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始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
17/24

ネズミ捕り

復活しました。

 街の中心にある城が段々と大きくなる。

 それと同時に、周りの建物も立派なものへと変わっていった。


「この辺りかな」

 商会の看板が色々と出ている。

「お城大きいね」

 ハルカが城を見上げて言う。

「領主の館だよ。なんとかって言う」

 名前は知らないが、きっと偉い伯爵とかそんなのが住んでいるのだろう。

 ーーもっとも、僕らには関係ないが。


「お、あそこにしよう」

 ちょうど、大きな商会の横に路地があった。

 きっと、勝手口とかそういうのがあるのだろう。


 ハルカを連れて、路地裏に入る。

 

 路地裏には、ごみなどが捨てられてはいたが、思ったより綺麗だった。

 やはり、街の中心部であるからだろう。


 街の外縁部の路地裏には多分、浮浪者とかがゴロゴロいるに違いない。


「さて、ネズミネズミっと」

「スノウラットって、どんな見た目なの?」

「真っ白で、小さい犬くらいの大きさのネズミ」

「でかっ」

 そりゃ魔物だから。

 何故かは知らないが、魔物は大きいものが多い。元々大きな動物はそうでもないが、虫などはその傾向が顕著だ。


「でも、そんなに大きなネズミがいたら目立つんじゃないの?」

「普通にいたら、ね。多分どっかに隠れてるさ。大きさが大きさだし、隠れるところは限られるけど」

「じゃあ、どこに隠れてるの?」

「わかんないから探してるんだよ」

「……」

 ハルカが呆れたような目で見てくる。


 しょうがないじゃないか。

 家じゃネズミ探しなんてしないんだから。




 それから30分が経った。

 ネズミはまだ見つからない。

 

 コソコソ隠れやがって……。卑怯なやつだ。


『あのさぁ……。もうちょい考えたら? 餌で誘い出したりとか。いい加減暇なんだけど』

 アルが呆れたような声で言ってきた。


「あ」


 思いつかなかった。

 いつの間にか、固定観念に縛られていたらしい。

 スノウラットは、魔物と言っても『ただの大きなネズミ』だということを失念していた。

 自分でそう言ったのに……。


 まだまだだな。

 はぁ……。


 いや、気持ちを切り換えねば。

 今は仕事中だ。


「うん。そうしよう」

 そのためにはまず、餌が必要だが……。

 

 小麦は勿体無いし、適当な雑穀でいいか。

 買ってこないと。

 幸い、ここは商会の近くだ。そこで買おう。


 一旦路地から出て、近くの商会へ向かう。


 路地を出てすぐのところにあった商会にはいる。

 まあまあ大きめの商会だ。


「ごめんください」

 そう声をかけると、

「はい。ご用件は」


 すぐに店員が出てきて応対する。

 冒険者のような身なりの僕らを見て、一瞬訝しげな目をするが、すぐに笑顔に切り替えた。

 さすがというべきか。 

 やはり教育とかもしっかりとしているらしい。

 こういう店は初めてなので、少し緊張する。


「えっと、雑穀を買いたいのですが」

 緊張を押し殺して普通に要件を伝える。

「何キロですか?」

 キロ? キロ単位なのか?

「え? いや、そんないらなくて、少しだけ……」

 

「申し訳ございませんが、当商会では一キロからのご注文とさせていただいております」


 融通が利かないのは大店だからだろうか。

 いや、そんなものなのだろう。

 ここで買うのは諦めよう。

 雑穀ならどこでも買えるし。


「そ、そうですか。では、失礼しました」

 

 そういえば、商会というのは基本的に商人と商人との取引が多いとレオ兄さんが言っていた。

 道理で単位がデカかったわけだ。

 無知と世間知らずを晒してしまったようで恥ずかしい。


 「よかったの?」

 そうハルカが聞いてくる。


 もう少し下町の、個人商店に行けば買えるだろうか。

 元々そっちに行っておけばよかった。

 横着はするものじゃ無いな。


「うん。決まりならしょうがないし。次は下町の方の商店に行ってみるよ。

 一旦戻っちゃうけどいい?」


「下町なら買えるの?」

「多分ね。さっきのとこはどうも、商人向けの店だったみたいだし」

「ふぅん。スーパーと卸売業者みたいなものなのかな……」

 

 街を観光がてら、下町へ向かう。

 

「なんか、古くて伝統があるっていう感じだね」

 ハルカがそんな感想を漏らす。


「うん。ここは、伝統の国、北トラディツィオ古王国だから。その中でも、このネルクの街は古くから北の守りーー水竜とかかなーーの要だったらしいよ。まぁ、キャメロンが出来てからはあまりそういう役割はないようだけど」


「へぇ、詳しいんだね」

 ハルカが感心したように言う。

「いや、兄さんの受け売りだよ。あと、《古都》とも呼ばれる王都はもっとすごいらしい」

「古都かぁ。見てみたいな」

「多分そのうちーー」

 通ると思うよ。


「なに?」

「いや、なんでもない」


 これからもハルカと一緒にいるとは決まっていないのだ。

 もしかしたら、彼女はここに留まるかもしれないし、僕とは別の方に行くかもしれない。

 だからーー


 ぐぎゅるる〜〜


 これはーー


 腹のなる音か。

 そういえば、もう昼時か。

 その発生源であろう横を向く。

 

 彼女は真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに俯いて震えていた。

 あまり触れてやらない方がいいだろう。


「ああ〜。お腹すいたなぁ。そろそろ昼にするか」

 我ながら棒読みだと思う。

 演者は向いてなさそうだ。

 ……なる予定ないけど。

 

 僕の言葉を受けてか、さらに俯いてしまったハルカから目を離す。


 ちょうど屋台が目についた。

 焼き串の屋台のようだ。

 威勢のいいおじさんが客寄せに大声を出している。


「あの焼き串にしようか。いい?」

「……うん。べ、別に私はお腹すいて無いんだけどね!」


『ツンデレかよ』

 アルの呆れたような声が脳内に響く。

 ツンデレってなんだ?

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