間までに間に合うかな……。

 いや、あそこは酒場もやっているのだっけ。

 それなら大丈夫か。


 他の冒険者たちはやはり、袋を背負っているものが多い。必需品なのだろう。

 素手で死骸を持っているのは僕だけだ。


 後で袋も買おう。


「はい、次の方〜」

 

 その声に釣られて前を見ると、いつの間にか僕らの番になっていた。


「あっはい。えっと、依頼の報酬受け取りに……」

「何の依頼ですか?」

「えー、『スノウラットの討伐』です」

「ああ、常時依頼ですね。では、討伐証明部位をお願いします」

「はい。ええと、どこやったっけな……。あれぇ……?」


 ない。ネズミの尾が。


 確か、切り取って……どうしたっけ?


 ヤバい。

「無くしちった」

「えぇえ! 銀貨一枚なんだよ!?」

「ごめん……」

 本当に申し訳ない。


 本日の稼ぎは実質ゼロ……? 


『骨折り損のくたびれもうけってやつだね』


 うるさい。


 どうしよう……。いや、まだ何か手があるはず。

 こんなとき、どうしてたっけ……。

 

 そうだ。


「あの、この死骸じゃダメですかね……?」

 ダメもとで受付の人に聞いてみる。

「死骸、ですか……」

 苦い顔をしている。やっぱり、駄目だったか。


「……本当は駄目なんですが、昨日の負い目もありますしね。特例で、認めましょう」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

 いやぁ……。昨日のへっぽこ受付嬢氏に感謝だな。


「今回だけですからね。次からは気をつけてください。では、報酬の銀貨一枚です」  

「はい。ありがとうございます」

「よかったね」

「うん。あ。あと、この死骸って買い取ってもらえますかね」

「素材の買い取りでしたら、あちらのカウンターで承っております」

「どうもご丁寧に。本当にありがとうございました」


 受付嬢が指し示したカウンターへ向かう。

 こちらにはあまり人はいなかったので、すぐに番が回ってきた。


「えーと、なんの買取っすか」

 なんかやる気のなさそうな若い男が受付をしていた。

 向こうのカウンターとはまさに雲泥の差だ。

「これです。スノウラット」

「あちゃー、解体してないんすか。それにスノウラットか……。えー、元々が銀貨二枚で、そっから解体費用を引くんで、大体……、銀貨一枚半くらいっす。これでいいっすか?」

 解体費用って結構取られるんだな……。

「あっはい」

 まぁ、ここは専門家に従っておこう。

「あの、少し気になるんですが」

 ハルカが少し身を乗り出して聞く。

「ハイハイ、何すか?」

 男が面倒臭そうに答える。

「ネズミを何に使うのかなぁって思って」

 まぁ確かに。

 流石に、ネズミの肉は食べないだろうし。

「えー、革っす。魔物の革としちゃあ、ここらじゃ一番の安物だけど」

 革か。

 まぁ、革なんて僕らが持ってても何の使い道もないし……?

 あれ、なんかあったっけ。

 なんか忘れてる気がするが……。

 

「革、なんかあったっけ」

「え? うーん……。…………あっ! ホルスター!」

 そうだ! 忘れてた。


「あの、なんか知らんけど、用が済んだんなら早く退いて欲しいんすけど」

「あっ、ごめんなさい」

「あの、革だけ貰えますか? あ、あと魔石も」

「革だけぇ〜? んなもん、売れるとこが無くなっちまうっすよ!」

「に、肉とかは食べないんですか?」


 男が「こいつ何言ってんの」的な顔をする。

「誰が好き好んでネズミの肉なんぞ食べたいと思うんすか!?」

「で、ですよねー」

「……まあ、解体費用だけもらえればできないこともないっすけど」

「じゃあ、それで。いくらですか?」

「銅貨8枚っす」

 さっきよりも割高な気が……。


「そりゃあ、使えない部位の処分代っす。さっきのは、それをおまけしても十分利益が出るんすけど、今回はそれじゃあ赤字っすから」


「ほー……」


「じゃ、明日までにはできてると思うんで、明日中には取りに来て欲しいっす」

 そういうと、男はなぜか手を出してきた。


「えっと、何?」


「お金っすよ! 解体費用!」

「ああ、はいはい……」

 お手かと思った。


 えっと、銅貨8枚……。

 ない。2枚しかない。

 じゃあ、銀貨で……。

「はい」

「銀貨一枚っすか。お釣り、銅貨2枚っす」

「ありがとうございます」

 お釣りを受け取り、カウンターから離れる。

 

 結局のところ、今日の稼ぎは銅貨二枚か……。

 これはマズイ。

 そのうち、財布が空っぽになってしまう。

 宿のお金も、明日の夜の分までしか払っていないし……。

 明日からは本当に稼がないと。

 

 そう、決意を新たにして宿への道を行く。


お金の計算ってめんどくさいですね。

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