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異世界転移でちょっとリアリティーを上げると冒険は始まらない。

作者: ガンダルフ

俺の名前は鈴木太郎。16歳のどこにでもいる高校生だ。

趣味はゲームとネット小説だが、断じて陰キャではないと主張しておく。ちょっとオタクっぽいだけだ!

とある夏の日、新作のゲームでも買おうと朝から町に出掛けた。

すると町中で裏路地の方に飛びながら入っていく妙な生き物を見かけてしまった。

「ん? 空飛ぶトカゲ?」

俺は一瞬夢でも見ているのかと思ったが、なんだか気になり後を追いかけてしまった。

裏路地に足を踏み入れたその時、穴にでも落ちたかのように俺の体は落下していった。



気がつくと俺は何だか真っ白な空間に横たわっていた。

「ここは何処だ?」

何となく呟いた言葉に思わぬ返事が返ってきた。

「ここは僕の主が管理する世界の入り口だよ」

その声に振り返ってみるとそこには白いローブを着た金髪、赤目の少年が立っていた。

見た目6、7歳くらいだろうか、しかしその背中にある白鳥を思わせる翼が普通の少年でないことを俺に確信させた。

取りあえず敵意が無さそうなので、俺はこの少年に話しかけることにした。

「管理する世界?ここは異世界なのか?」

「そうなるね。君は偶然出来た世界境界線の裂け目に落ちてここに着たのさ。滅多に起きないことだから君は運が良いのか、悪いのか…」

「俺は元の世界に帰れるのか?」

「まず無理だね。世界境界線に干渉する方法は今のところ無いよ。主だって君みたいな存在によって異世界と世界境界線を知ることが出来ているだけだから。」

帰れないと知った俺は一瞬家族、友人の顔を思い浮かべたが、小説の様な異世界と言う響きにワクワク感も感じていることを自覚した。

異世界に突然放り込まれるのではなく、この少年が現れていることで、もしかしたら異世界チートなるものを自分は手に入れられるのではないかと期待が膨らみ始めた。

まず相手を知り、この世界を知ることが大事だと考えた。

「君は誰で、主ってのは何者なんだ?」

「僕は主のしもべのひとりで特に名前は無い、しいて言えば78番かな?

主はこの世界の管理者だけど特に何かするわけでもないのでどちらかと言えば傍観者に近いのかな?」

「君の主は神様なのか?」

「神様ってこの世界の者達が言ってる存在ではないけど、結構近いかな。

ただ、創造主でもなければ全知全能でもないけどね。」

「君はどうして俺の前に現れたんだ?俺に何か用でもあるのか?」

「よい質問だね。主がこの世界を眺めてたら偶然君がこの世界に落ちてきたのを見つけたんだ。

見つけられてよかったね。じゃなきゃ、死ぬまで放置されてたよ。

それで主が面白がって僕に命令したんだ、2回だけ力を使って君に力を与えろって。

1回目は君が落ちる予定の国の言語を与えろ。

2回目は君の希望を聞けって。

さあ君は何を望む?」

俺は話を聞いて益々異世界チートの希望を持ったが、少年の言葉にひとつ疑問がわいた。

「ちょっと待ってくれ、国の言語?この世界の言語はひとつじゃないのか?」

「君の世界じゃ言語はひとつなの?」

「違うけど、共通語はある。」

「この世界にも無いことはないけど、君はその共通語を話せるの?」

「…………いや、話せない。」

「ここでもそうだよ、伝わらない言語しか話せないと困るでしょ。」

「だったら全ての言語を話せるようにしてよ。」

「そう言われても主の命令だからね。諦めてよ。」

仕方がないので俺は異世界チートに希望を託すことに決めた。

まず、どんな世界なのか知らなければ始まらない。

この世界はどんな世界なんだ?」

少年は少し困った顔をした。

「凄い漠然とした質問だね。

君の世界の事を知らないから僕の言葉で理解できるかどうかわからないけど…

この世界には君に似たヒト族と幾つかの妖精族が37の王国を作って生活してる。

文明を持っているのは彼らだね。

大きく姿形が変わらないから君でも溶け込めると思うよ。

国同士の争いもそれなりにあって、主に剣や弓、魔法なんか使って戦争してるよ。」

「魔法があるんですか!」

俺は魔法と聞いて興奮が高まるのを感じた。

これはまさしくファンタジーの世界だ!

「ステータスボードとかあるのか?」

「??? ステータスボード?

それってどんなものなの?」

「名前とか、職業、あとどのぐらい力や器用さ、体力があるかとか、その人の能力がどのぐらいあるかを表示する物だよ。」

「そんな物はないけど、有ったらどうなるの?」

「無いのか… 有ったら色々便利なんだよ。自分がどのくらい強いのか分かるし、他人と比べる事だって出来るだろ。」

「この世界の識字率は3割にも満たないから、7割も活用できないものに、便利も何もないと思うけど、あと言語だって30種類以上あるのに何語で表示するのさ。」

「ぐっ、」

さすがに正論だ、読めない物に意味は無い。

「あと君はこの世界の文字は読めないでしょ、あっても意味ないよね。」

駄目押しまでされた。

俺は気を取り直して、一番大事なことを聞くことにした。

「この世界にはスキルはあるのか?」

「スキル?随分おかしな事を聞くね。

スキルが無い世界でどうやって文明が発展するのさ。

有るに決まってるでしょ。」

スキルキターーーー!!!

俺の興奮は最高潮に達した。

願いは1回だけだか、チートスキルを貰えば俺の異世界人生は薔薇色決定だ。

どうする俺!

戦闘系にするか便利系にするか悩むところだ。

しかし、戦闘系にすると失敗は即死に繋がる、憧れはするが取りあえず置いておこう。

便利系でスローライフが理想だ。

俺はあるスライムの物語を思い出した。

その時少年が訊ねてきた。

「そろそろ君の願いを聞こうかな?」

「何でも質問に答えてくれたり、いろんな解析をしてくれるスキル≪大賢者≫が欲しい。」

「???≪大賢者≫? 何でスキルなのに称号の名前なの?

それにスキルが受け答えするって凄い怖いね、精神異常じゃないの? そもそもそれってどんな訓練したら習得できるスキルなの?」

「訓練? スキルに訓練が必要なのか?」

「会話が成り立ってない? 訓練の要らないスキルなんて無いでしょ。自分自身の努力の成果がスキルなんだから。

自分が考えないでも答えを教えて貰えるなんて、自分の知識も経験もなしに答えが出たら異常でしょ。」

「だったらそう言う能力を作って俺にくれ」

「残念ながらそんなシステムは存在しないし、主だっていつも最適解を出せる訳じゃないんだよ。

主の力で主以上の能力を作れるわけないでしょ。

それに言ったよね、主は創造主じゃないって。

何でも作れる訳じゃないのは理解して欲しいな。」

「じゃあ未来予知なんて出来ないか?」

「未来予知?出来ないことはないけど予知してどうするの?」

「未来が予知出来たら危険を避けれるだろ。」

「未来予知は確定している未来しか見えないよ。

例えば君が石につまずいて転ぶ未来があったとする。

君がその未来を見たら、あらかじめつまずかないように注意して歩くだろ、そうすると君は未来ではつまずかないことになる。

つまずく未来がないのだから君は未来予知してもつまずく未来を見ることが出来ない。

結局君は注意して歩かないからやっぱりつまずくのさ。」

「言ってる意味がよく分からないが?」

「つまり君が未来を予知することで変わる未来は予知できないんだよ。

見えるのは絶対に干渉できない決定された未来だけ。

主は未来は見えるけど干渉出来る事が多いからごく稀にしか見えないって言ってたよ。

まぁ預言者にはなれるかな、自分に関わることは見えないけどね。

どうする?未来予知で良いの?」

「いいわけないだろ!」

「じゃあどうするの?」

「どこかの国の王族に記憶付きで転生できるか?」

「転生?ああ、そう言えばこの世界にもそんな信仰あったね。

魂の輪廻だったっけ。

君の世界には魂って有るの?」

「またそれか…この世界にはないのか?」

「無いね。有ったらおかしいでしょ。魂の総数って決まってるのかい。人口だって減ったり増えたりするでしょ。

魂があったらそれも減ったり増えたりすることになるでしょ。

じゃあ減った魂は何処に行き、増える魂は何処から来るのさ?

言っとくけど主はそんなの作ってないからね。」

「転生は出来ないのか…」

「近いことは出来るよ。」

「!!!近いってどんなことが出来るんだ?」

「1つ目、記憶を移す。

これはおすすめしない、何故なら君の記憶を持つ別の人間が出来るだけだから。

2つ目は脳ミソ自身を魔法的に移植する。

でもこれは、姿を変えて入れ替わるのと結果的には大差ないかな。」

「どっちも駄目じゃん!」

何だか雲行きが怪しいぞ。

チートは何処に行った?

良く考えろ俺!

難しく考えるな。生産チートで行けばいいんだ。

そうすればものを作るだけでお金がウハウハだ。

よし、これで行こう。

「聖剣や魔剣が打てる≪鍛冶≫スキルが欲しい!

これなら有るだろ?」

「おおっ!ついにまともなスキルが出てきたね。

いいよ、それなら叶えてあげるよ。」

少年は俺に手のひらを向けると光を放った。

すると俺の頭のなかに様々な鍛冶知識が入ってきた。

最強の聖剣や最凶の魔剣が当たり前のように作れると俺は確信できた。

出来る!俺は出来るぞ!

「じゃあ今から君を下界に下ろすね。

まずはハンマーを振れる筋力を身に付けることをお薦めするよ。

頑張ってね。」

「!!!!」

俺は筋トレが嫌いなんだー!

俺の異世界スローライフは始まる前に終わった…。

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