表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始祖の魔導書  作者: 富良斗雫
第一章
10/24

到着

 昼休憩などを挟みながら5時間ほど歩いた。

「疲れ、たぁ……。もう、歩けない」

 聞く所によると、ハルカのいた世界ーー地球というらしいーーは乗合馬車のようなものが発達していて、長い距離を歩くことはあまりないらしい。

 「もう少しだから。この丘を越えたら、……ほら」

「うぅう……」

ハルカは疲れた様子で丘を登りきると、前を向き。

「うわぁ、綺麗……」

 眼下には、巨大な城壁で囲まれた街、ネルクが夕日に照らされてオレンジに輝いていた。

「本当に、ファンタジーの世界に来たんだ……」


夕日?


まずい!


 感動しているハルカには悪いが。

「急ぐよ!」

「え!? なんで?」

「日が沈むと門が閉まるんだ!」

 僕らは街に向かって走り出した。……アルを除いて。

 アイツ、走るのが面倒だからって始書に逃げやがった!


 街がもう目と鼻の先のところまできた。

 衛兵が門を閉めようとしている。

「お〜い! まだ、います!」


「はぁ、はぁ……」

 ハルカが息切れしている。

「大丈夫か?」

「久しぶりに、走ったから、きつい……」

「ゆっくりでいいから、ついてきて。先に手続きしてくるから」

「うん……」


 ハルカを置いて、街の方に向かう。

「身分証明書をみせて」

「はい」

「よし。もう一人のは?」

 無い。どうしようか。

「あぁと……。彼女、田舎から出て来たもんで、持ってないんですよ」


 そういう設定で行こう。そういう人も結構いるらしいし。

 事後承諾になるけど、別にいいか。


「そうか。なら、保証金として銅貨5枚を」

「ちょっと待って……」

 荷物からお金の入っている革袋を取り出す。

「はい」

「よし。入っていいぞ」


 そんなこんなで、やっと街に着いた。

 記念すべき、この旅で最初の街だ。

 夕陽に照らされた街で、人々が家路を急いでいる。

 どこからともなく、良い匂いがした。夕飯の準備をしているのだろうか。


「やっと、休めるのね」

「いや、まだだよ。宿を探さないと」

「えぇ……?」

 今日はハルカにとって相当ハードだったようだ。

 まぁ、それもそうか。

 なんせ、急に異世界に来たと思ったら魔物に会って、何時間も歩いたんだもんな。

 そりゃあ疲れるだろ。


 そんな彼女のためにも、早く宿を探さないと。


 ここのような城塞都市の宿は、たいてい街の外縁部にあると相場が決まっている。なので、く門からそう離れていないところにあるはずだ。……ほら。

 ちょうどよく、道の先に宿屋の看板が見えた。あそこで良いや。

 

「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」

 宿に入ると、店番をしていた少女が元気な声で出迎えてくれた。

「二人です。一人部屋を二部屋で」

「一人部屋を二部屋ですね。何泊ですか?」

 うんと、この街でやりたいことが色々あるから……。

「取り敢えず、三泊で」

「三泊ですね。えっと……、金貨一枚と大銀貨一枚になります」


 金貨一枚と少しか……。案外安かったな。見ると、掃除も行き届いているし、内装も質素ながら洗練されている。僕はいい買い物をしたようだ。

 革袋の中から金貨と大銀貨を取り出して店員に渡す。

 財布が少し寂しくなってしまった。明日からは、稼がないと。


「ありがとうございます。はい、部屋の鍵です」

店員から鍵を受け取ると、部屋へと向かう。


「ごめん、なんか宿代まで出してもらっちゃって」

ハルカが申し訳なさそうに謝ってくる。

「いや、気にしなくていいよ。旅は道連れ世は情けっていうし」


 カッコいいこと言っちゃって、とかいうアルのからかうような声が聞こえた気がした。


そんなことを話していると、もう部屋に着いた。

「はい、鍵。なくさないようにね。それじゃ、おやすみ」

 ハルカに鍵を渡し、自分の部屋に入る。

「おやすみなさい」

 ハルカの返事が聞こえた。


 部屋の鍵を閉めると始書が光って、アルが現れた。

 荷物を置き、寝る準備をしながら話す。

「明日はどうすんの?」

 直球だな。

「とりあえず、金を稼ぐ」

「冒険者か」

「うん」

 それが一番手っ取り早いだろう。

「ハルカはどうすんだ?」

「うぅんと……。どうするかな……」

「ま、連れてけばいいんじゃない? M29の試し撃ちもしたいし。守りながらでも出来るだろ?」

 気楽に言ってくれるなぁ。

 ま、出来るかできないかと聞かれると、出来る。

 でもな……。

 冒険者には危険がつきものだ。十分に安全マージンを取っていても、不足の事態はおこる。

 ……いや、それはこれからの旅でも同じか。どんなに安全な道を通っていても、魔物に襲われるときは襲われるのだ。

 それならば、早いうちに身を守る力くらいは身につけるべきか……?

 

 ……あれ? 何でこれからもハルカと旅をする前提なんだ? 取り敢えずネルクまで連れて行く、という話ではなかったっけ。

 ……まぁいいや。当分ネルクにいるつもりだし。後のことは後で考えよう。


「もう寝る」

「そうか。おやすみ」

「うん、おやすみ」

 アルは光となって始書に入っていった。

 僕も布団に入り、目を閉じた。


お金の感覚は、

銅貨一枚 百円

大銅貨一枚 五百円

銀貨一枚 千円

金貨一枚 一万円

という感じです。

 これは「都市貨幣」の場合です。貨幣の種類によって変わります。

 都市貨幣については、後ほど出てきますので。


 宿の値段は、中世の相場が分からなかったので、現代日本の安い方で考えました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ