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から揚げを食べよう

「マキ? いるか? マルスだ帰って来たぞ。扉を開けてくれ」

 

少し待つと、ガチャリと鍵が外れる音が聞こえる


「兄ちゃん! 兄ちゃん!」


中から先ほど見た小さい少女が出てきてマルスに抱きつく

頭をグリグリお腹に擦り付ける少女に、青年は目を細めながら頭を撫でている

少女にもマルスと同じ黒くてもふもふの耳が生えているが、兄と違って耳の先端が少し尖っている

個体差があるのか、なかなか面白い


「紹介するよ、妹のマキだ。仲良くしてやってくれ」


マキは紹介されると照れくさいのか兄の後ろに隠れてしまう

正直子供と関わったことがないのでどう接したらいいかわからない


「よろしくね。ええっとマキちゃんでいいかな?」


マキちゃんはこくりと頷く


「そういや名前も覚えていないようだが何と呼べばいいんだ?」


そうだな、前世の本名はちょっと嫌だし急に言われてもいい名前が浮かばない


「とりあえず、おっさんと呼んでくれればいいぞ。村に着くまで力を合わせて頑張っていこうじゃあないか」


「おっさんでいいのか? そこまで年を取ってるわけじゃないだろ」


彼のツボにはまったのかクスリと笑いがこぼれる 

マキちゃんもマルスに釣られて笑う

なかなかアットホームな感じでいい雰囲気になった


「君たちは森に狩猟に来ていたのか?それとも採集?」


会話の繋ぎのため、私は取り留めのない質問を二人にする


「キノコを採りに来たんだよ。 カラカラダケと言ってスープにして食べるととってもおいしいんだよ。 お鍋で煮るとカラカラと変な音が鳴るからカラカラダケって言うんだよ」


マキちゃんがキノコの特性を語る

するとマキちゃんのお腹からグゥ~と空腹を訴える音が鳴り響く


「キノコの話してたらお腹が空いちゃった・・・・・・」


彼女は少し悲しそうな顔をすると、空腹を誤魔化すように空笑いをする

始めて見た時から思ったが二人はとても痩せている

手足はとても細く皮膚の血色も悪い

森の奥までキノコを採りに行くくらいなので食べ物に困っているのだろう

しかし悲しいことに、キノコ自体のカロリーはほとんど0なのだ


「飯にしよう。おっさんも食べるだろ?」

 

マルスは獣の皮で作ったようなバッグの中からパンを取り出すと俺にも一つ配ってくれる


「いいのかな? 貴重な食糧を分けて貰って?」


マルスは俺に笑いかけると、スープを作る気らしく小さい鍋を取り出したき火の準備をする

鍋に水と塩を入れ火にかける。マキちゃんは自分の小さいカバンから野草を取り出し刻んで鍋に入れていく


鍋にキノコを投入して少し経つと鍋からカラカラと奇怪な聞こえ始める


「ね? カラカラって聞こえるでしょ?」


マキちゃんは得意そうな顔をして私に語る

キノコを入れ5分ほど煮るとマルスはスープを器によそって私にくれる

器は兄と妹の2つしか持っていないので、兄は余りを鍋から飲むことにしたらしい


「じゃあ食べようか」


食事の祈りの様な文化はどうやら無いらしい

二人はパンをスープに浸して食べていく

私も真似をして食べようとするがパンがとてつもなく固い。鋼かおどれは?

スープに浸さないとちぎれないほどカチカチなのだ

スープの材料もキノコと塩、少量の野草だけなのでとてつもなく味が薄い

病院食かな?


「普段の家でも食事ってこんな感じ?」 


「あぁ、そうだな。たまに干し肉がつく時があるな」


これは本格的に食料難らしい

子供が満足にメシも食えないなんてとても悲しいことだ

私の能力の出番のようだ


私は右手に意識を集中してから揚げを出す

二人はいきなり私の右手から、から揚げが出て来たことにビックリして目をパチクリさせている


「私アイテムボックス持ちなんだ。これを一緒に食べよう」


「驚いた、アイテムボックス持ちとはな。しかしいいのかそんな上等な肉を貰ってしまって」


マルスは見た事もない肉料理がとても高価な物と判断し遠慮しているようだ


「いや、たいした物でもない。たくさんあるし二人に食べてほしいんだ」


「お兄ちゃん・・・・・・」


マキちゃんは喉をゴクリと鳴らす

私は半ば強引に二人にから揚げの小皿を渡す


「中は熱いから気をつけてな。うん、そこそこ旨いな」


私は二人が食べやすいようにから揚げをバクバクと食べる


「ありがとう、いただくよ」


始めに口にしたのはマルスだった。から揚げを一つ口にしたと思うと二つ目、三つ目と

流れるように口に運ぶ


「うまい・・・・・・こんなうまい肉料理は初めてだ・・・・・・口の中で肉が溶ける、そして噛むごとことに肉から旨味が溢れ出てくる」  


口にあったようで良かった。マキちゃんの方はどうかな?

マキちゃんはフォークでから揚げを刺すと、それをたどたどしく口に運ぶ


「凄いおいしい! お肉はいっつも干し肉だからそのまま食べるか、スープに入れるかしかできないのに。こんなおいしいお肉食べた事がないよ! 」


二人のから揚げはあっという間に無くなってしまった

私は追加のから揚げを出すと二人に手渡す


「ありがとう、でも十分だ。もう十分堪能したよ」


マルスの食べっぷりから見てまだまだ満腹には程遠いはずなんだよな

マキちゃんはまだ食べたいのかチラチラと私の方を見ている


「子供がいちいち遠慮しなくてもいい。沢山あるから腹いっぱい食ってくれ」


「人間の癖に話がわかるじゃん。おっさん」


青年の警戒心が少し溶けた気がする


二人はこれ以上の遠慮は失礼と考えたか美味しそうに追加のから揚げを食べ始める

始めてお肉をお腹一杯食べた二人は幸せな寝息を立てて夢に落ちる


何気なく電子パネルを開くとメッセージが届いてることに気づいた

「善行ポイントが溜まりました。善行オプションからお好きな恩恵を選択してください。」とね


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