4話 ワシ、間違われる
「クァ? クア……(のう? パプ……)」
「あら? お客さんかしら?」
パプルに疑問をぶつけようとした瞬間、投石器で攻撃されたかのような爆音と振動があたりを包む。
ガタガタと揺れた棚から、色んな荷物が落ちてきて床に当たっては砕けて行く。
「クア!(ああ!) クゥキュゥウ!(その測定器、買ったばかりなんじゃぞ!)」
使ってもいない貴重な器具が壊れてワシの気分は最悪じゃ。
これだけ揺れとるというのに、パプルは平然とした顔で立っておる。
お前も助手しとるのなら、少しは落ち込まんか!
「ギャァアアアアアア!! キジャァァア!!」
今度は何じゃ! 揺れとるのにこの咆哮のような叫び声は!
竜にはなる、死にかける、物は壊れる、ワシにとって最悪な日じゃ。
ここまで来れば、もうなんにも驚かんぞ。
「ふむふむ」
雄たけびが響きわたり、ビリビリと空気が震えておる。
何が起こったかしらんが、城も街も大混乱じゃろ。
「あ、所長、ちょっと来てもらえます? この叫び声、所長を呼んでますから」
「クァ?(は? ワシを?)」
「ええ『愚かな人間どもめ、幼き竜の子供をさらうとは、恥を知れ、今すぐに竜の子を帰すなら命は助けてやろう』ですって」
なんじゃと!
パプルはワシの角を掴むと、突風のように走りだす。
階段を数段抜かしで駆け上がり、窓から飛びあがったかと思ったら屋根の上に突っ立っておったわ。
振り回されとったからよく覚えとらんが、おまえ、空中を走っておらんかったか?
「キシャアア!」
おお、中庭に見事なまでの巨大な竜が来ておるわ。
地面がひび割れて折る所を見ると、さっきの揺れはこの竜が飛び込んできたときの物じゃな。
「『ほうほう、人間にしては行動が早いではないか、己の身の危険までよくわかっている。さぁ、早くその子をこちらへ帰すのだ!』ですって。やっぱり所長を探してましたわね、お知り合いですか?」
あの一声にそんなに複雑な意味があるのか!?
竜の言葉とは不思議……ってそれどころではない!
「キシャ! クェァア! (あほう! 竜に知り合いはおらん!)
「ですわよね、キシャァ! キジャァ!!」
は? パプルよ、急に叫び出して、どうしたんじゃ?
イタタ! こら、しっぽを掴んで持ち上げるんじゃない!
「ああ『お前にはこれが竜に見えるのか、馬鹿め』って言ってやったんです」
どう見ても今のワシは竜にしか見えんじゃろが!
お前は何がしたいんじゃ!
「キシャァ!」
「ギィヤァァァア!」
あーもう!! やっかましい!!