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狼撃退

ひたすら森を走る

時折から揚げを生産し、遠くに投げ狼の注意を引きつける

その隙に逃走ルートを確保する。これを繰り返す


三度ほど繰り返した所で、とうとう私の肺は限界を迎える

足を止め呼吸を整えていると、五匹の狼の内二匹が私の前に姿を現す


こんなものだろう、私にしてはよく頑張ったほうだ

運動不足の私がこんなにも全力で走ったのは高校のマラソンの授業以来だろう

二匹の狼は目を血走らせ、今にも私を捕食したいようだ


「はやくおいで」


逃げ回るのに疲れた私は狼との対峙に腹を括る

上着を右腕に巻き付け前に突き出す

服を巻いた右腕を狼に噛ませて、左腕で狼の眼球に指を突き刺すプランだ


「グルァ!」


一匹の狼が私に飛び掛かり突き出した右腕に噛みつく


「グッドボーイ。こぼうびに眼球をえぐってあげよう!」

 

腕に噛みついた狼の顔に指を持っていこうとすると、もう一匹の狼が私に飛び掛かる

私は体を捻り、何とか飛び掛かる狼を躱すと腕に噛みついた狼も牙を離し距離をとる


「駄目だ、群れでの狩りに慣れてやがる。崩せないな」


私と狼の膠着状態が少し続くと、後ろから残りの三匹もとうとう追いつく

挟み撃ちだ


「おしまいだ」


私は抵抗をやめてその場でへたり込む

今になって死の恐怖を鮮明に感じてしまったのだ  

狼が前後から私に襲い掛かる

次に生まれ変わるなら鳥になりたい


ビュンッ! ザク!


「え?」


突如二匹の狼の頭部に弓のようなものが刺さる。共に絶命している

私は立ち上がり何が起こったかわからず辺りを見回す


「伏せていろ!」


先ほどの青年だ

どこからか弓矢を調達し私を助けに来てくれたのだ

青年は後ろに陣取っている群れのボスと思われる狼に向けて弓を放つ


「グアガァァ!」 


弓はボスの中腹辺りに当たり悲痛な叫び声を上げる

群れのボスが逃げ出すのを確認すると残りの狼も一斉にボスに続き走り去っていった


「怪我はないか? 先ほどは助かった」


青年はそう言うと私に右手を差し出す

私はその手を取りその場から立あがる


「俺はカサド村に住む猫人族のマルスだ。あんたは人間だよな?

 なぜこんな所にいる? 名前を教えてくれないか」


よくよく青年の頭を見ると頭には黒くてモフモフの猫の耳のようなものが生えている

 

「私は人間だよ。名前は憶えてないんだ。記憶が無くてね。 助けてくれて感謝する」


咄嗟に嘘をついてしまう。私の悪い癖だ

異世界から来ましたなんて言っても信じて貰える筈もないので仕方がない


「記憶がないのか? そもそもこんな所に武器も持たずに来るなど自殺行為だ。とりあえず俺の村まで送ろう。ここは危険だ」


マルスはそう言うと私を先導して歩き出す


「妹を廃墟の小屋に置いて来ている。まずそこに向かう。村まではここから四時間はかかるから今日は小屋で一晩過ごし明日の朝に村に向かおう」


「わかった」

 

私は返事をすると黙々と後を追う


「見えたぞ、あそこだ」


小汚い倉庫のような小屋だが贅沢は言えないな

私はようやっと一息つくことができるのだ


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