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門番

森を抜けて10分程度の所でマルスとマキの住んでいる村についた

小さい集落のようなものを予想していたがそこそこしっかりしているな

村の回りは木の柵のような物で囲まれていて、入り口の扉には門番もいる

小さいが物見ヤグラも設置されていた


「なあおっさん、俺たちの村には人間がいないんだ。亜人だけで生活している。白い目で見られるかもしれないが勘弁してやってくれ。人間に対して良い印象を持ってないんだ。俺が何とか村に入れるように交渉するからさ」


「私もみんなに村に入れるようにお願いするよ!」


「ありがたいねぇ」


私たちは門番をやっている男性の前についた

男性の背には黒い大きな翼が生えているんだが、片方だけにしか羽がない

負傷しているのか、悲しいねぇ


「マルス!、マキ! 無事だったか! 森に出て帰っていないから皆心配しているぞ。早く母親に顔を見せてやれ。お前は人間だな、ここは人族の支配下にはない何の用だ」


やはり私に対しての印象がよくないようだ

それにしても支配下とは穏やかじゃないね。人間と亜人種族の関係性は芳しくないようだ

第一印象が大切だな。ここで好感が持たれるように持っていかないとな

どうしたもんかと考えているとマルスが私の説明を始めた


「待て待て、こいつは悪い奴じゃないんだ。森で俺とマキが狼に襲われているところを助けてもらったんだ。記憶を失ってるらしく名前も覚えてないんだぜ。体力も全然ないしこのままほっといたら野垂れ死んじまう。少しの間でいいから村に置いて欲しいんだ」


「おじさん悪い人じゃないよ、ご飯もお水もたくさんくれたんだよ!」


「ううむ・・・・・・しかし・・・・・・」


もう一押しだな、私のコミュ力の出番だ

門番に話しかける


「やあ、朝食食べた?」


「あ? なんだいきなり? 食べたが・・・・・・」


「奇遇だな! 俺も食べたんだよ朝食! いや~君とは気が合いそうだあ!

今朝はね鶏肉のスープだったんだ。よければ今度一緒にどうだ? はっはっは!」


私は半ば強引に門番の手を掴み両手で包んで握手をする

政治家握手ってやつだ

アメリカンスタイルの強引さと陽気さ、そして日本の握手を合わせた力技だ


「陽気な奴だな、とりあえず入村を許可するが騒ぎは起こすなよ? 何かあったらすぐに追い出すからな」


「ありがとうございます」


どうやら村に入れてくれるようだ。パワーでごり押しするのに限るな

門番が横にずれて扉の前の道を開けてくれる


「お兄ちゃん、朝食ってみんな食べるよね? 奇遇なの?」


「おっさんは頭がちょっとあれなんだ、ほっといてやれ」


やかましいわ! これは高度な戦略の上で成り立つ兵法なのだよ

私たちが歩き出し扉をくぐる所で門番が私たちを引き留めた


「ん? まだなにか?」


「俺はダグラス。鳥人族だ、スープの約束を忘れるなよ。鶏肉を食うのは久しぶりだな」


「よく考えたら鳥人が鶏肉食ったら何かやばくないか? 共食いみたいな?」


「阿保ぬかせ、大型の鳥が小型の鳥を捕食するなど自然の摂理だろうが。俺は鶏肉も鳥卵も好物だぞ?」


正論だな。日本に住んでいる時も鷹がカラスを捕食している現場を見たことがある

あれはなかなか心に来るものがあったなぁ


「安心しろ、私は約束を守る男だ。適当なタイミングで鍋持って門のあんたのとこまでもってきてやるよ」


「わかればいい、さっさと行け」


そっちが引き留めておいて、さっさと行けとはな身勝手な奴だ

門を通りすぎ村に入る

マルスが先導して前を歩き出すのでそれについていく


「とりあえず俺らの家に行くぞ。門では少し手間取ったが人族の商人や領主の関係者も村には来るからヘタな事をしなけりゃ騒ぎにはならん筈だ」


彼らの家に行くと聞いてそこで足が止まる

そろそろ潮時かな。


「どうしたの? 村が怖いの? 手つなぐ?」


「おっさん?」


「世話になったなここまでだ。君ら二人と森を抜けて村まで行く。これで当初の目的は達成だ。ここからは私一人で何とかやってみるよ。ありがとう」


これ以上彼らに負担をかけるわけにはいかない

村での人族と亜人の関係性が良好と言えない以上は私と一緒にいるだけで

二人にどんな迷惑がかかるかわからないのだ


「何言ってんだよ、おっさん一人でどうやってやっていくんだよ。家も金もないだろう。見知らぬ土地でいきなり一人では生きていけないぞ。母さんには俺から説明するからしばらく俺の家に来いよ」


「おじさん一緒に行こうよ。わたしもお母さんにお願いする。きっと大丈夫だよ」


うん、やっぱり彼らはいい奴だ。

こんな厄介なおっさんほっとけばいいものを

だからこそこの子らには迷惑をかけたくないんだ


「君らに渡すものがある」


アイテムボックスからマルスが仕留めた二匹の狼を出す


「これは森で仕留めたやつか・・・・・・拾っていたのか」


「あぁ、一匹は運搬料ってことで貰うよ。もう一匹は君らの取り分だ。こいつの素材を売れば宿代くらいにはなるだろ。あとは自力で仕事を探して金を稼ぐさ」


「そうか、わかった。とりあえず俺の家の場所を教えてやるよ。今後困ったことがあったらとりあえず家に来い。それが飲めるなら無理強いはしない」


「助かるよ」


門から歩いて五分ほどのところでマルスとマキの家に着いた。お別れだ


「ちょっと家に上がって行けよ」


「いや、やめておくよ。決心が鈍るからな」


「おじさん、怖くなったらすぐお家に来てね? いつでも遊びに来ていいからね?」


「うん、近い内に遊びに行くぜ」


不安そうな顔をしたマキちゃんの頭を撫でてやる

たった二日の間だけだったが中々感慨深いものだな


「これは選別だ。家族で食ってくれ。じゃあ、またな」


から揚げを右手から出してマキちゃんに手渡す

ここからは一人で生きていかねばならない

私は狼の素材を売りに店へと向かうのであった

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