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半端者達、現実世界と異世界をその手で救え! 〜知らんけど〜  作者: 群青 黎明
 一章 『繋がりは拒否する間も無く』
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 一章 6 『やっとこさ帰宅しまして説明会』

 一章 6 『やっとこさ帰宅しまして説明会』




 一連の事件を終えてなんとか無事に帰宅。

 絵梨花は一旦家に帰る、とのことで玄関前で別れる。

 色々な事が起こりすぎてこんがらがってる反面、少しワクワクしてきている自分がいた。

 実際、平和が一番なのは事実だが、あんな事に巻き込まれては確実にあの魔法とかに無関係な人間ではなくなってしまったわけで……。もしかしたら魔法を使えたり使えなかったり……。

 あれ? オレってこんなにチョロかったのか?


 ーーとかなんとか思いつつ家に入り自分の部屋の扉を開ける、と


「おお、お帰り。やっと帰って来たね」


「……何で居るんだよ瞳姉」


 そこには瞳姉がオレの部屋で当たり前のごとくくつろいでいた。


「どうやって入って来たんだよ……って合鍵でか」


「そうそう。アンタのお母さんにはいつでもおいでって合鍵渡されてるし。アンタたちの面倒見てた時からね。心配しないでも誰かに用が無いときは入ってないから」


 そういやそんな事になってたんだった。オレ達兄妹、そして絵梨花の小さい頃の面倒を見てくれて、というか主に遊び相手になってくれていた瞳姉はオレの親に鍵を渡されている。


 それにしてもだ、この歳になって自分の部屋に家族以外の異性が入るのはちょっと……。しかもオレが居ない時にだ。彼女とかならまだしも。まあ彼女なんていないんですけどね。ええ。

 男子なら大多数が賛同してくれるであろう。男子も男子で色々あるんだよ……ね?


 しかし瞳姉が部屋に居るなら、あの現実に起きた奇々怪界な出来事の事を聞く以外、今はあり得ない。


「……ていうかお腹減ったね。なんか作ってあげようか。絵梨花もついでだし呼んでおいで。台所借りるね」


 そして鍵と同じような感じで瞳姉にはオレの家の冷蔵庫の中の物、並びに台所の使用許可がオレの親からでている。

 そういや昼ごはんがまだだった。帰ってきてすぐ瞳姉が部屋にいた、という驚きで昼ごはんを食べてない事なんて頭から吹っ飛んでいた。

 しか〜し、腹が減っては戦は出来ぬと言うではないか。朝飯も食べていないし、食うものは食わねば体がもたない。

 そして瞳姉の料理はなかなかのものだ。なんでも時間がある時に勉強したんだとかなんとか……。




 してオレは絵梨花を呼びに隣の家に。


 ーーピーンポーン


「はい、どなた?」


「隣の天才でーす」


「あぁ、咲ちゃんね。絵梨花よね。ちょっと待っててね。……春香ー、咲ちゃん呼んでるわよー」


 インターホンに出てくれたのは春香のお母さんだった。


 ……ガチャ


 絵梨花が出てきた。制服のままか。着替えろよな……オレもか。


「……アンタさ、いい加減うちのインターホン押す時にするあのアホな挨拶やめたら?」


 春香の家のインターホンを押す時は、誰が出てもこの挨拶をしている。オレは小学三年ぐらいから、ずっとこの挨拶を続けている。我ながらちょっと凄いと思った。


「いいじゃんか。結構気に入ってるんだよなあの挨拶。絵梨花の家の誰が出てもオレって分かってくれるし。てか実際天才だしな」


「咲都のどこが天才なのよ……アホ丸出しのバカじゃない」


 いやいや、せめてアホかバカどっちかに統一してくださいよ絵梨花さん。


「瞳姉がごはん作ってくれるって。まだ食べて無いよな?」


「そうなの? さすがにまだ食べてないよ。じゃあごはんいらないってお母さんに言ってくるわね。てか瞳姉早いわね」


 そういって絵梨花は一旦家に戻る。

 少しして絵梨花がオレの家に。

 ーーそういや絵梨花を部屋に上げるのもちょっと久しぶりだな。制服姿の絵梨花がオレの部屋に……やべぇ、ちょっと興奮してきた。


「相変わらず部屋は綺麗に片付けられてるけど趣味満載の部屋ね。もう少し何とかしたら?」


 そう、オレは趣味といわれるものが多いので部屋中に趣味が反映されている。

 本、漫画に始まりアニメのDVDに音楽鑑賞用のCD(主にアイドル、アニソン)、ゲーム。アウトドア系の物なら、釣り道具にサバイバルゲーム用のエアガン……と、キリが無い。

 ほんと、多趣味はお金がかかる。なのでバイトをしているわけだが。

 何とかしたらだと? 余計なお世話ですわ。何とかしてコレなんだよ。


「女がオレの部屋に一人……ゴクッ」


「はっ⁉︎ キモ! 第一瞳姉もすぐそこにいるじゃない。相変わらず妄想がお好きなんですね……そっちのほうのも」


 絵梨花が軽く引き気味でこちらを見てくる。

 しまった、またやってしまった。何を口走ってるんだオレは。頭の中で考えた事が口に出る癖がこんな時に限って発揮されるなんて……。

 そう、オレの妄想癖は知られている。男友達ならまだしも……実に恥ずかしい話しだ。


「うるせーよ。てか帰りに起こったアレは何だったんだよ。それを聞くために絵梨花と瞳姉を部屋に上げたんだぞ。瞳姉のごはん出来るまでにちょっとでもいいから早よ説明しろや〜」


 オレはそう言い絵梨花に向けて両腕を突き出し、指をワキワキさせる。必殺こちょこちょの構えだ。


「ちょっと! それだけはやめて!」


 絵梨花と瞳姉、二人を部屋に上げた目的はさっきの事件について聞きたいからだ。妄想を捗らせる為にではない……けして。

 とか何とか話していると


「ごはん出来たよーってあれ? お二人さんイチャイチャしてる途中だった〜? ごめんねぇタイミング悪くて」


「「違う!!」」


 台詞が被ってしまった。が、それも仕方ない。

 一ミリたりともイチャついてなんかいなかった。勝手な言いがかり、およびその若いカップルを見たおばさんあるある、みたいなリアクションはやめてほしい。まだ若いくせに……ってそういや瞳姉がいくつか聞いた事無いな。まあ見た目若いし二十前半ぐらいかなぁ多分。


「ほら咲都、机の上の物どけて。ごはん置けないでしょ。で春香はコップとスプーンよろしく」


「はーい。咲都、コップとかの場所変わってないよね?」


「……おう」


 机の上をの物をどかしながら思う。ここはオレの家だよなーと。

 当たり前のように瞳姉も春香も何が何処にあるかを大体把握している。しかもコップや箸なんかは、瞳姉と絵梨花専用の物もしっかり来たとき用に置いてあるのだ。

 これってどこの家でも普通なのか? いやおかしいはずださすがに。


 瞳姉が作った昼ごはんはオムライスだ。


「それじゃあ手を合わせて」


「「「頂きます」」」


 瞳姉の掛け声に合わせて昼ごはんの時間が始まる。


 ……美味い。美味過ぎる。どうやったらケチャップライス、卵、ケッチャプというザ普通のオムライスがここまで美味しく出来るのか。

 しかも味だけでは無く見た目も凄いと来たもんだ。ケッチャプライスの上にオムレツ状の卵が乗っており、スプーンで割っていくとパカッ、トロッのやつだ。瞳姉はプロか何かかよ……じゃねぇ! プロ顔負けのオムライスのせいでまた本来の目的を忘れるところだった。


「絵梨花、お茶取って」


「はい瞳姉お茶」


「ありがと」


 なに当然のごとくくつろいでいやがるんだコイツらは。


「はいお茶、ありがと、じゃねぇよ……そろそろ説明しては貰えませんかねマジで」


「あぁごめんごめん。でもごはんぐらいゆっくりちゃんと食べなさいよ。急かさなくてもちゃんと説明してあげるから。ほれ、美味しいですって言ってみ」


「それもそうか……すいませんでした。美味しいです、これはお世辞なんかじゃなく結構マジで」


「ふふっ。そうかそうか」


 笑うと更に美人に拍車がかかるよな瞳姉は……何で百合大好きなんだよ。ほんとに理解がし難い。

 少し見惚れてしまった。ってなんか絵梨花がちょっとコッチをジト目で見ていたような……気のせいかな?


「ご馳走様〜。美味かったなーホントに」


「ご馳走様。瞳姉はホント料理上手よね。また今度教えてね」


「はいお粗末でした。嬉しい言葉も聞けたし久々に作った甲斐があったわね。そうね、いいわよ。いつでも教えてあげるわ」




 ーーして昼の時間は過ぎていく。……いい加減説明をしてもらわねば。


「じゃあさっきの話をしようか。で、咲都は何から聞きたいの?」


 いや、何からって言われてなぁ。何もわからないんだから……。


「最初からだな。時間止まった? みたいになってた事とか絵梨花は『空間』とか言ってたけど。あの人狼の事とかさ。他にもその他諸々今聞ける事全部」


「そうね〜あの時間停止の現象はもう一つの世界とコッチの世界の狭間の空間ってとこかしら。普通の人間はあの空間には絶対立ち入れないわ。白銀の人狼……えーシリウスが適応とかなんとか言ってたでしょ? もう一つの世界のヤツらはあの空間でコッチの世界に適応してから暴れたり人を襲ったりするわけ。わかる?」


 ほぉなるほど。なんとなく分かったような。でも普通の人間があの空間に入れないって……オレ入っちゃったんですが。


「で、あの空間に普通の人間は入れない。コレは言った通りの意味よ。けれどあの空間に入れる条件が一つだけあるの。それは……もう一つの世界、簡単に言うと異世界ね。その異世界、アーウェルサの血が体内に流れている事。普通の人間は勿論、純粋な向こうの住人も魔法でコッチに自らを召喚する以外あの空間には入れないわ」


 シレッともう一つの世界の名前を知った。アーウェルサってのか。

 てか、えっ? それってつまりさ……


「そう、咲都も何かの血が流れているのよ。何かはまだ分からないけどね。それはそのうち分かると思うわ」


「マジですか……それはちょっと理解し難い事実ですねぇ。てかそのアーウェルサ? の血が混じってるって事は親もなのかよ」


「いや、血に関しては色々ね。片方がアーウェルサのもう片方が人間みたいな純粋なハーフ以外は滅多にないわね。咲都の親がそうじゃ無いのは私も瞳姉も分かってる事だし。咲都がハーフだってことはさっきしったことだけど。ごく稀〜に覚醒遺伝で大昔の何かの血が混じって産まれてくる事があるわ。である日とつぜんなんらかの形でアーウェルサと関わる……私とか咲都みたいにね」


 そんなレアパターンなのかよオレは。なんか良いのか悪いのか分からんな。

 てか私とかってことは絵梨花もそのレアパターンなのか。


「そしてあの人狼は異世界の住人ってとこね。アイツらがコッチに来る理由はほとんどが人間を食べる為かな。その為にあの空間に現れるからコッチの世界に被害が出る前にあの中で殲滅、撃退するのが私達の、唯一あの空間に入れる人間の役目ってところかしら」


 なるほど。しかしまだ不思議に思うことがある。


「でもさ、何でいきなりオレはあの空間に引きずり込まれたんだ? 血が混じってるならさっきの事が起こるまでなにも無かったのが不思議なんだが」


「あぁ、それね。咲都なんか最近変な夢見なかった? やけにリアルだったりアーウェルサに関係してそうだなーみたいな雰囲気の」


「……そういや今日テスト中に見たな」


「その夢が自分と二つの世界が繋がるキッカケなのよ……ってアンタまたテスト中に寝てたの⁉︎」


 しまった。流れで仕方なかったとはいいまたいらない事を……。

 しかしなるほど。大体分かってきた気がする。


「てか春香も瞳姉もあの空間に入れるって事はハーフって事なんだろ? 何の血が入ってるんだ?」


「私は天族っていう鳥人間みたいな種族と人間のハーフってとこね。血自体は咲都と同じで覚醒遺伝。瞳姉は半分吸血鬼で四分の一天族なの」


「私は向こうでちょっと特別な関係の間に生まれてね……ちなみに元々は向こうに住んでたのよ」


 さっき起きた事に巻き込まれた理由とアレが何だったのか、というのが大まかに分かってきたな。

 しかしまだ気になる事が一つ、オレにとって特に重要な事がまだ聞けていない。


「でさぁ、魔法とか何と言ってたけど本当にあるのかよその……魔法ってさ」


「あぁ、あるわよ。アーウェルサでは結構普通にね。瞳姉は勿論、私も使えるわよ。咲都の腕を直したのも私の魔法よ。でもさっきの人狼みたいにコッチの世界に自らを召喚するなんて高等魔法は滅多に使えるヤツはいないわ。使えてもかなり魔力を消費するから体力回復も含めてあの空間で適応をするの」


 ほうほう。そうかそうかあるのか魔法は。オレも使えるようになったりできるのかな……。ぜひとも使ってみたいな魔法。

 でもよく考えたらオレは右腕が吹っ飛んだんだよなー。関わってもろくな事無いんじゃないかコレは……。


「あの〜ここまで聞いといて何なんですがね、そのもう一つの世界、アーウェルサですか? それに関わって死にたくないので無かった事にとかなりませんかね。実際腕吹っ飛んだし」


「時既にお寿司ね。そんなお寿司の卵みたいに甘くないわ。関わってしまったらもう完全な関係者ね。これから先も色々絡まってくると思うわよ。口の中でのネギトロのようにね!」


 意味が分からん。

 どんな例えだよまったく。上手いっちゃ上手いが……瞳姉がはっちゃける時はなんかこういうわけ分からないのが多い気がする。


「ーーじゃあ今日はこんな感じで大体分かった? まぁ後々分かってくる事もあると思うしそのへんは追々って事で。いい?」


「はぁ。でも確かにさっきの事は大体分かったよ。絵梨花も瞳姉も一応ありがとう」


「一応ってね……まあいいか。瞳姉が帰るなら私も帰るわ」




 こうして昼ごはん後の説明会は幕を閉じる。

 なんだかんだでやはり巻き込まれる方向で話は終わり、改めて非現実に巻き込まれてしまったんだと実感する。

 あぁ、コレでオレの欲しかった『平和』の二文字が確実に遠くに行ってしまった。


「じゃあ私も絵梨花も帰るからお皿の片付けだけよろしく」


「おう。あ〜色々聞いて疲れたな〜。新しく始まった今期のアニメでも見てリフレッシュしますかー」


「いい加減勉強しなさい!!」


 帰り際の絵梨花による一括で本日三度目の驚きに襲われた。

感想、ブクマなど励みになります。ありがとうございます。

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