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2話 ワシ、死にかける

 紛れもない、ドラゴンだ。


 いや、見方によっては、太ったトカゲ族の子供にも見えなくもないが……

 しかし、どうして、ドラゴンなんぞになったのかの?



「クァファー、クァファー」



 まずは深呼吸して落ち着くんじゃ、しっかし、情けない鳴き声じゃのう。

 色々、息をすったり吐いたりしているうちに、頭もスッキリして落ち着いて来たわい。


 さて、おそらく何かの呪いか魔術じゃろ。

 床を踏み抜いて、テーブルを吹っ飛ばした力もあるから一概に呪いとも言えんか……


 ドラゴンに変身させるとはかなりの術が込められておったと言う事じゃな。


 ワシは解呪の研究所の所長をしておるが、所長と言っても部下が2人いるだけの小さい所じゃ。

 にもかかわらず、上級や特級の呪物や魔道具がゴロゴロ運び込まれているもんで、先日も部下のでっかい方が、牛になったり、馬になったり大混乱したところじゃ。



「クァ~、ア? クァ!」



 さて~、解呪の聖水はどこかの? アッ!!


 瓶が、割れとる!!


 これは困った最後の1本がこれだったのに、今日の午後には納品されるが、このワシの姿を見られたら、騒ぎになってしまう。



「クァ!」



 そうじゃそうじゃ! なら、解呪ではなく、呪詛変換じゃな、ドラゴンではなくもうちょっと人よりの種族に変化させればいいんじゃ。


 竜人族なら言葉も話せるから、騒ぎにもならんじゃろ。

 確か、棚に竜人族に化けるためのアクセサリーが溜まっとったの。


 ワシは棚の所まで小走りするが、一歩一歩が床にめり込んで走りにくくて困るわい。

 このドラゴン、子竜だとしても力が強すぎるのぉ。

 森に生きる飛ばない古竜族が何かかの? しっかり調べてみたいが、まずは人に近い体にせんといかん。



「クァ~♪」



 お、あったあったわ。


 沢山あったと思ったが、どうやら片付けてしまったらしい、竜人化の指輪が一個だけ残っておったわ。

 さてこれをはめれば……


 ん? はまらんぞ?


 爪の根元が太すぎて指に届かん!

 なら、無理やり押し込んでくれるわ!!



 パッキーン



「クァァァ!!」



 しまったぁ!!

 砕いてしまったぁ!


 なんじゃ! このもろい作りは!?

 って、ドラゴンのパワーで押し込んだから当然か! 冷静になったつもりが焦っとるじゃないか!?


 くやしくて腕をバタバタ振っていると棚をぶっ叩いてしまい、棚の上に置いていた物が降り注いでくる。

 体にガンガン当たってくるが、ドラゴンと化したこの体にはなんの影響もない。

 ドラゴンの鱗は固いだけでなく、衝撃を逃がす効果もあるんじゃな、勉強になったわい。


 さて、しょうがない、次の方法を考えるとするか、とりあえず鏡で観察しながら考えるとするか。



「……クァ」



 ……なんじゃ?

 息が苦しいような?


 ん、歩きにくいの? さっきみたいに床に足がめりこむとかでなくて、力が入らないような?


 ふと足を見ると、さっきまでは短いながらも鱗に覆われたドラゴンの足だった物にヒレみたいなものがついておる。

 手も竜の爪だった所が柔らかくなり指がくっついていくように変化しているではないか。


 歩きにくさと息苦しさをこらえて鏡の前に来ると、両手足がヒレのように変わってきていることが良く分かる。



「クェップ……」



 鏡に映る、ワシの角に指輪が引っかかっておるが、これはイカン!


 これは『魚心の指輪』に違いない、魚人族に変化できる指輪じゃ。

 つまりドラゴンのワシが身に着けたことで、陸上で息ができないシードラゴンになってしまう!


 はやく外さないと!!


 って、てが!? いや、ヒレが!

 つ、角、角に届かん!!


 転がってみて、腕を何とか伸ばしてもがいてみるが、腕と足の長さを越える角の先端にはまった指輪に届かん!?


 こ、このままではイカン! 完全にシードラゴンになっては息が出来ずに死んでしまう!

 な、なんとかせんと!


 焦ってじたばたやっていると、立て付けの悪くなっておる玄関の戸がバコンと勢いよく開く音が聞こえてきたんじゃ。

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