森に転移
「ん、あぁ?」
目が覚めると見たこともない森の中にいた
森というかジャングル? 妙にジメジメしていて湿度が高く蒸し暑い
それでいて、視界に入る植物や花が異様に大きく日本で見てきた物とは異質なのだ
「おかしいな、バイトが終わって酒を飲んでてそれで」
頭を整理するが、やはりこんな場所にいる道理が無い
夢なのかと思い、腕をつねり痛覚の確認をする
腕の痛みを感じる。現実だ
訳はわからんが、このままこうしていても始まらない
「何がどうなっているやら」
とりあえず歩いて人を探し、情報を手に入れることにする
そのためにはまず川を探すことにしよう
詰まるところ川の水は色々と用途があるもので、その近くに人が点在することが多い
川越しに下っていけば人気のある所に行けるはずだ
まぁその川の場所がわからない訳だが
歩き始めて20分ほどすると、運良く川を見つける
「隊長!川を発見しました!」
くだらない一人芝居を興じる。私は一人の時は変にテンションが上がってハッスルしてしまうのだ
喉が渇いているので、川の水を飲もうと水を掬い上げる
......が瞬間飲むのを躊躇う
川の水は動物のフンや死骸が含まれている可能性が高く飲み水には適さないことを思い出したのだ
しかしここまで歩くのに結構な汗をかいている。水分を取らないとまずい
結局私は、川の水を少量だけ摂取することに決めた
このまま川沿いを歩いていけば水に困ることはないし、体の様子を見ながら水分を摂取していくことにする
更に一時間ほど歩くと日が沈み始めたのか辺りが薄暗くなってきた
「これはまずいな。夜になるとどれほど気温が下がるかわからないし、食料の確保もできていない。
就寝中に野生動物などに襲われないためにも火の確保も欲しい所だ。」
「ライターくらい入ってないものかね」
私はポケットをまさぐると一枚の紙が出てくる。
何だこれ、紙には異世界転移マニュアルと記載されている
<異世界転移マニュアル>
あなたは日本で天命を迎え生命の消失をしました。
日本であなたはクソの役にも立たずくたばった訳ですが
この世界ではそこそこ役に立つ適性があります
神界会議の結果、特例で記憶の引継ぎをした上での模造の転移となります
基本事項だけ載せておきます
1、ステータスと念じれば自身のステータスを確認することができる。
2、言語、文字は共通言語スキルを付与するものとする。
3、この世界で死んだ場合の蘇生は不可、命のかぎり人類の役に立て。
以上
「ふざけた内容だ」
しかしわかったこともある。やはり私は死んでいたのだ
「特に前の世界にも思い入れが無いので悲壮感も覚えないな。仕事はコンビニフリーター、恋人もできたことがないや」
これが異世界転移というものか、この世界に役に立つ適性とは何なのだろうか
こんな冴えないアラサーおっさんに激務を押し付けられても困るのだがな
「とりあえずステータスを確認してみるか」
私はステータスと頭の中で念じる。すると私の目の前に液晶パネルが表れる
宙に浮いてるよこれ。まともじゃあないな。私は液晶の文字を確認することにする
名前 未設定
体力 100
魔力 100
筋力 8
頑丈 13
敏捷 6
知力 6
幸運 5
SKILL 共通言語 精神防御 から揚げ作成 電子パネル アイテムBOX
「・・・・」
平均ステータスというものがわからないので、何とも言えないが今までのゲームの経験上は、
初期ステータスと相応と思ってまず間違いないだろ
転生させたんだから少しくらい優遇してくれよ!
「とりあえずスキルの効果だけ知りたいな。」
電子パネルのスキル名をタッチ操作する
共通言語 この世界の全ての言葉と文字を翻訳できます
精神防御 精神感応系スキルに適度に耐性ができます
から揚げ作成 魔力を5消費してから揚げを作成できます
電子パネル 神界電子パネルの一部機能が解放されます
何というかとてもアバウトな説明である。電子パネルは神界製らしい割りには中身は手抜きだらけだな。
電子パネルの解放される一部機能ってのも不明瞭すぎる
「から揚げ作成ってどうやるんだ?」
とりあえずパネルを出した時みたいに頭の中でから揚げ作成と念じて見る
すると右手から光のモヤみたいなものが出てくると思ったら、突如和紙に乗ったから揚げが出現した
和紙には四つのから揚げ乗っている。湯気も出ているしおそらく揚げたてだ
「食料確保だな」
私はとりあえずから揚げを一つ口に突っ込むと途端に睡魔が遅いその場で崩れ落ちるように眠ってしまった