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1話 ワシ、竜になる

「クァー!」



 なんだこれは!

 周りの物が何でも間でも大きくなっている、さっきまで座っていた椅子は目線の高さに座面があるし。


 ちょっとばかり低くてイライラしていたテーブルは頭の上の高さになっているじゃないか。


 ワシとしたことが、思わず叫び声をあげてしまったんだが、まずは冷静になることが大切だな。

 久しぶりに呪いを解くのに失敗したのだろうが……



「クァ?」



 ん? っと、ちょっと待て、なんだ今の声は? そもそもさっきの声もワシの声には聞こえんかったな。

 魔術を使えなくさせる沈黙系の呪いでも食らったか?


 声も気になるが、ワシの体が縮んでいる事は確かだからな、小人化の呪いも食らっているかもしれん。まずは解呪をしなければなるまい。


 解呪のための聖水はテーブルに置いてあるから、椅子に乗れば届くだろ。

 ワシはそう思いながら、椅子に手をかける。


 いや「手」のつもりで伸ばしたのだが……



「クァ~?」


 

 なんだ~? ワシの手が緑色に見えるぞ。

 反対の手でさすってみるが、当然反対の手も緑色だ、それになんかザラザラと鱗みたいな感触がするぞ。


 それどころか、小さいながらもよく切れそうな爪が指先から伸びているじゃないか。

 見直してみるが、どうも幻覚でもなさそうだ。


 ハッとして、両手で顔を触る。

 鼻がある場所と唇は大きく突き出していて、鉄の板かと思うほどの固い肌の感触が伝わってくる。


 口は大きく裂けたかのように広がり、よく切れる包丁を何本も並べたかのような歯が生えている。

 手が切れたかと思ってみてみるが、さっきの緑色の手には傷ひとつ付いていない。



「クァー!!」



 あー!!

 そもそも! この声だ!


 という事は、ワシの腕も、この突き出している口も、鋭い歯もワシの体だということだ。



「クァ! クァ! クルァー!!」



 か、かか、鏡はどこだ!


 幸いワシの研究室は呪いの研究室だ。

 鏡になら移って姿を確認できる悪霊や、鏡にしか映らない魔術の痕跡もあるからな、魔術の解析にも使える優れもののかがみがある。


 テーブルの向こう側に布をかけて置いてあったはずだ!


 ワシは、鏡に向かって駆けだした。



「クァー!!」



 凄まじい物音を立てて、テーブルが吹き飛び、椅子が転がり、テーブルの上に乗っていた沢山の瓶や呪術の道具がガシャガシャンと轟音を立てて床にぶつかり砕けちっていく。

 

 一歩足を出したつもりが、放たれた矢のようなスピードで椅子やテーブルをなぎ倒してワシは進んでいた。


 後ろを見てみると床板が凹んでおり、ただでさえ散らかっていた研究室が、粗大ごみ置き場のような惨状にレベルアップしている。


 目標にしていた鏡も真っ二つに割れてしまっているが、なんとか自分の姿を見るくらいはできるだろう。

 後片付けの事を考えると、もう頭が痛いが今はそれどころではない。

 この時点でワシは自分の体がどうなっているか、ほぼ確信を得ているのだが……



「クァ~……」



 やっぱり…… 


 緑色の鱗に全身が覆われ、鋭い爪と牙、宝石に縦の切れ目を入れたような眼。

 顔の上に鋭く伸びている2本の角。

 背中にチョコンと生えている可愛らしい翼。


 これは間違いない。ワシの予想通りだ。

 子供のドラゴンだ……

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