設定集 世界の人種・前編
この世界には多数の人類種が生活している。それは人類へと進化した動物が多数いたからである。神話によれば、かつて魔力災害により生物が絶滅の危機に瀕したとき、悪魔に魔力を授けられた動物は魔物となり、天使に魔力を授けられた動物は人間となり、それぞれに絶滅を免れたのだ。自然に適応するために獲得した動物としての多様な特徴と、共通に取り入れた天使としての外形により、各種人類は多様性を保ちながらも生殖的隔離が取り払われた。つまり近縁種として互いに生殖が可能となった。大幅に減った人口は回復し、種族ごとに適した生息地へと流れ、多様な国家が築かれていった。
現在、世界中の文化人類学は多種多様な人類を16種類に分類することで統一されている。ここではその中でも特に元クロノ王国領、すなわち現在のメラン王国、デルマ公国、ロポス共和国に多く居住する8つの種族を取り上げて紹介しよう。
ーーー出展:『16人類の繁栄への道』
◯ヒューマン
サルから進化した人類。大半は尾を失っているが、山奥には尾を持ったヒューマンもいる。繁殖力が強く異種間での生殖で優先的に生まれてくるため、最も数が多い種族である。自然への適応力も高く大体どの地域にも見られるが、特にメラン王国の王都周辺やブルム地方に多い。白魔法や時空魔法を得意とするほか、絵や音楽など芸術面に秀でていることが多い。
◯ライカンスロープ
イヌ科動物から進化した人類。通称ライカン。イヌ耳を持つが尾はない。オオカミやジャッカル、コヨーテなど多様な種から進化しているが、ライカンスロープは種全体で国家を形成し共同生活をしていたため、交雑が進み純血は少ない。デルマ公国の中心的な種族であり殆どがここで暮らしている。
アローペークス
ライカンスロープのうちキツネから進化した種で、他のライカンスロープとは離れて小さな集落を形成して暮らしていたので純血が多い。保有魔力が比較的高く寿命が長いため、ライカンスロープ社会から魔女として排斥された歴史を持つ。多くの魔法に適正を持ち、単独で大規模魔法を展開することができる。
◯アイルーロス
ネコ科動物から進化した人類。地域によってはアイルーと簡略化されて呼ばれる。ネコ耳と尻尾を有し、昼間はのんびりしているが夜になると攻撃的になるという特徴を持つ。山岳地帯に小さな集落を作って暮らしている場合が多い。魔法適正は低いが跳躍力と投擲力に優れ、武術の達人が多いことでも知られる。
◯アルカンスロープ
クマから進化した人類。通称アルカン。筋肉が肥大しやすく大柄な人が多い種族。北方の山岳地帯に小さな集落を形成して狩猟採集生活を営むほか、傭兵稼業で生活するものも多い。アルカンスロープの集落としては、メラン王国ではパタタ地方東端のカリスト自治区が有名である。
◯オプリアンスロープ
牛や馬などの有蹄類から進化した人類。通称オプリアン。ヒューマンと双璧を為す人口を誇り、種族数も多い。種族ごとに適応した環境が異なっており、様々な地域で単独の種族からなる集落を作って生活していたが、最近ではアウルム帝国の奴隷として働かされているオプリアンが多く、国際問題となっている。
ケンタウロス
馬から進化した人類。体格の良い者が多いが穏やかな性格の種族。研究者や戦術家など、知識や知恵を生かした職業に多い。魔力も高く、時空魔法を得意とするものが多い。メラン王国ではピュロス地方全域、特に王都周辺で多く生活している。
ミノタウロス
牛から進化した人類。恵まれた体躯を有し、攻撃的な性格の者も多い。世界各地の平野で農業を営む農耕民族だったが、アウルム帝国に住んでいたミノタウロスは殆どが奴隷にされてしまっている。土系統の魔法を得意とする者が多いが、殆どが農業用である。
クリオス
羊から進化した人類。大人しい性格の者が多く、ミノタウロス同様世界各地の平野で農業を営んでいた。特にアウルム帝国領のステップ地帯に多く住んでいたため、今では帝国の奴隷のうち最多の民族となってしまっている。魔法適正の無いものが多い。
アイギパーン
山羊から進化した人類。山岳地帯で植物採集をしながら暮らしている。メラン王国のバトス地方からテグラメトゥス山脈にかけての地域に多く居住している。土魔法や風魔法に適正のあるものが多いが、魔力量に乏しく細やかな魔法を生活に生かす程度であり、戦闘には向かない。
カミラ
ラクダから進化した人類。長い睫毛と幅広の耳、背中のこぶが特徴。砂漠地帯で生活する代表的な遊牧民族だったが、かつての戦争で大きな被害を受け絶滅の危機に瀕していた。今では少数がアウルム帝国の奴隷として生きるのみである。
アンティロピ
レイヨウ、アンテロープから進化した人類。現アウルム帝国領のサバンナ地帯や砂漠地帯にひとつの国を築いていたが、滅ぼされてほとんどが姿を消した。今でも山奥でひっそりと暮らしていると言われている。長い耳と細い手足が特徴で皆美しい容姿と伝えられる。高い魔力と長い寿命を有し、森の妖精と呼ばれることもある。
◯ドディアンスロープ
リスやネズミなどの齧歯類から進化した人類。通称ドディアン。歯の長さを必要に応じて変化させることができる。寿命が短い種族が多い。森林地帯や山岳地帯で狩猟採集生活を営み、ツリーハウスや洞窟住居など自然と一体化した住居で生活する文化が根付いている。
クネーリ
ウサギから進化した人類。最近までドディアンスロープとは別にクネリアンスロープとして分類されていたため、今でもクネリアンスロープ、あるいはクネリアンと呼ばれることもある。特徴的な長い耳により高い聴力を有し、スタンピングと呼ばれる中距離情報伝達技法を使う。土属性を得意とするものが多い。
ヘテロセファロス
ハダカデバネズミから進化した人類。ドディアンスロープ一の魔力を有し、長命で、古くから高度な文明を築いてきた。メラン王国バトス地方に魔法都市を築き、ドディアンスロープ中心の自治を行っている。
◯アレクトリデウス
鳥類から進化した人類。見た目はヒューマンと殆ど変わらない。翼や尾を失って損なわれたバランス能力を、特徴的な衣服で補っている。ロポス共和国の三大種族のひとつ。元は世界中に広がっていたが、戦いを好まない性格が災いして追いやられてきた歴史がある。通常種族を気にせず混血が普通だが、特に魔力の強い次の種族はかなり純血を保っている。
パレフコローネ
カラスから進化した種。全体的に色白で、魔力が強いほど純白に近づいていく。その魔法は魂に触れるとされるが、詳細は種族の機密事項となっている。ロポス共和国の支配層である。
オルニオ
ハゲワシから進化した種。魔力と筋力ともに優れる。特に治癒魔法に優れ世界最高の医術を誇り、グリフォンと呼ばれる最高位の医者を中心に集落を築いているとされるが、その場所は誰も知らない。オルニオの医者は修行の一貫で世界を巡る慣習があり、難病を治しては伝説に名を刻んでいく。
ペルクノプトル
ハゲワシから進化した種だがオルニオとは別種である。アレクトリデウスで最も長い寿命を持つ。かつてエリモ砂漠の聖都ペトラの近くに集落を形成していたが、ある時期を境にその人口は減少し、今では数少ない生き残りが世界に点在するのみである。アレクトリデウスの扱う特殊な魔法すべての祖と言われる。
◯レピアンスロープ
ヘビやトカゲ、ワニなどの爬虫類から進化した人類。通称レピアン。身体の一部または全身に鱗様の模様を持ち、魔力を通すことで鱗化する。火魔法や水魔法、氷魔法など単一の属性の魔法に特化した者が多い。またスキルとして状態異常付与の出来る者も多い。ロポス共和国の三大種族のひとつである。
ドラコーン
レピアンスロープのうち強力な魔力を備えた種族の総称。祖先となった動物が異なっていても、特殊な能力を備えた目を持つという共通の特徴がある。レピアン国家の中枢を担い、ロポス共和国の支配層でもある。