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メモリーズ・マギア  作者: 雨乃白鷺
混沌の章が終わってから!
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番外編10 紗百合と魔法を学ぼう③

【まえがきで分かるあらすじ!】


いよいよ第三回目となるゲストとの授業。

回数を重ねたこともあり、紗百合も若干乗り気のようだ。

そんな彼女が教室の扉を開ければ、待っていたのは赤いローブの少女だった――




「さあ、今回も『魔法を学ぼう』のお時間がやってきました。司会進行役兼生徒はこの私。貴方の心の扉も開いちゃうぞ、鍵の魔法少女こと柊紗百合です☆」

「……それ、やってて恥ずかしくないの?」

「なんていったって三回目だからね! なんかもう、台詞が増えても色々吹っ切れた!」

「何となく察したわ。まっ、今日はよろしくね」

「こちらこそ! それじゃ、ゲストの紹介に移ります!」



 ~ゲストの紹介~



「今回来ていただいたのはチーム『グリモワール』よりナコ・ウルタ・ロマールさんです! 改めて、今日はよろしくお願いしますっ」

「よろしく。ところで、気になったんだけどなんで敬語? 一応同い年よね」

「まぁ一応は生徒と先生っていう関係な訳なんでこうしたんですけど、砕けた口調の方が良いですかね?」

「私としてはそっちの方がやりやすいわね」

「分かった! じゃあこっちの方でいくね!」

「で、魔法に関して教えて欲しいんだったっけ。前はどんなこと教えて貰ったのよ」

「一回目は三段階理論と四工程理論で、二回目が属性構成論と刻印魔法でした。まぁ、私に合わせて触りだけだったと思いますけど」

「ん、おっけー。私が話すこと決まったわ」

「お、頼もしい! それじゃあ、授業開始っ」



 ~魔力とは?~



「私から話すのは魔法使いそのものに関わることについてよ。まず最初に魔力について話そうと思うけど、サユリはどれだけ知ってるか教えてくれるかしら」

「えっと、魔法を使うために消費されるエネルギーだよね。それで、魔力を消費しすぎると意識が朦朧として最悪失神。あとは寝たら回復する、くらいかな」

「なるほど。だったらこれからの話も無駄にならなくて済むわ。それじゃあ心して聞くように」

「わ、わかった」

「さっ、それじゃあ始めましょう。まず最初になんだけど、サユリは疑問に思ったことは無い? 魔法とは切っても切り離せない『魔力』というエネルギー。これって一体どういうものなのかってことに」

「思った思った! 人体の構造はある程度知ってるけど、何処から湧き出てくるんだろうって考えたよ!」

「私が話すのも丁度そのことよ。結論から言うけど、魔力は魂から生成されるの」

「魂……? 魂って、生き物に宿るっていう?」

「そう、生物の精神を司るとされる魂。呼び方としては霊魂(れいこん)の方が正式ね。魂は魔力の製造機でありながら貯蔵容器でもあるわ。そんなこともあって魔力は『精神的エネルギー』とも呼ばれるの。

 そして、この魔力というエネルギーは生物の精神強度によって最大保有量が決まるわ。メンタルが強ければ強いほど魔力も多くなるってことね」

「精神の強さが魔力量に……。ということは優秀な魔法使いほど精神が強いんだね」

「まぁ、魔法の相性とか色々あるけど概ね合ってるわ。消費できるリソースが多い方が有利なのは当たり前よね」

「それは理解できるけど、魔力量が精神強度に合わせて変動するってちょっと違くない? 私たち一応は多感って言われる年頃じゃん。それこそ魔力が少なくなりそうだけど、子供の方が魔力が高い傾向があるって聞いたよ?」

「サユリの言うことも一理あるわ。そもそも魔力に関することは魔法が発展した今でも解明できてなくて、盛んに研究され続けている一大テーマなの。精神が強固なら魔力が多いっていうのは統計的にそういう傾向があるだけで、決してそれだけじゃない。他にも様々な因果が複雑に絡み合って、魔力という一つの要素が出来上がっているのよ」

「ほえー、まだ分かってない事もあるんだね……」

「ええ。だからあまり難しく考えず、今はそういうものだと思っておきなさいな」

「ん、分かった!」


「さて、話を戻すわね。魔法を使用すると魔力を消費するっていうのはそうなんだけど、ここで重要なのが魔力消費に合わせて魂の活動も鈍くなっていくわ。それが限界点に達した時……つまり魔力残量がゼロになったとき魂の活動が休止し、意識が落ちるって仕組みよ」

「精神と密接な関係にあるからこそ、ってことだよね。私も魔力が減った時は朦朧としてたし」

「そこで大切になってくるのが睡眠。一般には消費しきった魔力は一晩、約六時間ほどの睡眠をすれば回復すると言われているわ」

「精神の調整をする、っていう意味だと確かに理に適ってるね」

「その辺りも研究が盛んに行われているわ。とある研究では睡眠と瞑想(めいそう)を関連付けて、魔力を意識下で生成する手法なんかも試されているのよ」

「魔法を支える基盤だからこそ、沢山の研究者が日々活動しているんだね」



 ~魔道具とは~



「さて、ここからは魔道具の話よ。デバイスとも呼ばれるけど、サユリは知ってる?」

「魔法使いが魔法を使うため補助道具のことだよね。私だとメモリーズ・マギア、ナコちゃんだと本っていう形で色々あるんだよね」

「ええ。補助道具であるが故に必ずしも用いられるということではないけど、より高度な魔法を使いたかったら必然と使うことになるわ。サユリが言ったように杖や本、広義では魔法陣もデバイスに入るわね」

「無くても良いけど合った方が確実、っていう面だけなら私たちでいう計算機みたいな物だよね。確か、魔導書ってかなり古くからあるんでしょ? ちょっと聞いてみたい!」

「そうね、折角だから話しましょうか。その前に聞きたいんだけど、なんで魔法を使うために本っていう形を取るのだと思う?」

「うーん……やっぱり研究書物としての意味合いが強いんじゃないかな? 科学でも研究者の人は他の文献から引用したりするし、後の世代にも繋げやすいよね!」

「正解。魔法使いたちは遥か太古の時代から魔法を研究していたの。でも死という活動限界点が存在するのは魔法使いも同じ。だからこそ、自分の子孫や弟子など他の人物に魔法研究を引き継いで貰うことを意識して魔導書が生まれたのよ」

「まさに、魔へ導く書物だね! 他には他には?」

「そうねぇ……ちなみにこれは豆知識なんだけど、世界で最も古いデバイスは粘土板と言われているわ。時代によって文字を記す形が変わることによるものね」

「ほぇー、確かに石碑とか壁画とか遺物として発掘されるもんね。……あ、杖の方はどうなの?」

「そっちに関しては詳しくないからあまり多くは話せないけど、信仰目的によるところが大きいのよ。人々は昔から神様に捧げる儀式に杖を用いていたのが当時の壁画などから分かっているわ。そこに源流があるんだと思う」

「なるほど……」

「といっても、最近では機械式デバイスの登場でかなり便利になったものよ。電子情報は保管さえしっかりしてれば経年劣化しないし。まぁ私は紙の本が好きだからこの形式と心中するけどね」

「紙の本が好きなのは同意しかない! 電子端末でもいいけど、やっぱり一枚一枚捲っていくのが没入感あるんだよね! それで最後に書を閉じて“ああ、読み終わったな”って余韻に浸る瞬間がイイんだよ!」

「サユリ、貴女理解()ってるわね。確かに電子書籍も持ち運びの面で優秀ではあるんだけど、どうもイマイチなのよね」

「仲間だ……数少ない仲間がこんなところに! やっぱり紙の本って――」


「こ、こほん。さて、読書の話は置いときましょ。デバイスは魔法使いにとって重要な道具というのは分かったわね?」

「うん! やっぱり有ると無いとじゃ全然違うんだなって」

「手で持ち運べる物で魔法を行使できるって考えたら便利よね。これも先人たちが色々と頑張ってくれたおかげだわ」



 ~魔法というものの広大さ~



「さ、ここからはかなり大きな話になるわ。私も含めて魔法使いというのは数えきれないくらい存在しているの。魔法は信じる者の想いによって姿形を変えるっていうのは有名ね。魔法使いにとって、魔法っていうのは自分が自分であることを表す一つの個性なのよ」

「だからこそ、魔法を見れば使用者が分かるって言われるんだよね。やっぱり理論的に解明できない魔法もあったりするの?」

「寧ろそっちの方がまだ多いくらいよ。ヒトの精神に由来する技術である以上、どうしても論理立てて説明できない穴が存在するわ」

「イヴちゃんの魔法とか凄かったもん。あの大きい白翼! モニターで見ててもめっちゃ鳥肌立った!」

「そうね。でもあの子の魔法はちょっと異次元というか例外過ぎる気けど。それ込みで私たちの中だと、セラの魔法が完成度としては一番優れているわね。虹の七色と盤上遊戯を組み合わせて対応させることで、本来なら大規模の魔法陣で使う魔法を落とし込むことに成功しているのよ」

「そうなんだ! でも、私としてはナコちゃんの方が凄かったかな。お姉ちゃんの攻撃めっちゃ避けるし、何より勝っちゃうんだもん! あれってどんなトリックだったの?」

「ああ、傍から見てれば分からないわよね。私の魔導書に記されている魔法は時間、その中でも過去と未来に焦点を当てたものよ。それで未来を予め観測して対処していたの」

「ま、まさか未来視……!? なんてロマンに満ちた魔法!」

「といっても、それなりに不便なこともあるわよ? ありうる可能性の光景が頭の中に一気に流れ込んでくるから下手したら処理落ち。遥か先の未来を視ようと思ったら魔導書だけじゃ足りないから」

「それでも見れるんだね……だったら十分凄いんじゃ?」

「まぁ、否定はしないわよ。私が胸を張って誇れる魔法だからね」

「カッコいい……私もそんなこと言ってみたいな!」

「だったら、日々の研鑽を怠らない事ね。積み重ねこそ、知性を有する生命の武器の一つなのだから」



 ~最後に~



「そんなこんなで色々と話してもらったけど、今日はありがとね! また機会があったら魔法についてだけじゃなくて、好きな本とかについても語りたいよね!」

「そうね。なんだったら地球に行ったときにでも立ち寄ろうかしら。サユリたちは何処に住んでるの?」

「日本っていう島国の星宮市っていうところ! 国の中でも地名被りは無いから、地図とかで調べて貰えば一発で分かると思う!」

「ああ、国の中で更に地域が細かく分かれている感じね。まぁそれとなく立ち寄ってみることにするわ」

「分かった! その時はいっぱい話そうね!」

「ええ、勿論よ」

「ということで、今回の授業もこれにて終了! ……あ、それとは別に色々と話聞いたりしても良い?」

「問題無いわ。折角なら読書の話でもしましょ」

「やった! 無限に語れるから覚悟してよね!」


 それから、解散したのは一時間後。

 その間、教室の中には楽しそうな二人の声が響いていた。

 おしまい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 紙の本がいいのは同意しかない! 電子もいいですけど、紙の本が増えてくるとこんなに集めたんだって浸れるのがすこすこなんですよねぇ
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