表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/325

<6>-2

 関原養成所は、今は封鎖された西新井橋の南西一帯、数百メートルに広げた土地を利用している。また橋を(また)いで、河川『(あら)(かわ)』を越えた先にも、養成所の土地が広がっている。

 魔導師を育てることに重点を置いている特殊性が故に、敷地面積の広さにおいては、内界にあるサイファーを育成する施設の中で随一。

 学生達が寝泊まりしている場所は、橋から見て南東の区画。全て徒歩数十分の範囲に収められている。

 魔導科の校舎は普通科とは別にあり、普通科の校舎と共用の中庭を挟んだ反対側に隣接している。中庭は広く見渡しが利く。……ただ、どういう経緯で習慣づいてしまったのか。どこに行こうとも共用の敷地には変わりないのに、魔導科と普通科は中庭の使用スペースを分断し、使用している。お互いが干渉しないためか、あるいは余計なトラブルを未然に回避するための措置なのか。宗二郎はこのルールを好まず、あえて魔導科のエリアとされている中庭の敷地に行っては、意味もなくベンチに座って周囲を観察していたりした。



 待ち合わせ場所である、普通科の校舎から出発して、中庭を横断し、魔導科の校舎を目指す。

 地域の一部をまるごと学校にしていることから、養成所の建物は街としての名残を残していて、崩しては作り替えられた突貫工事の建物が校舎周辺には(まば)らにある。

 基本的な学習は校舎の施設だけで事足りるので……その他の建造物がどんな用途で使用されているのか、三人は何も知らない。


「檜山先生の教員室に行くときは、校舎の裏側からだったから、表の方は全然見れなかったけど……結構、何もない場所が多いんですね」


 宗二郎の言葉通り、魔導科の校舎周辺には平らなところが多い。点在する更地が今後どのような使われ方をするのか、宗二郎の想像力では、今ひとつ浮かんでくるものはなかった。

 舗装された幅広いコンクリートの道。周辺はどれも同じような外観を持っているのだが、宗二郎からすれば、好奇心を揺さぶられる何かを感じていた。


「何もない部分は確かに多いですね。新しい建物を作る計画も持ち上がっていると言いますが、真偽のほどは定かではありません。校舎は同じくらいの大きさに見られがちですが……実は魔導科の校舎のほうが、校舎の敷地面積は狭いんですよ」


「へえ。そうだったんだ……アタシはてっきり、魔導科の方も校舎が優遇されているのかとおもった」


 留歌子は意外だといった様子で、目を丸くした。


「なんでもかんでも、魔導科が優位といった考え方は、よくありませんよ忍川さん。……ただ、校舎は小さいですが、魔導科の中心部は、校舎から更に西へ行った先……『特殊エリア』と呼ばれるところにあります」


「特殊――エリア?」


 普通科では聞いた事のない名称。『特殊』というくらいだ。さぞかし立派なものなのだろう。

 宗二郎の横で歩いている留歌子は、移動を始めたときから一言も口を開いていない。物珍しいのか、せわしなくキョロキョロ見渡している。

 道中……制服の肩に魔導科を示す、円形のワッペンを付けた生徒とすれ違う。留歌子と宗二郎には目もくれず、真っ先に祈理を見ると立ち止まって()(しゃく)をする。祈理も慣れたように頭をさげてそれに答えた。


「ほんと、どこに行っても石蕗先輩って有名なんですね」


 穏やかに言うが、どこか含みのある留歌子の言い方。祈理は気にしない様子。


「私は好きで、みんなに好かれようとしているわけではありませんから」


「でも常に成績上位を収めていると、ソレを(ねた)んで意地悪してくるひともいるんじゃありませんか?」


「そうですね。……そんなのもいましたが、気にしないようにしています」



 ――まあ、確かにメンタルが強くなければ、学校で成績上位にいるわけありませんもんねぇ。

 初めて彼女を見たときは――学校近くにある、河川敷……だったか。

 どこか(はかな)げで優しそうな感じだった。

 次に先輩を見たときは〝完全無欠〟の名前が板に付いたサイボーグ。どんな逆境にも負けない、絶対的な生徒。初めてまともに会話をしたときは底辺の印象からのスタートであった。

 異形と戦うと決めたときに見せた先輩の姿は、どこにでもいる生徒と同じで、強さと同じくらいの弱さを持った女の子で……。先輩が抱えている立場というものは、先輩にとって大切にしている拠り所と同時に、彼女自身を圧迫している、とても重い足かせなのだと思えるようになってきた。

 ――じゃあ、いま俺に見せている顔の彼女は……どんな時の先輩なのだろうか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ