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メモリーズ・マギア  作者: 雨乃白鷺
始まりの章 キミの想いが魔法になる
12/162

第11話 その少年、危険につき

暫く更新をとめていて申し訳ありません!生きてます!

これからまたバンバン書いていくので応援よろしくお願いします!

それでは11話です!


「恋先輩って……魔法使いなんですか?」

「……え?」


 突然聞かれた内容に途轍もない衝撃を受ける。その時微かに聞こえた声の方を向けば人が階段の影に人がいるのを見つけ心臓の音がやけにうるさく感じたのも束の間、そこには見慣れた銀髪がはみ出ていた。どうやらあそこにいるのは葵らしい。


「先輩、どうしました?」

「ああ、いや。なんでもない」


 目の前の少女にしか見えない少年――浮泡(うきあわ)(いく)に視線を戻す。顔も知らない生徒にこんな話を聞かれるわけにはいかなかったので安心したが、問題は何も解決してはいなかった。


『ベネト! なんか魔法のことバレてるっぽいぞ!』

『今、アオイと一緒にレンのこと見てるから分かってる! な、なんでバレたんだ……』


 一方、念話では大混乱だった。大慌ての一人と一人の声が響き渡る。


『……とりあえず、なんでそう思ったのか聞いた方が良い』

『そ、そうだね! まだバレたって決まったわけじゃないし! レン、お願い!』

「……あー、育君だっけ。どうしてそう思ったんだ?」


 落ち着かせるかのように静かに告げられた提案に賛同し即実行に移す。しかし、その返答に更に頭を痛めることになった。


「ボク見ちゃったんですよ! 恋先輩と女子と喋る鳥が一瞬でいなくなって、暫くしたら消えた場所にまた現れたところ!」

『おい! 全部見られてるみたいなんですけど!?』

『なんでええええええ!?』

『……これは、終わった』


 目を輝かせながら語る育を尻目に再び大騒ぎになる脳内会議。冷静だった葵も諦めの姿勢を見せていた。


「あー、いや、見間違いじゃないか?」

「そんなことないです!しっかりこの目で見ましたもん! さあさあ、どうなんです……か……」


 食いつくように迫ってくる育だったが突如よろめき前のめりに倒れた体を支える。その顔を見つめれば規則正しく呼吸しているその様子は眠っているようだった。


「ふう。強引だけど、今はしょうがない」


 声のした方にはいつの間にか姿を現したベネト。どうやら彼はベネトの魔法によって眠らされたらしい。


「……大丈夫?」

「なんとか。いや、寿命縮むかと思った。……それでベネト、この子大丈夫なのか?」

「眠らせただけだよ。今回はだいぶ知られちゃってるからしっかり忘れて貰わないと」


 そう言うとベネトは育に対して魔法を発動する。暫くして、魔法を発動している証の淡い光が止むと恋は育の体を優しく背負った。重さがほとんど感じないことに少し不安になる。


「とりあえず、この子は保健室に運ぶから先に行っててくれ」

「……ん、分かった」

「おーけー。レン、気を付けてね」

「りょーかい」


 暫く歩き保健室に辿り着くと気を付けて扉を開け先生に事情を誤魔化しながら説明する。そしてベッドに背負った少年を優しく降ろし寝かせると制服の裾から覗く手首はとても細く、体格と合わせれば軽かったのも納得がいった。

 少し乱れていた制服を軽く直してあげると先生に挨拶をして保健室を出て玄関に向かうとそこには葵が丁度靴を履き替えていたところだった。


「ベネトは?」

「……私の肩の上」

『ちゃんといるよー』


 姿の見えない相方の所在を問いかけながら靴を履き替えると二人並んで歩き出す。今日もこれから魔獣討伐に向けてのパトロールが始まった。





「今回も鳥の魔獣か……俺の仕事が……」

「……任せて」


 学校を出てから30分後、まだまだ夕方の時間に魔獣が出現しシャドウ・ワールドへと侵入したがそこには待ち構えるように空を飛び回る鳥型魔獣の姿があった。葵が初めて倒した魔獣も鳥型だったが今回のものはそれよりも体つきがだいぶ小さいものだ。

 背後では葵が意気揚々としているのは、どうやら戦えるのが嬉しい、というよりは役に立てていることに喜びを感じているのかもしれない。


「ロード」

Loading(取得), CHASER(追尾弾)


 魔法を発動させ矢を生み出し弓を引き絞る。打ち抜こうとしたその瞬間、空を飛び回っていた魔獣が煌めくき消えたと思えば目の前に突然その姿が現れた。


「ロードッ!」

Loading(取得), PROTECTION(守護)


 生み出した盾を構えれば甲高い音と共に衝撃が腕に伝わる。魔獣は鋭いクチバシを槍のように扱った突進攻撃を繰り出していて盾からは火花が散っている。


「……逃さない」


 背後から矢が放たれたと同時に空へ離脱する魔獣だったがそれを追うように動く矢。魔法の矢が暗い空に輝いた線を描いていたが再び魔獣が煌めくとその姿は消え、放たれた矢は対象を見失ったのか空に消えていった。そして魔獣が消えた直ぐ上の方に視線を向けるとそこにはホバリングするかのようにその場で停止している鳥型魔獣の姿が。

 そこから何度か葵が追尾の矢を打ち込むが魔獣が突然消えた挙動をすればそのこと如くが当たらずに消えていく。


「あれ、どう思う?」

「……転移の魔法か、高速移動の魔法か。どっちにしても厄介だけど、見た感じだとあまり離れた場所に移動は出来ないみたい。……だったら、やれる」


 そう言うと葵はケースから拡散する矢を生み出す魔法『クラスター』のメモリアを取り出すと先ほどまで装填していたチェイサーと入れ替え装填する。


「レンちゃん、守りはお願い」

「任せとけ」


 葵の目の前で盾を構えた状態で腰を落とし空を舞う魔獣を睨みつける。


「……セット」

【MEMORIA BREAK】


 葵の弓から機械音声が聞こえると同時に巨大な矢が生み出される。それを番え思いきり引き絞ると発生した魔力によって辺りが照らされ始める。


「ピィィイイイッ!!」


 笛のような甲高い鳴き声が響き渡った瞬間先ほどまで見ていた姿を消す現象を何度も起こしながらこちらに突進してくる。そして盾と接触するかと思ったその瞬間、魔獣の姿が消え――葵の側面へ移動していた。

 しかし魔獣が姿を現し突撃体勢に入ったその瞬間、身体を思いきり捻った葵は魔獣へその弓を向ける。


「……まあ、私の方に来るよね。そう思った」


 弓を向けられた魔獣はすぐさま空へと離脱して行くが構わずに引き絞った弦を離す。すると放たれた矢は4つに分裂し、そこからそれぞれが更に4つに分裂することを繰り返し気付けば前方を埋め尽くすほど魔力で出来た矢が輝いていた。


「……おしまい」

【ASSAULT STRIKE】


 パチン、と。葵が指を鳴らしたその瞬間、浮かんでいた魔力の矢が一斉に爆発を引き起こした。

 巻き起こる爆風と光に目を腕で覆う。暫くして腕を離すと空中で粉々になった魔獣の体が黒い粉となって空に消えていくのが目に映った。


「葵、それやっぱりエグいぞ」

「……勝てばよかろう、ってやつだよレンちゃん」

「いやまあ確かにそうだけど……なんか釈然としない」


 目の前で行われた残虐とも言える攻撃にげんなりする俺と得意げに胸を張る葵。

 そんなこんなで今日の魔獣討伐は特に危機的な状況も無く終わらせることで出来たのだった。

 魔獣討伐の帰り道、俺達はランプが薄っすらと照らす公園のベンチに座っていた。


「葵、これでよかったか?」

「……ん、合ってる。ありがとう」

「ならよかった。ほいベネト、お前の分も」

「いやーありがとねレン。小腹空いちゃってさ」


 コンビニに寄って買った飲み物をそれぞれに渡すと自分の分である野菜ジュースのパックにストローを差し込むと一口飲む。右隣では葵がベネトがサラミを美味しそうに食べ左隣の葵はペットボトルの紅茶を飲んでいた。


「やっぱり遠距離攻撃の手段がある人が一緒だとすごい戦いやすいな。今日も早く終わったし」

「……そう?」

「そうだよ。もし俺だけだったらどんくらい時間かかってたことか……」


 手に持ったパックをベンチに置き唸る。

 俺の遠距離攻撃手段はブラストの魔法のみ。しかしその魔法も葵に切っ掛けを与えられなかったらいつまでも制御できなかったかもしれない。そう考えると葵の加入はとてもありがたいものだった。


「んぐんぐ……そうだ。シャドウ・ワールドの結界の解析、結構進んだよ!」

「本当か!?」


 思わぬ朗報につい声を張り上げてしまう。暗闇に響く声に申し訳なさを感じつつも少し落ち着くことにした。


「今はまだ魔法式の解読に時間がかかってる状態だけど、それが終わればどこから結界が作られているのかが分かるはずだ」

「……それが終われば」

「僕たちから攻めに行ける。トウカの魂の追跡封じに関してはプロテクトが硬すぎて何も出来ない分、こっちに縋らなきゃいけないのは苦しいけどね」


 その事実に拳を握る手に力が入る。

 ようやく、桐花の魂が見つかるかもしれないのだ。


(桐花……頼む。もう少しだけ待っててくれ)


 再び決意を胸にする。彼女を救うためにも、弱音を吐いている暇なんてないのだから。


「そのためにも休む時は休んでね。いざという時に戦えない状態っていうのは駄目だよ?」

「おう」

「……うん」

「それならよし!それじゃあ、これからも頑張ろう! おー!」

「お、おー?」

「……わっしょーい」

「……葵、ここは祭りの場所じゃないぞ……」


 そんなこんなでこの日は葵を送り届けて解散となった。

 しかしこの時俺は思いもしなかった。いや、頭の隅に浮かぶことすらなかったのは仕方のないことだろう。

 何故なら、俺自身は解決したと思っていたのだから。





「恋先輩、やっぱり魔法使いなんじゃないですか? 昨日、突然ふわーってして気づいたら保健室で寝てたんですもん! あれ、絶対何かしましたよね? ね!?」

「……なんで?」


 そんな情けない声が口から小さく漏れてしまったが、仕方のないことだろう。

 魔獣を無事に倒して次の日の放課後。俺は記憶処理を施したはずの昨日の少年に再び言い寄られていた。


『おいベネト、どうなってる……!』

『いやいやいやちゃんと忘れさせたはずだよ!?』


 念話による脳内会議は大慌てだった。俺も葵もベネトが魔法を使っているのをしっかりと確認したし、その慌てる様子から嘘をついていないことも何となく察することが出来た。


『……本当に、間違いない?』

『本当だよ! こればっかりは嘘も何もない! ちゃんと魔法は使ったのにどうして――いや、待てよ?』

『……どうしたの?』


 階段の影で待機する葵も不審に感じたのか問いかけるがそれに対して食い気味に返答するベネトだったが何かに気付いたようだ。


『特異体って言って、魔法では説明できない能力を持っている生物をそう呼んでいるんだ。サブテラーでも、精神干渉系魔法の影響を一切受けないって人がいるんだけど……もしかしたらこのイクって子もそうなのかなって』

『……もし仮にそうだったとして。記憶処理できないけど、どうするの?』


 ベネトはだんまりと考え込んでしまう。

 だがそれはこのことが重要である証でもあった。結局、記憶の処理が出来ないのなら俺たちのことを忘れさせることが出来ない。つまり最初にこの子が魔法のことを知った時のように俺たちのことを何度も付け回す可能性が高くなる。


「……」

「も、もうなんですか先輩! そんな見ないでくださいよっ」


 目の前にいる少年を観察する。

 少し――いや、かなり女子っぽいところが、それを除けば普通の男子中学生だ。魔法のことを知ってもらいたく無いのは当たり前だが、だからと言って何も説明をしないとこの子が事件に自分から関わってしまう危うさもある。

 そんなジレンマに陥っていると考え込んでいたベネトが再び口を開いた。


『レン、アオイ。僕はこの子にも協力してもらった方が良いと思う』

『……一応聞くけど、理由は?』

『この子、このまま放っておくとレン達を追って自分から事件に巻き込まれかねない。だったらいっその事こっち側に引き込んだ方が安心できる。いま測ったけど、メモリーズ・マギアの使用条件の魔力は満たしてるみたいだし』


 確かにベネトの言う通り、そうした方が良いのかもしれない。

 それでもこの目の前の少年を俺たちの事情に巻き込むというのは気が引けた。


『……私は、賛成』


 しかしそんなとき、ベネトの意見に賛同する声が聞こえる。それは葵の物だった。


『葵!』

『……人数が増えれば、それだけ魔獣を倒すのが楽になる。そうすればレンちゃんと私の負担も減って、安全性が増す。……初めは上手くいかないかもしれないけど、それでも長く見積もれば、絶対に得になる』


 事実、葵が一緒に戦ってくれるようになっての戦闘はかなり楽になった。そう考えると確かに戦力の増強という面でも、良いことがあるのは分かる。この提案を押し返すにはこれらの利益を覆すだけの理由が無ければいけない。


 はあ、とため息を零す。俺自身の気持ちでは巻き込みたくないというのが強いが、現状そうも言ってはいられないのも確かだ。


「……育君、だっけ?」

「はいっ! なんですか、恋先輩っ」


 可愛らし気に首を傾げる男の子……いやこの場合は男の娘なのか?まあどちらでもいいだろう。

 理解は出来る。納得は……できそうにもないが、この子の身の安全を考えると話す他ない。

 腹を括ることにした。


「降参だ。話すよ」

「……! ということは、聞かせてもらえるんですね!?」


 ずいっと近寄ってきて目を輝かせているその目を見ると、こんな少年を巻き込んでしまう自分に嫌気がさす。しかし話すと決めたのだ。巻き込むならば、危なくなったら全力でこの少年を守らなければいけない。

 そんな新たな決意が、胸の中で芽生えたのだった。


この作品を読んでいただたきありがとうございます!

評価、感想をくれると嬉しいです!

また誤字、脱字等を見つけた場合は報告をお願いします!


作者のTwitterはこちらとなっています。名前通りの白い鷺のアイコンが目印です!

〔@Ameno_Shirasagi〕


ここまであとがきに付き合っていただきありがとうございました。

今後もこの作品『メモリーズ・マギア』をよろしくお願いします!

それでは次話で再びお会いしましょう!

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