第41話 輝く魂、脈動する肉体
おまたせしました! 41話になります!
二人の激闘の行く末、どうぞご覧ください!
「フゥー……」
紗百合は静かに息を吐き、蓄積のメモリアを装填し発動。同時に空中に浮遊する結晶体が消え去った。
挑発の意味も込めての行動だったが、どうやらルルもそれを分かっているらしい。攻めてくる様子は見られなかった。
あくまで自身のタイミングで攻めてくるらしい。揺るぎないその精神は波立たぬ湖畔のようだった。
次に意識が向くのは、その数を十へと増やした触手、手数の増加は単純に攻撃力と防御力の向上を意味する。無謀な突貫はそれこそ自らの首を絞めるだろう。故に攻めの瞬間を見誤うことは許されない。
ルルが僅かに足を動かせば、それに合わせて紗百合も体勢を整え。
紗百合が僅かに杖を揺らせば、ルルの背後にある触手がピクリと反応する。
遠目では捉えるのも困難な、細やかな駆け引き。互いが隙を静かに探り合いながら思考を回す。
(装填している魔法は射撃、転移門、蓄積の三つ。ゲージは三段階目。始まればもう魔法を入れ替える暇は無い)
(操れる触手は十本。儀式不足の代償が無くなった今なら、思考と同じ速さで操れる)
自身の手札を確認し。
(接近戦は圧倒的に不利。だけど、遠距離では私に分がある)
(魔法を発動するまでの速度は私とほぼ同じ……いや、寧ろ向こうの方が少し速い。距離を置いての撃ち合いは受けに回るだけ)
自身が置かれた状況を理解し。
(中途半端な攻撃は防がれる。それなら、極大の一撃で打ち破る。その為には隙を作る必要がある)
(突きのような点の攻撃は門の創造で無効化されるけど、それも完璧じゃない。基本は線か面での範囲攻撃が固いか)
自身の打てる手を模索する。
アメジストとブルーベリルの瞳が正面からぶつかる。
戦場に一陣の風が吹き抜けると同時、静寂は反転した。
「ロード!」
【Loading, SHOOT】
撃ち出されるのは数えるのも馬鹿らしくなるほどの魔弾。触手を薙ぎ払う事でこれを掻き消したルルだが、その殆どが地面に着弾。舞う砂塵が視界を瞬く間に奪い取る。
ルルは十本の触手を勢いよく回転、周囲の大気が蜷局を巻く竜の如く流れる。晴れ渡った空間には既に複数の転移門が展開さている。
瞬間、ルルに向けて砲撃の一斉射が降り注いだ。
「……まぁ、やっぱり当たらないよね!」
紗百合が煙幕の向こう側から聞こえたのは湿った這い擦り音。視界が開ければ傷一つ無いルルが立っていた。
反撃の薙ぎ払いを避けると背面に気配を察知、地面に開いた転移門に落下し出口から降り立つ。地面には複数の削り痕が生じていた。
「ちっ、やっぱり面倒ですねその魔法!」
「一斉射、撃てッ!」
指揮棒のように振るわれる細腕。動き出した触手の数は十、それは全てが攻撃に回されたことを意味する。
負けじと紗百合も反撃を繰り出す。触手によって難なく防御されるが問題ない、目的は攻撃の手を少しでも減らすためだ。
「おぉぉぉッ!」
「はぁぁぁっ!」
入り乱れる射撃と触手。少女らしからぬ咆哮に込められた熱量が気迫を物語っている。
攻勢は立ちどころに入れ替わり、もはやどちらが優勢であるのかの判断すら困難なものになっていた。
「もう負けない、負けたくない! 今度こそ勝つッ!」
紗百合は歯を食い縛り、一心不乱に魔法を操る。手を緩めることは決して無い。そうすればこの拮抗が一瞬にして崩れ去ることを分かっているからだ。
そして何よりも、今度こそ全てを出し切るという誓いを裏切ることは出来ない。
“今を全力で生きる自分”――それが紗百合の理想とする自分。魔法使いになるための原初の願い、意志の力の象徴なのだから。
「っ、出力が上がった?」
ルルの目が見開かれる。撃ち出されたレーザーを掻き消さんと振るわれた触手が、僅かではあるものの拮抗したのだ。
それは些細な変化。だが、もたらしたものは大きかった。
傍から見れば未だ競り合っている様に見えるであろう闘い。しかし少なくともルルは、紗百合に戦局が傾いたと認識した。
触手が弾かれるようになったことで生まれた時間差。刹那にも満たないそれが積み重なり、綻びを作り始めていたのだ。
綻びはそのまま楔となり、罅を入れ、致命的な傷を負わせるだろう。
「させないっ!!」
「ぐっ……!?」
それを放っておくルルではない。背後に現れた転移門に触手を突っ込ませ、紗百合が攻撃の入り口としていた門から魔の手を伸ばす。
放たれる鋭い突き。紗百合はこれを杖で受け、全身を使っていなすことでなんとか難を逃れた。
両者が再び見合う。
「ッ、やるね……!」
紗百合の腕には攻撃を受け流す際に刻まれた深い裂傷。軽く引っかかれたようなものだが、その威力は互いの膂力の差を如実に表していた。
痛みがジクジクと神経をのた打ち回る。熱を発しているようで嫌な汗が背を流れる。
されど紗百合は迷い無く動き出す。そんなもの知ったことかと言わんばかりに、口端は吊り上がっていた。
(なんでだろう。勝ちたいって気持ちが先行してるはずなのに、この闘いを楽しんでる)
紗百合は魔法を放ちながらそんなことを考える。
身体の内側が干上がっていくような感覚は魔力が無くなる寸前である証拠。あと少しもすれば意識の混濁が始まるだろう。
(だけど、そんな状態が……凄く心地良い)
紗百合は笑みを一層深める。似たような経験をしたことがあるのを思い出したからだ。
それは姉である桐花との競い合い。負けた時は落ち込むほど悔しいし、勝てば心から嬉しいという気持ちが溢れ出す。
そしていつしか、勝負そのものが楽しくなっていた。
「あはッ」
そして紗百合は自覚する。自分には、戦闘狂の気があるのだと。
識ってしまったらもう止められない。枯れかけていた身体には不思議なほど力が宿り、限界だとしていたよりも更に一段ギアが上がる。
――否、限界はこの瞬間に捨て去った。
道半ばで尽き果てるのか、更なる先を見果てるのか。それは紗百合本人にも分からない。
だが、それでいいのだ。
これから先のことなど誰にも、それこそ神様だって分からない。
だからこそ、今この瞬間に『柊紗百合』という存在そのものを注ぎ込む。
それが紗百合の望む全力。
文字通り、自身に宿る全ての力を使うということ。彼女の魂が刻む鼓動、生命の旋律である。
根幹にあったのは、自らの限界を識りたいという欲望だった。
――突如、淡い光が場を照らす。
その源は銀の鍵の杖に幾何学模様が刻まれている部位、メモリアを収納している箇所だった。
「これって……」
誰もが想起するのは準決勝、第三戦と第五戦。育が車輪型の武器を手にし、恋が黄金の剣を掴み取る前に起こっていた現象。
それが意味するのは魔法の創造。新たな力の噴出であった。
「使わせませんよ!!」
「ッ!」
手を伸ばす紗百合、迫る触手を前に中断すると回避に意識を集中する。
メモリーズ・マギアはメモリアを装填、音声コードを入力するという過程を経て魔法を発動している。そして装填できるメモリアの数には制限がある。もし現在装填されていない魔法を使いたいのなら、新たに装填し直すという手間が必要なのだ。
戦闘においてメモリアの切り替える瞬間は隙以外の何物でもない。それ故に、恋たちは基本的に一度装填したメモリアを変えなくても良いように、汎用性が高いものから優先して装填するのだ。
勿論、状況によっては別の魔法を使わなければいけないこともあるだろう。その場合、戦闘の隙間を見つけて瞬時にメモリアを装填する必要がある。
だが、そこは流石に決勝の舞台に上がってきた魔法使い。相手がしたい動きをさせるはずも無い。
そしてその中でもルルの魔法は相手の動きをコントロールすることに長けている。一瞬でも対応を止めてしまえば転移した触手によって敗北を喫することになるだろう。
紗百合は防御に専念しながらも隙を伺う。しかし、ルルによる息詰まる波状攻撃はそれを許さない。常に先へ先へと追い立て、メモリアを入れ替える時間など微塵も与えないという意志が伝わってくるようだった。
新たな力は、使えない。紗百合は至極簡単に結論付けた。
直ぐに使えるものだけで戦術を組み立てる。
一瞬だけ視線を向けたのは杖に表示されているゲージ。その段階はようやく五つ目に到達した。
ルル・ミスカ・シュリューズベリィは誰とでも仲良くなれる優等生。笑う姿は可憐で、なんでも真剣に取り組む人。
それが私に対しての、周囲のヒトたちの評価だった。
だからだろうか、威勢のいいヒトに絡まれることもしばしば。好意的な評価を受けることが多い私は、そういった存在に目を付けられることが多かった。異性からの人気も高かった私を面白くないと思った女子たちもいた。
暫くは好きなようにさせておいた。怯え、か弱い一面を見せることで優越感を抱かせた。そうすれば奴らは更に調子に乗って、その行動と態度は日増しに増長していった。
そして頃合いを見てちょっと仕返しをしてやれば、そういう存在は面白いくらいに揃って態度を変えた。
誰もが私に恐怖の念を送ってくる。揺れ動く瞳は涙で濡れ、「もうしません」と譫言のように何度も繰り返す。そうして縋り付く姿を見下ろして思うのだ。ちっぽけで、哀れで、なんてつまらないんだって。
無論、これは過去の話だ。今では仲間内でも弄られる正真正銘の黒歴史である。
そんな私にも、大切な仲間が出来た。
父親違いの姉であるセラを初め、何かと波長が合うアル、クールぶってるけど実は誰よりも子供っぽいイヴ、そんな個性豊かな全員を纏めるナコ。誰もが一目置おくだけの魅力を持っていた。
本当に、私にはもったいない友達だ。
深海の闇に沈むだけだった私に上を向くことを教えてくれた。ヒトが持つ輝きと勝ちを、その身をもって伝えてくれた。
そして今、私は再び、輝きを目の当たりにしている。
繰り出される攻撃には一切の無駄も存在せず。あるのはただ相手を倒すという純粋な想いのみ。
全身全霊、全てを賭して食らいついてくる。その姿はとても眩しく、暖かい。
ルルの口端が吊り上がっていく。まるで紗百合が発する熱量に感化されるように。
限界は近い。
ああ、認めよう。私は――
「――サユリさん! 貴女と闘うの、すっごく楽しい!」
こんなに心震える闘いは何時ぶりか。
だからこそ、絶対に負けたくない。果てしない競争心が生んだ想いは、魔法を一段と強くする。
相手にとって不足は無い。
彼女は、己の全てを出し切って闘うに値する――最高の魔法使いだ!
触手が魔弾とレーザーを掻き消す。その光景はもはや見慣れたモノ。
だが、その毛色は違う。先ほどまであった衝突感は無く、いとも容易く打ち消して見せた。
それはつまり、触手の膂力が増したことを表している。
(――あれは、ヤバい)
紗百合は内心独り言つ。
膂力ば増したということは、通じる攻撃も少なくなるということ。いよいよ中途半端な威力の攻撃は牽制の意味も成さなくなりつつある。
そして何より、ルルの背後で蠢く触手の状態が変わりつつある。表面は沸騰したかのように泡立ち、まるで心臓のような脈動を見せる。悍ましいという他ない現象が起こっていた。
論理的な思考ではない、紗百合の本能がけたたましい警鐘を鳴らしていた。
「ここで決める、セット!」
【MEMORIA BREAK】
杖に備わる機構が展開される。出現する魔法陣は大技を繰り出すという意思表示に他ならない。
だが、それは致命的な隙だ。
紗百合は砲撃によって生じる反動に耐えるため、大きく腰を落とし足に力を込めている。それをルルが見逃すはずも無い。
瞬きの間に紗百合をぐるりと囲むように転移した触手。それぞれがうねりながら急速に迫り――
「――なーんちゃって。ロード」
【Loading, GATE】
突如として現れた転移門の中へと吸い込まれる触手群。転瞬門が閉じられたことで肉を断った鈍い音がやけに響き渡った。
それは紗百合が仕掛けた罠。自分たちの魔法の発動形態は既に知られていることを利用した戦法だった。
紗百合の必殺技、エクスセリオン・スマッシャ―は強大な反動がある。それを耐えるためにどうしても踏ん張りを必要とするため、身体が必ず硬直した状態になる。それを逆手に取ったのだ。
この土壇場で、紗百合と全く同じ魔法を使える者でも実行できるものは居ないだろう。間違いなく彼女の勇気が為せる技だった。
諸手となったルル。触手を失った今、その身を守るものは何もない。
「コネクトブレイク、ディスチャージ!」
【Count CHARGE:6. Full Burst】
巨大魔法陣とその周囲に踊る六つの魔法陣。凝縮された魔力は解き放たれ、極大の一撃を構える。
勝負は決まった――誰もがそう思った。
「――あーあ。やっちゃいましたね、サユリさん」
ぐしゃり、と。握り潰すような音。
紗百合の身体は、既に地面に無かった。
「な……」
驚愕に染まる瞳。
見下ろす先には手を翳すルルがいた。
紗百合の手から杖がするりと滑り落ちる。瞬間展開されていた魔法陣もろともその場から消え去った。
「触手を無効化する、という一点だけを見れば確かに良い策です。……私でなければ、ね?」
その瞳は異質の一言に尽きる。
極小の泡が幾つも集まって構成されているモノ。
渦を巻く銀河だった。
――澄み渡る空、銀の色が一つ煌めく。
「私の魔法は仕様上、攻撃座標を指定するため、空間に二つの軸を設定する必要があるんです。縦と横、みたいな感じに」
紗百合は藻掻こうとするが、徐々に抗う事すら出来なくなる。
まるで筋肉そのものが身体から無くなっていくような、奇妙な感覚。
――尾を引くは黄色。満たす輝きは想念。その数は一と六、合わせて七。
「そもそも、元を辿れば空間を支配する類の魔法。サユリさんが出口の無い亜空間に触手を吹っ飛ばしてくれたことで他次元軸への干渉権を得ることが出来ました。……とはいっても、本来の形ではない裏技のようなもの。操作性は最悪。ですが、このままサユリさんを落とすくらいなら造作も無い」
もう、瞼を開けることすら億劫になる。
紗百合の全身から力が、熱が、急速に抜け落ちていく。
――音は既に遥か後方。その姿は正しく流れる星と成らん。
「ありがとうございました。久しぶりに全力を出せて、楽しかったですっ!」
それは曇りなど欠片も無い、透き通った笑顔だった。
ルルが握る力を強めると同時、連動して空間が軋みを上げる。
それでも最後の力を振り絞った紗百合は、面を上げてルルを見据える。
「――ばーか。なんでもう、勝った気になってるのさ」
ニヒルな笑みを浮かべた紗百合。直後ルルの目が驚愕で見開かれた。
無いのだ、そこに在るべきはずのモノが。
紗百合の足元には、彼女を魔法使いたらしめる武器が影も形も無い。
――天を割らんばかりの音が轟く。
ルルは視線を空に向けた。
「……………………あ」
瞬間、闘技場が爆ぜた。
真っ先に襲い掛かるのは衝撃、次いで爆風。サブテラ―の建物には魔法防御が施されているが、それでも倒壊してしまうのではと思わせるほどの余波だった。
舞い上がる砂塵。その高さは闘技場を超え、見る者たちの視界を塗り潰す。しかしそれも十数秒経てば収まり始め、ぼんやりとではあるが戦場の輪郭を掴むことはできるようになった。
「空から轟音が鳴ったと思った時にはこの有様! 何がどうなってるのか分からないが、ルル選手とサユリ選手はどうなったんだー!?」
流れ込む風が手伝い、急速に視界が晴れていく。
再度観客たちが目にした闘技場は酷い状態だった。地面全てに蜘蛛の巣状に亀裂が走り、一種のクレバスのようになっている。その中央には、その身を銀の鍵の杖で貫かれたルルの姿が。
紗百合は凹凸だらけの地面を這い擦りルルの元へと辿り着くと、杖を支えに立ち上がる。既に力は残されておらず、生まれたての小鹿のように足を震わせていた。
されど着実に、少しずつその身を起こしていく。たっぷりと時間を使い立ち上がると、握り締めた拳を空へと突き出した。
「き――決まったー! 決闘祭決勝戦第一戦、サユリ選手対ルル選手の決闘は……サユリ選手の勝利だーっっっ! いやでも訳分かんない間に終わってしまった! 一体全体さっきのは何だったんだー!?」
紗百合は変身を解除。消えかけである地面に創り出した転移門を見やる。
種明かしをしてしまえば、先ほどの攻撃は紗百合によるものだ。地面と遥か上の空とを門で繋ぎ、杖を落とした。その位置でメモリアブレイクが発動、極大の魔力砲をエンジンにしたミサイル攻撃だ。
紗百合はルルの力が増した時点でまともな戦法を諦めていた。力押しで敵うような相手では無くなることを予見していたのである。
エクスセリオン・スマッシャー。蓄積の魔法と併用することで最大七段階の威力上昇が可能な必殺技。
ただ、その反動は並大抵のものではない。威力を上げる毎に乗算的に反動も増し、通常使用できるのは四段階目の連結まで。五段階目は反動を耐えることに全てを注がなければならないほどであり、体力もほぼ万全の状態でなければ使えない。
六段階目に関しては論外だ。そもそも紗百合本人が反動に耐えきれず吹き飛ばされてしまう。制御出来ない攻撃など、とてもまともには使えない。
――ならば、まともな使い方をしなければいい。紗百合はそう考えた。そうして行きついたのが魔力砲を推進力とする攻撃方法だった。それは閃光と共に空を翔ける流星の一撃だ。
ただ、転移門による触手の切断が逆風になるのは紗百合にとっても完全な予想外だった。当初組み立てていた予定ではルルの触手を切断した後、そのまま杖を投擲するつもりだった。
盾を剥がすはずの攻撃が、相手に最強の矛を与えることになるなど誰が考えるだろうか。紗百合はまんまとルルの魔手に捉えられた。
だがその瞬間こそ、間違いなく決闘の勝敗が分かたれたのだ。
紗百合は一瞬にして互いの位置関係を把握。もはや機械とも言えるべき精度で行われた演算によって、ルルの遥か上空に転移門を設置したのだ。
そして自らの身を囮として、油断を誘発した。最後まで勝利を掴み取ろうとする貪欲さが、そのチャンスを生んだのだ。
勝った、と思ったルル。
勝ちたい、と願った紗百合。
道半ばで目的地に辿り着いたと錯覚してしまえば、負けてしまうのは当然の帰結だろう。
「……っ、あー……流石に、無理」
ぱたり、と地面に倒れ伏す紗百合。
決闘中は極度の興奮状態にあったため痛みや疲労なども無視できていた。しかしそれは一時の幻のようなもの。闘いが終われば、その機能は正常なものへと戻る。
落ちかける意識の中、紗百合が見たのはルルの幸せそうに微笑む表情だった。
「……ありがとう、ルルちゃん」
闘ってくれた少女に最大級の感謝を。
そうして紗百合は、静かに意識を闇へと落とした。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
まずは一勝、幸先の良いスタートを切った恋たち。このまま勢いに乗ることができるのか。
優勝を勝ち取るため、新たな戦いが幕を開ける。
次回は桐花vsナコの導入になります。ぜひお楽しみに!




