表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メモリーズ・マギア  作者: 雨乃白鷺
混沌の章 魔法少女決闘祭
37/166

第2話 謁見

2章第2話です!

タイトルの通りの内容です!


「宇宙鉄道イニスをご利用いただきありがとうございます。次はサブテラー、サブテラーでございます。着陸の際に揺れるため、お近くの吊革や手すりに掴まってください」


 サブテラーという異世界に視線を吸い込まれていたが、窓に映る景色が下に向かって動いていることに気付いた。その時に男性の声で聞こえた車内アナウンスに傍にあった手すりを掴み周りを見ると他の四人もそれぞれ注意に従っている。

 地面に向かって落ちるように走行していた列車は遂に地面に引かれたレールの上に降り立ち車内を揺れが襲うが、その大きさは体が少し揺れる程度で驚くほど小さなものだった。徐々に速度を落としながら建物の中へと入るとその車体をゆっくりと止めると数秒後その扉が自動的に開かれた。


「さあみんな、荷物を持って降りよう!」

「おー!」


 元気よく返事した紗百合が電車を降り、それに続けて電車を降りる。まず感じたのは太陽の光も程よく差し気候はとても丁度良いもので過ごしやすいものであるということだった。また周りを見渡せば他の客もちらほらいるようだがその姿は獣と人間が混じったような見た目であったり、八本足のクラゲのような生物がその足を上手く使い新聞のようなものを読んだりしていた。いま自分がいる場所が本当に異世界であることを実感する。

 そんなことを考えていると背後にある扉が音を立てて閉まると列車が走り出していく。それは徐々に速度を上げ最後列が小さくなっていったところで空へと飛び立ち、穴が開くように現れた真っ白な空間の先へとその姿を消していった。


「お兄ちゃん早くー!」

「わ、悪い! 今行く!」


 ホームにある石造りの階段を急ぎ足で降りていくとそこには広げた空間の中に重厚感を感じさせる銀色の扉が幾つかある。その内の一つ、壁に設置されたボタンをベネトが押す発していた雰囲気とは反して軽々と開いた。

 ベネトは全員乗り込んだのを確認すると壁に設置されたボタンを押すと扉が閉じられると僅かな浮遊感が一瞬だけ感じた後に扉が開かれる。そこは先ほどまでとは変わらない広めの空間に石造りの階段が見えるだけだったがベネトは降りた。


「おいベネト、さっき乗ったばかりだろ?」

「え? 着いたんだよ?」

「……まともに動いたようには見えなかったが」

「さっき一瞬ふわっとしたでしょ? それが転移の合図だよ」

「転移? そんな予兆とかなかったけど……」

「サブテラーには様々な場所に、転移が行えるポータルが設置されているんだ。それもその一つだよ」


 その言葉と共に階段を昇って行ったベネトを追い、階段を駆け上がると広けた空間へと出る。

 そこは木や石で作られた倉庫のような場所。周りはがらんどうで、唯一あった木造の扉のノブに手をかけゆっくりと押し出した。

 次の瞬間、眼前に広がったのは多くの店が立ち並び様々な種族の人型が行き交う大通りだった。

 買い物をする主婦、楽しそうに走り回る子供、きっちりとした服に身を包み話し込んでいる男性、誰もが種族の違いなど気にせず活気に溢れていた。


「みんな、観光は後だよー」

「あぁ、すまんベネ――」


 そこまで言いかけて、思考が停止した。ついでに今、自分で間抜けな顔をしていると分かる。

 そこに居たのは黒いローブに身を包んだ、若さを感じさせる銀髪の男性。その顔に見覚えはないが此方を向いている以上、俺たちに声を掛けたのだろう。


「……えっと、どちら様ですか?」

「やだなー僕だよ、ベネト。……そういえば人間態としての姿を見せたのは初めてだったっけ?」

『……はいぃ!?』


 驚愕の声が上がる。俺だけではなく他の4人からもだった。

 このメンバーの中では葵も銀髪だが、それとはまた違った綺麗さを持つ髪に見上げるほど高い身長。おそらく一八〇センチ前後か。

 血を流し込んで造られたような真紅の瞳や雰囲気などよくよく見れば面影があり、何より声が一緒であることが本人である証明だった。


「いやーごめんごめん。こっちだとこの姿の方が何かと都合がいいからさ、魔法で変えてるんだよね。……って僕のことは後で良いんだ、ほら行くよ」


 好青年へと変わったベネトに着いていくように建物と建物の隙間を通っていく。すると今度は城へと続いている大通りへと出る。馬車などが走っていく中、現代の道路で言うなら歩道とも言える場所にて止まっている。


「……ん、時間も大丈夫っと」


 懐中時計をローブから取り出し確認した時、こちらに向かって来る音にその方に視線を向けると2頭引きの馬車がこちらに向かって走ってきていた。それは徐々に速度を落とすと俺たちの目の前に綺麗に止まり、馬車を操作していた人物が地に足を付ける。整えられた金髪に髭、親しみのある顔つきをしていた中年の男性だった。


「サー・ベネト、よくお帰りになられましたな! こちらの五人がそうなのですかな?」

「そうですよ。みんな、こちらはバスガルトさん。運送業をしてる人で、今日みんなを王城まで送ってくれる人だ」

「よ、よろしくお願いします」

「こちらこそ。ささ、乗ってくだされ。安心安全確実を謳うバスガルト、しっかりと王城に送り届けますぞ」


 馬車に乗り込むと全員が座ったのを確認したバスガルトさんは馬に指令を出すと馬車が動き始めた。揺られつつも車窓に映る西洋のような街並みを眺めていれば前の方からバスガルトさんから声が発せられた。


「皆様はどこの星から来たのですかな?」

「えっと、地球っていうんですけど……わかりますか?」


 その問いに対し、答えたのは紗百合だった。


「おお、地球ですか。勿論知っていますよ」

「そうなんですか! でも、どうして?」

「ここサブテラーでは大規模な種族から絶滅が噂されていた種族まで様々な星の民が生活しています。地球出身の方を乗せることもあったのですよ」

「そうなんですか!? ベネト、私他の地球出身の人とも会ってみたい!」


 爛々とアメジストの瞳を輝かせる紗百合。興味があることを見つけたら幼子のような無邪気さを見せるのは彼女らしいとも言えた。


「それは後のお楽しみに。今は謁見が先だ」

「えー! ベネトのケチ!」

「ほっほっほ。随分と慕われているようですな」


 笑いながら交わされる会話に自然と頬が吊り上がる中、それを尻目に白に飾られた王城に目を向ける。それは空から見た時と変わらずに高貴さを感じさせるものだった。


「……ん?」


 ふと視界に映った塔のような建物の屋根の上に赤い布が風に揺られていることに気付く。目を凝らして見てみるとそれは人間のようで、どうやら赤い布を頭から被っているようだ。

 それを観察していると視線の先に居た存在が顔を上げると辺りをキョロキョロと見渡す。そしてその顔がこちらへと向き、目が合った。

 遠くにいるため表情など細かい情報は分からなかったが、視線の先に居たその人物はその場で器用に立ち上がると大きく手を振っていた。おそらく恋に向けてのものだと思われる。

 小さく手を振り返した恋。その人物は一度その動きを止めたかと思うと更に激しく手を振り始めた。どうやら向こうにとっては見えているらしく、相当視力が良いことが伺えた。


「うおっ」


 突如馬車が停止する。顔を上げてみればバスガルトさんが門の手前に居た兵士らしき人物と何やら紙のようなもの片手に話していた。おそらく承認か確認などが必要なのだろう。

 それに安心していると、意識を戻すと隣に座る葵に少し寄ってしまったことに気付く。


「す、すまん葵。大丈夫だったか?」

「……大丈夫。むしろバッチ来い」


 元に戻った後に見た表情は変わらず無表情ではあったがその雰囲気で不機嫌にはなっていないように感じたためほっとしたのも束の間、逆隣に座る育からは何か不機嫌なオーラを感じ取った。


「……ふっ」

「……!」


 火花を散らす葵と育。それを見てベネトと紗百合は顔を逸らし震えていて桐花はポカーンとしていた。

 正直助けて欲しい気持ちでいっぱいだがここは馬車の中。逃げ場なんてものは存在しないため、大人しく諦めた。

 ふと、先ほどまで見ていた塔へと視線を向けてみる。そこにはもう赤い人はいなかった。


 そうしていると兵士との会話を終えたのか馬車が動き始め門の内側へと入ると再び馬車が止まり全員が降りる。見上げれば城の大きさ、豪華さも実感出来た。


「お城とか本でしか見たこと無いけど実際に見ると全然違う。なんかすごいってことしかわかんないや」

「あ、それ分かる気がする」


 育と紗百合で感想が述べられていると城から燕尾服に身を包んだ男性が姿を現す。初老を迎えた白髪の男性だが、修羅場を潜り抜けて来たかのような顔つきや隙など微塵も見られない所作は歴戦の武士を思わせる。


「サー・ベネトと地球の戦士の方々、ようこそサブテラー城へ。私の名はオルランド・グレファー。サブテラー王城の執事長を務めています」

「わざわざありがとうございます、サー・オルランド。案内は貴方が?」

「ええ。僭越(せんえつ)ながら、私がその任を仕りました」

「そうですか。でしたらお願いします」

「はい。それでは皆様、ご案内いたします」


 オルランドと呼ばれた男性に着いていくがまま場内に入ると、真っ先に目に着いたのはシャンデリアなど細やかに作られた品によって装飾されたホール。階段を上って廊下を歩いた先の扉が開けられ、そこにはソファーなど寛げる空間が広がっている。


「申し訳ありませんが、王は現在議会に出席しています。なので、終わるまでの間はこの部屋で暫く待機していただきます」

「分かりました。みんな、休んでいいよー」


 ベネトは軽い調子で言う。しかし正直な気持ち、休まる気がしない。

 ここに来るまでの間でも分かるが城というものに入るとかなり緊張することが分かった。特にこれからサブテラーという国のトップに会うらしい。そんな状態で休めと言われても休めるわけが無かった。


「マジですか! いやーここまで結構歩いてて疲れてたんですよねー」


 そんな時、桐花から声が聞こえた。特に緊張しているといった訳でなくいつも通りで。

 笑顔で真っ直ぐに部屋にあるソファーに向かい腰を下ろす。その行動を自然と取れるメンタルの強さには戦慄すら覚える。


「ちょ、お姉ちゃん!? す、すみません!」

「構いません。あなた方は招かれた客人、畏まらずに寛いでください」

「え、あ、ありがとうございます。そういうことなら……」


 意に介していないとばかりに発せられた言葉にソファーに座ると身体が少し沈む。手のひらで触った感触は家の物とは比べ物にならないほど心地よく、高級品とはこいうものかと実感する。

 そうして暫くすると目の前にあるテーブルにティーカップが置かれる。その中には温かく赤みがかった液体が注がれていた。


「カールティー、サブテラーで飲まれているお茶です。味の癖が少ないので飲みやすいかと」

「あ、ありがとうございます」


 カップを手に取るとゆっくり傾けそれを一口飲む。あまり食に頓着しないものあるかもしれないが、それは普通に美味しいと思えるものだった。


「……美味しい」

「ありがとうございます。皆様もどうぞ」


 オルランドさんによって次々に置かれていくティーカップとお茶菓子と思わしきもの。それをぼうっと見ていて――少し引っかった。


「あの、オルランドさん」

「はい、何かありましたか?」

「い、いえ。何があったとかそういうのじゃないんですけど……オルランドさんって、もしかして剣とかやってるんですか?」


 瞬間、オルランドの目が細まった。


「……どうして、そうお思いに?」

「えっと、手に随分タコがあるなって」


 気になったのはオルランドの手。執事の仕事などてんで分からないが、少なくとも普段生活する上では絶対に出来ない場所にタコがあった。その出来方と今までの無駄のない所作などから、彼が剣を握っている姿を幻視したのだ。

 オルランドは自身の手のひらを見つめる。上げられて再び見えたその顔は、まさしく戦士のものだった。


「どうです、サー・オルランド。面白いでしょう?」

「……良い観察眼をお持ちのようですね、レン様」

「……え、俺名前言いましたっけ?」


 直ぐに元に戻った表情に驚くが、それよりも名前を呼ばれたことの方が驚きの度合いでは大きい。何故なら、自分たちは特に名乗ってはいないはずだから。

 思考を巡らせていると、直ぐに回答が得られた。


「予めサー・ベネトより報告は受けております。他の四名はアオイ様、イク様、サユリ様、トウカ様ですね」

「……合ってます」

「な、なんか様付けで呼ばれるとむず痒いね……」

「そう? ちょっと偉くなった感じして良いと思うけど」

「うーん、私は当たり前みたいに感じてなー。あんま特別感とかないや」

「……お姉ちゃんは何様なの?」

「え? そりゃ誰もがひれ伏す魔王桐花様でしょ」

「……ねぇお姉ちゃん、その発言バカ丸出しって分かってる?」

「なにおう!?」


 ほどほどに緊張感も解け口々に言い合いながらお茶を楽しんでいると扉が軽く叩かれる音がする。開かれればそこには給仕服に身を包んだ侍女がいた。


「失礼します。女王がお目見えになりました」

「分かった。それでは皆様、ご案内いたします」


 その言葉と共に立ち上がると控室から再び廊下へと出て行く。


「あの、オルランドさん。サブテラーの王様って女王なんですか?」

「そうですが。……事前に聞いていないのですか?」

「えっと……王様に会うとしか聞いてないです」


 それを聞いたオルランドは僅かではあるものの反応を見せた。


「……サー・ベネト」

「あっははー、そっちの方がサプライズで楽しめると思いましてね」

「あなたの“性質”は理解出来ていますが、それでもほどほどにお願いします」

「うーん、まあ今回は悪ノリしすぎたね。申し訳ない」


 そんな会話が交わされる中で歩いていけば、大きな広間に辿り着く。

 その場所に入った瞬間、空間全体に圧のようなものを感じた。


「サー・ベネトと報告にあった五人をお連れしました」

「うむ、よくやった。下がれ」

「はっ!」


 少し視線を上げた先、玉座には赤い衣装を身に纏った女性がいた。

 絹のようなきめ細やかな金髪に吸い込まれそうなほど綺麗な碧眼。そして頭の頂から色白な四肢の先に至るまでのスタイルは完璧で、発せられた声は凛々しいものであるはずなのに甘いとすら感じさせる。

 そして何より――


「さて、まずは自己紹介とでもしゃれ込もうか。我が名はペトー・レナトゥス・タルレイン。このサブテラーを治める王である。――盛大に歓迎しよう。地球を救いし戦士たちよ」


 ――微笑みを浮かべるその姿が、恐怖を感じるほどに美しかった。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

まだまだ序盤なので頑張って話を進めていきたいと思います。


ここからは少し作者事情を。

書いてて思うのが、序盤が1番書くの辛いんですよね……全然筆が進まない。

しかも年末で色々ごたついているせいで更に筆が進まなくて相当困ってます。もっと時間を有効に使うためにも高速で書き上げるようにしないとですね。

読者の皆様、待たせてしまうかもしれませんが失踪するようなことは決して無いのでご安心ください。


さて次話のことですが……正直、書くのすっごい悩んでます。

恋たちは異世界なんてものに初めて来たわけですし、それに対する描写もしなくてはいけないのでなかなか話が進まないんですよね……。

なので暫くはそういう話の展開になるかと思います。具体的にはメモリーズ・マギアの開発者に会うところまでです。そこを抜けてしまえばあとは章タイトルの通りの話が展開できるかと思います。


なので戦闘シーンをお楽しみの皆さん、もう少しだけ待っていてくださいね!


それでは、後書きはここまで!

また次話でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ