村まで行こう
さてさて飯も食ったしジャングル横断だ
先頭にマルス、真ん中に私、一番後ろにマキちゃんの順番で歩く
あれおかしいぞ? 真ん中って一番無能な人が歩く所だよな?
前の人が道を切り開いて、一番後ろが後方の警戒
ゆえに真ん中と言うのは一番安全な場所なのだ
8才の幼女より頼りなく思われているとはね、
舐めやがってえええ!
私は心の中で憤慨した
ああ! 妖精さんの国にゆきたい!
人と関わらず労働も仕事も何もせず妖精さんと毎日お菓子を食べてお歌を歌って過ごしたい
「まっ、いっか」
くだらない妄想にフケっていると心から怒りが消えた
私は感情的になりやすいが、とても冷めやすい
急にキレたかと思うと、どうでもよくなるのだ
気を取り直して街まで行くぞおお!
「ひぃひぃ、村はまだなのか?」
「まだ半分も歩いてないぞ? あまり声を出さない方がいい。水分をもってかれるぞ」
「おじさん頑張って!」
森を一時間ほど歩くと私は情けない声を出しながら文句を言っていた
舐めていたぜ森の厳しさを
足場は悪いから何度もコケルし、暑くて汗はとまらないしジメジメして気分が悪いのだ
にしてもこの二人は余裕だな。どんな過酷な環境でも適応ってするもんなんだね
「ぜぇぜぇ、へぇへぇ。ぐへへへ」
何かしんどすぎると逆に笑えてくるな
「急に楽しくなってきたぞ!おおおおおおおお!」
辛い時にマイナスのイメージだと身も蓋もないので、しんどい時ほどポディシブになるよう頭を切り替えるのが私の処世術なのだ
この方法で何とか私は村までの道の半分を歩ききった
「ここらへんでだいたい半分ってとこだな。ここで半刻ほど休憩しよう」
比較的見通しのいい日陰を見つけたらしくマルスから休憩の許可が下りる
私は大きな岩の日陰に陣取り、ドカリとその場で倒れ仰向けになる
アイテムボックスから水のペットボトルを出すとすかさずラッパ飲みする
コンビニ通販で買った物なのでキンキンに冷えていて体中に染みわたる
「だいぶ汗をかいたから塩分もとらないとな、コンビニで何か買うか」
電子マネーの残高は醤油と水で650円使ったから残りは350円か
もうちょっとしか無いし全部使っちまうか
2Lのスポーツ飲料が200円と、一枚50円のアルティメットサンダーと言う板チョコを三枚買うことにした
これで一文無しだ
「おーいお菓子配るからこっち来てくれ。これねチョコレートって言うんだ。砂糖もたっぷり入ってるし疲労回復にも効くと思うぜ。 こっちは甘い水ね、これも飲んでくれ」
「砂糖って高価じゃないのか? おっさん無理してないか?そんな金持ちには見えないけどなぁ」
「まあこれで一文無しだけどな、運命共同隊なわけだし気にしなくていいぞ」
二人にチョコを手渡し、コップにスポーツ飲料を注いでやる
ついでにチョコの包装をちぎってやる。開け方わからないだろうしな
「ん!? 凄い冷えているな。氷も入ってないのになぜ・・・・・・しかもこのお菓子ほとんど砂糖の塊じゃないか・・・凄い高級品だな、うんうまい」
「こんなお菓子見たことがないよ。真っ黒で変だし苦そうなのにとっても甘くておいしい。おじさんってもしかして貴族なの?」
「いや、私は平民の中でもドベだぞ」
二人とも気に入ってくれたようで何よりだ。
チョコの包装紙は悪目立ちするので食べ終わったマルスのゴミを回収する
そういやアイテムボックスの容量ってどんなもんなんだろうか?
ためしに日陰製造機として活躍している河原の大岩を収納してみる
「入るんかい。よし今度漬物石代わりに使おう」
この岩に耐えれる漬物容器などあるはずがない
マキちゃんのゴミも回収しようと見るが半分ほど口にしたところで食べるのをやめてしまう
「どうした? 口に合わなかったか? お腹いっぱいになっちゃった?」
「ううん、とってもおいしいから全部食べちゃうのはもったいなくて。とっておいて後で食べようと思って」
「残念だけどそのお菓子って暑さに弱くてさ。この気温じゃあすぐに溶けて食べれくなっちゃうぞ」
「え! ほんとだ。じゃあ全部食べる! 」
マキちゃんは急いでチョコを食べ終え、ゴミを回収させてもらった
「ありがとな、菓子と水を貰ったらだいぶ元気になった。残り半分だ気合いれて行こうぜおっさん!」
「お菓子と甘いお水ありがとう!」
「なーに、たいした事じゃないさ」
うんうん二人とも元気いっぱいだな。何とか村までの半分私も頑張らないとな
糖分の補給というのは中々に効果を発揮してくれた
先ほどまで重かった体が大分マシになってくれたのだ
私たちは黙々とジャングルを歩いていく
「見えたぞ、あそこが俺らが住んでるカサド村だ!」
「やっと帰ってこれた。お母さん心配してるかな?」
ジャングルを歩き始めて四時間半ようやく私たちは村に辿り着くことができたのだ
長かったなぁ、私は見知らぬ村に関わる不安を胸に足を進めるのであった