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チート勇者も楽じゃない。。  作者: 小仲酔太
第4章 煙の彼方に忍ぶ謎
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第13話 甘い山狩りと水飛沫

【前回のあらすじ】

 宿の広間で和食を食べるテオンたち。その間アデルからシャウラの過去を聞くのだった。異種族間の子は悲惨な運命を辿るという。そしてアデルはマギーも純血でないのではないかと語った……。

―――翌日


 その日、僕らは思い思いに宿を満喫していた。広間の囲炉裏端に僕、ララ、メルー、バートンが座っている。メルーとバートンは朝女将に教えてもらった五目並べというゲームをしている。その女将は受付でポット、リットに噂について話すところだ。


 「お待たせしました。こちらが私が書き留めた噂帳です。あ、繊細な話もあるので中を見たらダメですよ。えーと……あ、アリアさん、キューさん、ゼオンさんの名前がありますね。あー、そうそう、そんな話だったわ。それでそれで……あっそうそう、そのときにこの人が……」


 早速目当ての名前が飛び出す。一緒に名の挙がったゼオンは、ルーミの父親でポエトロの大商人だ。この人が関わっているのなら、助けを求めるのは容易いだろう。


 しかし、その先の話がなかなか続かない。カレンはそのまま噂帳に没頭していた。


 「あの、カレンさん?」


 「ちょっと待ってねー。うん、思い出してきた。キューさんはここに泊まったことがあるわね。1度目は男の人と一緒に、2度目は女の子たちと一緒に」


 「女ぁ!?確かアリアってキューが好きでポエトロを飛び出したんだろ?」


 「まあまあ、それで最後に泊まって行かれたのはいつ頃ですの?」


 「去年の春の始め、一の月7日ですね」


 「やった!早速手掛かりゲットだね!!」


 囲炉裏から聞き耳を立てていたララが叫ぶ。アルト村の消滅の光が一昨年の秋。間違いない、キューはあの後にここに来ている。何より安心する情報だ。これでトットが見つかる希望も持てる。


 「そのあとどこに行ったか覚えていないか?」


 「王都に向かう最中だって言ってたかしら。旅のお仲間さんが、僧侶になるために王都の聖堂で洗礼を受けるんだって」


 その後も女将の情報により色々なことが分かった。アリアはキューを探すためにゼオンの行商に護衛として同行、王都からの帰りの車でキューたちとすれ違ったらしい。しかし乗り合いの車が引き返すことはなく、アリアは一旦ポエトロまで帰ったということだ。


 以来、ゼオンは行商ついでに度々キューの情報集めをしていたらしい。マギーの話ではアリアがポエトロの町を出て王都に向かったのは今年の夏。その時点でキューは王都にいたということだろうか。


 「でもキューが見つかって良かった。トットもそのうち見つかるさ」


 「ええ。お兄様はきっと今もどこかで私たちを探しているはずですわ」


 二人の笑顔に、僕も心底ほっとするのだった。





 さて、ここにいない者たちが何をしているかというと、まずバウアーは外で素振りをしている。僕の戦い方を見て何かを思ったようで、剣の振り方を色々模索しているようだ。キールとケインは実際にイエローハウンドと戦うといって森に入っていった。


 マギー、ルーミ、ミミ、ユカリそして刑事のオルガノは温泉だ。何故サソリ……シャウラを追っているはずのオルガノがのんびりしているかというと、話は今朝の食事の時に遡る。


 僕らは今日から本格的にシャウラを捜索することになった。折角人数がこれだけいるからということで、1日ずつ交代で捜索することになったのだ。捜索隊の指揮は今日はアデルが、そして明日はオルガノが執るのである。今宿にいるのは明日頑張る者たちというわけだ。





―――シャウラ捜索隊


 今、私はとても疎外感を感じている。何故こんなことになってしまったのか。話は朝食時に遡る。


 (中略)


 そんなこんなで私レナは今日の捜索隊に選ばれたのだが、そのメンバーがいけなかった。指揮を執り先頭を行くのがアデル、そしてその隣を歩くゼルダ、その後ろにはパーティ公認の仲となりつつあるファムとマールの二人、そして殿しんがりに私だ。


 「アデル……もしシャウラが私たちにも容赦なく針を向けてきたらどうしよう?」


 「安心しろよゼルダ。確かに心苦しいが、君を守るためなら僕は鬼にもなろう。絶対に君だけは傷つけさせはしないさ」


 「アデル……///」


 かたや……。


 「マール、ここ足元危ないですよ」


 「マール、ほら私の手を取って」


 「マール、頭に葉っぱが乗っていますよ」


 「マール……」


 ああ、もう……!何が悲しくてこんな光景見てなくちゃいけないのよ!!シャウラさん、さっさと出てきてこんな捜索終わらせて!!


 そんな私の心の叫びも虚しく、何の手掛かりも得られないまま森の探索が続く。木のうろ、岩の影、魔物の巣穴の跡まで覗き込み、人の痕跡を探す。そのうち……。


 「やあっ!!」「ていっ!!」


 人の声が聞こえてくる。目の前の茂みからイエローハウンドが現れたと思うと、それを追いかけてキールとケインが飛び出してくる。二人とも全身傷だらけになりながら、しかし満面の笑みで獲物を追い回していた。


 「ちょっと!?お二人とも傷だらけじゃないですか!!」


 ゼルダが慌てて治癒魔法を掛ける。


 「お、サンキュー!」「助かるぜ、ゼルダちゃん」


 二人は軽く礼を言うと、またそそくさと魔物を追いかけていった。


 「こんなに騒がしかったら隠れていられないでしょうね……」


 私の呟きにみんな苦笑いしながらも、山狩りは甘く甘ぁく続けられたのだった。





―――再び宿


 「捜索、上手く行ってるかな?」


 ララは火箸で囲炉裏の炭を転がしながら呟いた。


 「ララの気配察知でも見つからないの?」


 「うん、結構範囲は広く探してみてるんだけどね。もしかしたらこの近くにはもういないのかもしれないけど、隠蔽されている可能性もあるしね」


 実際近くにいないことはまず考えにくいとオルガノが言っていた。一度だけ反応があったというのだ。それはこの宿のすぐそば、何なら宿の温泉の辺りだという。


 「でも茶屋では隠蔽されたスライムの気配を感じてたよね。そういう感覚もないってこと?」


 「うーん」


 ララは唸りながら考え込む。あのときはアラートボールの補助があったが、今はレナが持っていっている。


 「やっぱりあの魔道具がないと、自力じゃ無理かも。感覚は覚えてるから次何か見つけたら分かる気がするんだけど……」


 「まあオルガノさんも見つからないって言ってたしね。相手の隠蔽スキルが強すぎるのか、それとも何か未知の力で既に遠くまで逃げちゃってるかだね」


 「意外とのんびり温泉に浸かってたりしてね」


 「あははっ!まさか!!」


 ゆったりと湯に浸かる暗殺者の姿を思い浮かべ、思わず笑う。


 「あははは、はあ……。私も温泉入ってこようかな」


 「折角だもんね。僕も行こう」


 こうして僕らは温泉へと向かったのだった。





―――温泉


 女湯にはユカリ、ルーミ、ミミが入っていた。


 「ユカリさん……背はあまり大きくないのに、ミミさんより大きいんですね」


 「やだぁ、ルーミちゃんどこ見てんのよー!まあ私の種族は結構育ちやすいからね。その中ではまだ小さい方なのよ」


 「種族……ずるい!でも私だってまだ成長途中なんだから分かんないよ!!」


 「ミミさんおいくつでしたっけ?」


 「14歳だよ」


 「えっ、そうなの!?あたしミミちゃんはもっと大人だと思ってた!その歳でそれだけあるなら十分ね。あたしより大きくなるんじゃない?」


 「ほらほら!聞いたでしょ、ルーミちゃん!!」


 「わ、私だってこれから大きくなるんだもん!お母さんはとっても大きいんだから、ミミさんより大きくなるもん!!」


 「うふふ。そうなんだー。じゃああたしがルーミちゃんのポテンシャルを測ってあげよう!!」


 ユカリがいきなりルーミに抱きつくようにして、可愛らしいその先端に手を被せる。


 「あら、ちょっと膨らみ始めてない?」


 そのまま全身をくすぐる。


 「いや!ユカリさんくすぐったいですっ!やめてー!!」


 ばしゃばしゃと飛ぶ水飛沫。ルーミは顔を真っ赤にして身を捩るが、ユカリは中々その手を止めない。


 「もう、仕返しです!!」


 反撃とばかりにルーミはユカリの豊かな丸みに手を伸ばす。ルーミの細い指はみるみるうちにその温もりに沈み込み。


 「わっ、指が吸い込まれる!凄い、柔らかーい!!」


 「あっ、ルーミちゃん上手!あ、いやん!!」


 ユカリは愉しそうにそれを受け入れる。


 「ちょっと二人とも!他のお客さんもいるんだよ。ちょっとは静かにしようよ!!」


 温泉の奥にはもう一人人影がある。湯気が立ち込めてよく見えないが、3人が入ったときからずっとお湯に浸かっていた。


 「しょうがないなあ。今日はここまでにしといてやるぜ!!」


 「はあ、はあ……。柔らかかった……」


 波打つ水面は徐々に落ち着き、再び平穏を取り戻していく。


 「それにしてもマギー遅いね」


 ミミがぽつりと呟く。マギーの名が出ると、さっとルーミの顔が曇った。


 「はあ……」


 「どうしたの、ルーミちゃん?」


 「いえ、昨夜のことを思い出しちゃって……。マギー、シャウラさんの話を聞いてすごく悲しそうな顔をしてました。マギーの過去に何かあったのかなって、ずっと考えてしまって……」


 「ルーミちゃん……。大丈夫だよ。あのときテオンが言ってたんだけど、マギーはマギー。今幸せに旅をしているマギーだって。不幸なんかじゃないって」


 「テオンさんが……」


 「あたしもそんなに思い詰めなくていいと思うな」


 そのとき思いっきり浴室のドアが開いてマギーが入ってくる。


 「さあ、温泉に入るニャ!本日2度目の温泉ニャ!!」


 「もうマギー、他のお客さんもいるんだからもっと静かに……」


 マギーの後ろからはララも一緒に入ってくる。


 「マギー!もう、遅いです……」


 ルーミの表情がぱっと緩む。


 「悪いニャ。トイレに行ったら浴衣の帯が絡まって大変だったのニャ」


 マギーは頭を掻きながら掛け湯をする。ララもその隣にしゃがもうとして……。


 「え!?何か……何かいる!!」


 唐突にララが叫ぶ。


 「え?何がですか、ララさん?」


 「魔物!魔物が隠れてるみたいな気配!!みんなこっち来て!!」


 ララの声に3人もすぐさま湯から上がる。


 「あ、奥の人も!すみません!!」


 ルーミが声を掛けようとして……。


 「「「きゃーーーーっ!!!!」」」


 湯煙の奥に浮いていたのは、裸の男の死体だった……!!

小説は緩急が大事だって偉い人が言ってたもん。中盤思いっきりゆるゆるのキャッキャうふふだし、そろそろだと思ったんだもん。


はい、お待たせしました女湯シーン……もとい殺人事件でございます。盛り上がって参りましたミステリー編、今度の事件は湯煙殺人。現場は女湯、仏は男、響き渡るは少女の悲鳴、あ、どどん!


少し時間に追われて後書き書いております只今深夜2時で御座います。少々おかしな筆が走りましたがご容赦くださいませ。次回更新は3/11です。

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