四話
俺は死ぬ。それも明日や明後日に。
今度こそ目眩がしそうだった。
どこか、余命を宣告された患者の様にそれを捉えていた俺は、それにしてもまだ時間があるだろうと考えていた。
それが明日、明後日だとは。
慌てて、自分が今何をすべきなのか、何をしたいのかが頭に浮かび始めた。
死ぬ事への恐怖は、具体的で衝撃的な余命を宣告されたにも関わらず、意外と薄い。
それよりも、俺が最も恐れていたのは、このまま真波と会えず終わる事で、身震いした。
それだけは、死んでも嫌だった。
慌てて電話をかける。も、繋がらない。
何だか、嫌な予感がした。
寝ているのか?携帯が使えない理由があるのか?様々な想像が浮かぶが、手っ取り早い方法を確信する。
真波の部屋へ行けばいいのだ。合鍵は貰ってるし、寝ていても入れる。
服を着替えて準備をしながら考える。
彼の言う通りなら、今日はまだ大丈夫な筈だ。
そんな風に考えていると、唐突に自分の慌てた様が馬鹿らしく思えた。
なんだ。明日、明後日には死ぬって。
考えてみれば馬鹿な話で、こんな与太話で不安になって真波に会いに行こうなんて、真波に笑われても仕方ない。
そうだ、真波に会ったらこの話をネタにしよう。
そうして、一緒にこの部屋に帰ってきた時には、あの自称死神の少年は俺の思い込みか夢か何かだと判明して、笑い事で終わるのだ。
俺がもうすぐ死ぬと、突然突拍子も無い事を伝えられた時の真波のリアクションを想像すると、頭を支配していた焦燥が少し晴れた気がした。
しかし、家を出る際、もう一度確認したテレビの前にはやはり変わらず彼が居て、遠目から見えるその黒い様相は、まさしく俺が想像する死神の姿だった。