ネズミ捕り5
少し短めです。
10分経った。
ネズミはまだ現れない。
「来ないね……」
流石に待ちくたびれたのか、ハルカがそう言う。
「うん……。しっ!」
建物と建物の隙間から、ピンク色のものが見えた……気がした。
どうやら見間違いではなかったようで、白い頭と、真っ赤な目が続いて出てきた。
スノウラットだ。
「来た……!」
ネズミが仕掛けた魔法陣に乗るまであと少し。
もう少し前、もう少し前に行け!
「案外可愛いかも……?」
ハルカがそんな感想を漏らす。
だけどもうすぐ串刺しになるのだ。
多分。
ネズミは辺りをキョロキョロと見回して、何もいないと思ったのか、目の前のご馳走へ向かい、一歩足を踏み出す。
そして、その足が地面についた瞬間。
仕掛けられた魔法陣がネズミの微弱な魔力を感知し、条件が満たされた魔法陣が起動する。
ーーザシュッ!
地面から勢いよく伸びた何本もの土の棘が、ネズミを串刺しにした。
辺りに血が飛び散る。
ネズミはなんとか逃れようともがくが、かえって傷口を広げるだけだ。
「ッ!」
ハルカが思わず目を瞑る。
まぁ、確かに凄惨な光景だ。
ネズミが串刺しにされてもがいているのだから。
もがくのが止んだ。
どうやら、息絶えたようだ。
今度はピクピクと痙攣している。
「やった、かな」
立ち上がり、ネズミの方へ行く。
「【土崩】」
再び地面が光り、魔法陣が出現する。
ネズミを刺し貫いていた土の棘が土塊へと還り、ドサリと音を立ててネズミが落ちた。
「討伐証明部位は、尻尾だったかな……」
ナイフを取り出し、ネズミの細い尾を切り取った。
「やっと銀貨一枚か……」
一日かけてこれだ。
明日からはもっと効率良くやらないと。
「死骸はどうするの?」
「どうするか」
街中だから、燃やすわけにもいかない。
しかし、放置するというのもあり得ないだろう。
『冒険者ギルドに持ってけば? 換金してくれるよ、多分』
らしい。
「じゃあ、とりあえず冒険者ギルドに行くか」
「また戻るのかぁ……」
お疲れの様子だ。
まぁ、今回戻るので、ひい、ふう……、二往復。
ネルクはそれなりにでかいので、疲れるのも無理はないか。
「宿で待ってる?」
「ううん。一緒に行く」
「そう」
にしても、持ってくのは良いがどうやって運ぶべきか……。
この血だらけグロネズミを剥き出しで持ち歩くのは少し、いやかなり気が引ける。
入れる袋とかもないし……。
いや、雑穀の入った麻袋があることにはあるが、まだ中身が入っているし、そもそもサイズ的に入らない。
本当にどうしよう。
もう、埋めてしまおうか。
だけど、換金できるのだったらそうしたい。
今は金欠だから。
剥き出しで持って行ってしまおう。
しょうがないさ。
裏道を通っていけば、人にもそんなに会わないだろ、多分。
よし、そうしよう。
「よっこらせっ、と」
服が血で汚れないように気を付けながら持ち上げる。
案外重かった。
きっと、そこら辺の倉庫からいつも盗み食いしていたのだろう。丸々と太っている。
「えっと、そのまま持ってくの?」
ハルカが遠慮気味に聞いてくる。
「うん。入れるものもないしね」
「そ、そう……」
なんだか引かれてしまったような気がする。
しょうがないのだ。入れるものがないので。




